「なんとかさん」という名で活動しています。主にナンセンスな物語を公開しています。
作品紹介:
ナンセンス物語
★郵便受けの愛 ★曲がる鼻 ★バードとボーン ★お気に召すまま
★くだらねぇ ★いろどりじゅーす ★おもめのしょうせつ ★じんにん
★さんぷる ★みゃーみゃー猫魂 ★姉 ★でたらめフレーム
★理性の悲鳴 ★トリック ★もっと前に ★のっぺりサンドイッチ
★ある色 ★吹き出し ★切実なチョコレート ★ピーマンと玉ねぎのワルツ
★ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる ★デリケート ★わらいばなし ★けっかい
★かびんとほこり ★夢VS夢 ★あれとこれ ★怪獣が
★五雷食堂のカレーライス ★短絡的思考の見本 ★疎遠な仲間達(酔っ払い?) ★ごった煮
★そうあれる瞬間 ★かちろん ★流行らないそう ★お約束
★とことんなつ ★扇子 ★難扇子 ★フラジャイルに囚われて
★り婦人 ★ようせい ★人力にゃんこ ★熱さまし
★流れるもの ★あてなし ★ノスタルジックな人形劇 ★猫のような人
★じょうけんはんしゃ ★吠える獣 ★蛇年に ★王様は過剰装飾
★ネコ話 その1 ★もしもし亀さん ★つくしんぼう ★おち
★すりこみのーと ★オンリー ★だんでぃずむでいらいと ★あめらんこりー
★切れない包丁 ★張り出しケンジ ★だきあわせベッドタウン ★飛べるねとべる
★背中で語るな ★要素はよそう ★話にならない話 ★虚しさの奏でる音
★まっさらな ★さるディニーニャ ★禁じに近似 ★無内容の
★はんてい ★私という君 ★ぜんひてい ★シーディー対いーえふ
★類型A ★何とも言えない味 ★ガラクタの町 ★あれれ
★顔に酢 ★あそびたいのさ ★オチない ★「意味がない」という事の体験
★関係ない関係 ★いやな食事会 ★ガムの思い出 ★ぐにゃにゃするもの
★ありがとう畑 ★にゃんにゃんこにゃんこ ★正気の沙汰 ★余白に込めた思い
★何だ乱打 ★らいふ ゐず ちょこれゐと ★激しく無駄な、エトセトラ ★苺の友達
★ちょっとだけメッセージ ★アツい子 ★我々が住んでいる世界に、住んでいる、我々とは呼びたくない我々
★ちょこれいと まいんど ★ねこかわさんの動画 ★そばの蕎麦屋 ★ぐちいんふるえんす
★けちょんけちょん ★TNTな毎日 ★足りてますか?エナジー ★馬鹿者どもの共演
★ぷりいずぷりいずへるぷみい ★ちょこれーと・りたーんず ★ねこかわさんの動画(後) ★気分爽快
★父親として ★「そうかい」感 ★食にまつわるエレキテル ★迷惑行為
★めんどめんど ★超絶 ★ぎりぎりに虹 ★失敗
★手に入れた経緯 ★かのデリバリーを待ち ★都合をつけてボルドネス ★はしごして、おくのほそみち
★楽しく踊る ★立て掛けて窓際 ★よく分からない絆 ★吉岡家の食卓~肉喰いジルバ~
★安定C ★めらねったー(前編) ★めらねったー(後編) ★金物細工師的な
★南国気味 ★げえむ談義 ★結社とたらこ ★黄金旅程のその後で
★ふくらし粉バーゲンセール ★作戦ダイナキント ★ホロスコープ越しのマイウェイ
★べたなんじゃー ★さぷらいず・干し芋 ★弾丸ボッシュート ★ちょこれいと・りばいばる
★あず・ゆー・らいく ★スーミーとの出会い ★斜交いに蓮買いに
ガララシリーズ
★憂いのガララ ★流離のガララ ★魅惑のガララ ★眠りのガララ
★お嬢様の退屈 ★運命のガララ ★ガララの里 ★ガララ対策委員会
★ガララ輸送計画 ★ガララの明日 ★ガララの旅 ★安らぎのガララ
完結
そらまちたび
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭
完結
徒然ファンタジー
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28 29
30 31 32 33 34 35 36 37 38
39 40 41 42 43 44 45 46 47
48 49 50 51 52 53 54 55 56
57 58 59 60 61 62 63 64 65
66 67 68 69 70 71 72 73 74
75 76 77 78 エピローグ
完結
・登場人物紹介
ステテコ・カウボーイ
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮
完結
ナンセンセンス物語(ナンセンスなんだか意味があるんだかよく分からない物語)
★てつがくねこ ★秋晴れ ★けんりのねこ ★ぶんがくねこ
★隠れた王子 ★体験 ★あんばらんす ★こけしに焦がれる
★何でもない日 ★安眠枕 ★猫通り ★盛るミス
★こうこつねこ ★黒い羽根 ★保管 ★タンジェントの嗤い
★ねこつんでーれ ★動きだした時 ★政治口調 ★グローバルマン
★任意の戦い ★焼き肉の日 ★擬態男子 ★ハッピーアイランド
★けいさんねこ ★かしょうねこ ★ぐるめねこ ★最高のパスワード
★てれびねこ ★運命はなんぞ ★嫉妬して猫 ★春へ
★別の世界で ★ねこせらぴー ★捧げられた変奏 ★肩慣らしに捧げる不届きものの賛歌
★素敵なダイアログ ★魔法使いメリーちゃん ★固形物と供に ★夕陽の答え
★雪のない夏 ★いなかのまじゅつ ★風のない日 ★微妙なステージ
★いじわるにっき ★リマーク ★ここまで来た 一つの道
★貴方へ ★さがして ★憧れと空 ★頼もしい何か ★何処かに何かを
★なっしんぐ ★ナイーブな曇り ★そんな世界を ★こんなコーヒーのCMがあったら
★だけど、それは ★花火を見に ★演じ得る ★演じぇない
★休憩地点 ★TO YOU ★演じぇないⅡ
境界の店
境界の店 白い猫 現実とファンタジー 猫との戯れ ニアミス 成長
進展 起りはじめる事 桜咲く 衝撃 コンサート終わり 朝河氏
『大宮望』 N市観光 一日の終わり 絵をめぐって 朝河氏の帰還
大掃除 「そら」 繋がる世界
完結
掌のワインディングロード
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑ ㉒ ㉓ ㉔ ㉕ ㉖ ㉗ ㉘ ㉙ ㉚ ㉛ ㉜ 33 34 35 36
完結
物語: 「ATJ あなざー」
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑ ㉒ ㉓ ㉔
完結
物語:「スカイ・ブルー」
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳
㉑ ㉒ ㉓ ㉔ ㉕ ㉖ ㉗ ㉘ ㉙ ㉚ ㉛ ㉜ ㉝ ㉞ ㉟ ㊱ ㊲ ㊳ ㊴ ㊵ ㊶ ㊷ ㊸ ㊹ ㊺ エピローグ
完結
物語:「アルブロガー」
① ② ③ ④ ⑤ ⑥
小説: 「淡く脆い」
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪
⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑ ㉒
㉓ ㉔ ㉕ ㉖ ㉗ ㉘ ㉙ ㉚ ㉛
完結
短編
★見つめられて ★贈り物 ★気の早いクリスマス ★この世界は
★キープユアマインド ★酔え酔え
あとは日記を時々書いています。
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最近のちょっとしたマイブーム。仕事終わりにほろ酔い加減でゲーム実況系の動画を見ている。人間何がきっかけで新しい趣味を見つけるか分からないものだけれど、人気のある動画はやっぱりなにかしら「見どころ」を持っている。
上から目線で偉そうに言っているのではなくて、素人が見ても思わず惹きつけられてしまうそんな魅力を配信者に感じたり、プレイしているゲームが本当に好きだという事、楽しんでプレイしているという事が伝わってくると久しぶりに自分も何かゲームをやってみたい気持ちになってくる。
わたしはへたっぴなんだけど。
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内容通りに自宅で『昴君』の実況動画をタブレットで見ながら更新したブログ。彼のプレイするゲームの内容は正直分かったり分からなかったりで、その動画では主にアクションがメインのゲーム。素人目からはプレイは上手な方だと思われるけれど、やっぱり昴君の声が聴き心地がよいのと、時々テンションが上がっているのが分かるシーンが動画の中にあったりして、まったりしながら視聴できるコンテンツになっている。過去の投稿数は50を超えていて、一本当たりの時間が30分程であることが多いから、『最新作』が公開されれば優先して見ているけれど過去作を辿るのも結構楽しい。
同じゲームをしていて再生回数の一番多い動画がおススメに表示されるようになるので、興味をもったゲームについては時々それもチェックしてみたり。再生数や高評価が多い作品と彼の動画の違いは、案外知名度の差に思えてきてしまうのは贔屓目だからかも知れないけれど、確かに神がかったプレイ動画は見ていて高揚感がある。
<たかがゲームと思っちゃいけないな…>
その日は思わずそんな感想が浮かんできてしまった。ちょっとした偏見のようなもので、わたしが昔よく漁っていたボーカロイド曲のようにはっきりとした『作品』ではないという理由で、いくら盛り上がっていても価値はよく分からないという印象を持っていた。でも今みたいに自分が仕事終わりで、とにかく何かに身を委ねていたい時間の時は偶に雑談のような展開になる動画を見ていると、
『なんか、いいなぁ』
という気持ちになる。…もしかしたらちょっと『飢えていた』のかも知れない。
プレイする人があってゲームは成り立つ。どんなに素晴らしいゲームでも誰も遊ばないのだとしたらそれは無いのと一緒なのかも知れない。翻って、自分がこうして更新しているブログも、本来なら読まれなければ意味がないと言えばそう。動画にしてもそう。見る人がいなければ成り立たない。そんな単純な事なのに、わたしは時々見る側に立つ時間を惜しんでしまう。労力という程のものではないはずなのに、青春時代のように寝る間を惜しんでまでという事も少なくなってきたと思う。
乾いた洗濯物を畳みながら、タブレットに一瞬ちょっとした絶叫が響いたので「何事か?」と思って、シークしてその場面を見直すわたし。昴君の操作しているキャラクターが競争相手に不意打ちを喰らってゲームオーバーになった瞬間だった。
「そんなに絶叫しなくても…ふふふ」
絶叫しなくてもと言いつつ、実はそういう場面を本能的に求めている事に気付き始めたわたし。タブレットから再生される音声が音割れしてしまうのは本来良くない事なのに、実況系に限って言えば音割れして「うるせえ」というコメントが入るほうがむしろ喜ばれている節もある。『鼓膜が壊れました』という秀逸な表現は本当だったら困るけれど、思わず笑ってしまう絶叫だったらみんな待ち構えてさえいる。
昴君はカラオケ店では『喉が弱い』と言っていたけれど、確かに絶叫後に一瞬『咽る』時間があって、常連さんの間ではその咽せ方も『芸』のようなものとして見ているらしい。確かに絶叫後に咽る展開がお約束のようになっていると、視聴者として期待してしまう。そしたら最新作で昴君がこんな発言をしていた。
『あの、僕ちょっと喉が弱いので咽てしまうお聞き苦しい場面があると思うんですが最近喉を鍛えようと思っていて、何かアドバイスがあったらコメントに書き込んでもらえるとうれしいです』
するとコメント欄で、本当に喉を鍛えるアドバイスをしてくれる人が現れて昴君がそのコメントに事後に「高評価」を与えたらしいことが分かった。こういうゲームの内容以外のコミュニケーションがある動画はなんとなく評価され易いような気がする。わたしも何かコメントをしたいという気持ちがあるのだけれど、一体何を書き込めばいいのか分からなくなってしまう。これはわたしの悪い部分だという事は分かっている。やっぱり自分のブログ運営と同じように、『塩対応』というわけではないけれど元来気の利いた事を言えない質なので、どうしてもコメントのやり取りは苦手で、その点、ネット空間でこれだけ会った事もない人とうまくやり取り出来ている様子を見ると羨ましくもなる。
でも、出会った時の昴君の姿を思い浮かべてみるとそれが何かとても自然で気取ったところが無いという事が常連さんにも動画という媒体で十分に伝わっているような気がする。
「見倣わなくっちゃな…」
一人そんなことを思った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌日、職場で同僚の男性からこんなことを言われた。
「佐川さん、最近何か良い事ありました?」
「え…?どうして?」
「なんか最近元気だなって思って」
「そうかな?自分では分からないけど…」
戸惑い気味に返答したら今度は女の子から、
「あ、わたしも感じてました。最近の佐川さん、なんかキラキラしてます」
「へ…?キラキラ」
<いや…キラキラってどんなだよ>と心の中で思ったけれど、感じているのが一人ではないからもしかしたら何か違うのかも知れないと思うわたし。男性は『山内』くんという名前でわたしと同い年なので気兼ねなく話せる相手なのだけれどこの日は、
「最近、テンションが上がる話題が無くて…というか好きなバンドが活動休止って情報が入ってきて、ちょいショックなんですよねぇ…何かいい話題は無いものか」
と悩まし気な様子。これにわたしは、
「何かゲームすると良いかもよ」
と提案するとまた意外そうな顔。
「え…?佐川さんってゲームする人なんですか?」
「わたしはあんまりしないけど、人がゲームするのを見るのは嫌いじゃないよ」
「あ、わかります!それ!」
女の子、『皆川』さんが猛烈な勢いで同意してくれて、これがわたしにとっては意外だった。わたしよりも3歳ほど年下の女性で、何となくここでもわたしがお姉さんポジだったり。そこで皆川さんが最近プレイしているというゲームの話になる。
「へぇ…なるほどなぁ…」
感心しながら聞いていた山内くんはもしかしたら何かアクションがあるかも知れないなと思ったり。
ブログ。
ザ・イエローモンキーの「未来はみないで」のMVで感じられた『春』の雰囲気。ポカポカではない「涼しい温かさ」というあの季節のもう一つの顔というか、そんなものに包まれたかのよう。去年から続いている一つの雰囲気から何か芽生えてきたものもあって、心が揺さぶられる。この頃は『タイミング』以上に奇妙だけれど素晴らしいものがない、というような考え方になりつつある。なんとか今を凌ぐ分のやすらぎとか光があって、そんなこんなで結果的にたどり着いた『時』というのが凄く意味を持つ事。まるでそこに『紛れ』が存在しないかのように、その『時』は素晴らしい。そう言った類の事も結構考えさせられる作品だと思う。
『スカイ・ブルー』を書き上げる少し前に地震が起こったりで、何かその時は「とにかく書き上げたい」という気持ちで一杯になった。『なろう』に投稿した結果もこれまでで一番良かったので自信と思われる何かも持ちつつある。作品を味わう時間、作品を味わった後に見える何かそういうものが今は自分にとって凄く大事で、『アルブロガー』でも過程を大事にしつつもそこに導いていきたい。
一方で現実の方は趣味に適合した作品である『ウマ娘』で友人たちとのコミュニケーションも増えているし全然悪くない。いや、むしろ『可能性』を感じているからこそできるだけの事をやってみたくなる。
文章で何を伝えられるか。というよりかは『何が』自分を動かして文章を書かせたか、という事がうっすら感じられるといいなと思う。柔らかいけれど力強い、想いのような。
『少年』と二人で一度店の外に出た。彼の口から飛び出した『特殊能力』という言葉の響き自体がその場では特殊だったのと、やや賑やかな音がしている店内だと『少年』の落ち着いた声だと説明を聞き逃しそうな気がしたからだ。入り口付近に停めてあった自転車を指さした彼は、
「今日チャリで来たんです。昨日もですけど」
と教えてくれる。
「あ、そうだったんだ。わたし、さっきあそこの店に行ってここに寄ったの」
「なるほど」
それから『少年』は自転車の元でペダルを触ったりしながら『本題』とばかりに話を始めた。
「僕が『あの能力』に気付いたのは震災の年です」
「え、だいぶ前だね。その頃小学生?」
「はい。今から8年前だから…小学校6年生でしたね」
「そっか、それじゃ今…」
「19歳です」
「え…?って事は」
「一応大学生です」
ここでわたしは少なからぬ衝撃を受けていた。心の中で『少年』と思っているので『青年』の印象にはならないのだけれど、『あの能力』の説明の前にその辺りを詳しく訊ねてみたい欲求が出てきたり。表情には出さないよう努めていたけれど。
「そうなんだ、それで震災の年に気付いたってどういう事?」
外は晴れているけれど気温が思いのほか身に堪えるのもあって先を促すわたし。『少年』は、
「あの時、震災のショックでちょっと落ち込んでいる友達がいたんですよ。で、僕に出来る事はないかなって色々考えたんですけど、当時の僕には方法が浮かばなかったんです」
と説明を始めた。大人のわたしでも容易にその場面が想像できる。わたしだって色々ショックを受けたし、その後に流れてきた情報も気が滅入るものだったし、子供だったら猶更だろう。なんとかしようと思っても自分にはどうすることも出来ない、そんな悲しみであり、虚しさであり。『少年』はその先を語る。
「そしたら、家族で買い物に出掛けた時に『ガチャ』見つけたんですよ。それもその友達が好きだって言ってたガンダムのなんですけど」
「へぇー、ガンダム好きだったんだ」
多分その友達は男の子なんだろうなと勝手に想像した。
「それでその『ガチャ』やってみて、僕はガンダム詳しくないんですけどまあまあ良さそうなのが出たから次の日にその子にあげたんです。そしたら」
「そしたら?」
「友達がなんか急にテンションが上がって、『え…?これ当たったの?』って驚いてたんです」
「驚いてたんだ」
「なんかその友達もその『ガチャ』集めてたらしくて、たまたま一つ当たらないのがあったそうなんですよ。それを僕が引き当てたらしくて。友達も喜んでて」
「凄いじゃん!ラッキー」
普通に「いい話」である。でもここからがちょっと奇妙な展開。
「でも『ガチャ』の運、自分には『使えない』みたいなんです」
「え…?どういう事?」
「なんか自分が<誰かに何かをしてげたいな>っていう気持ちになった時しか力が発揮されなくて、自分の為に狙ったのを当てようと思っても当たらないんです。まあ回数やれば当たるんですけど、さっきみたいに一発で狙いのが当たるのは誰かにプレゼントしようと思った時だけですね」
「へぇ…そんなこともあるんだ…」
正直云うと、身も蓋もない話だとは思うけれど理系の発想で生きるのが基本のわたしには試行回数が少な過ぎて『偶然』で片付けられるレベルの話に思えてしまう。『夢が無い』と言われればそれまでだし、知り合いにも実際に言われていることなのだけれど、さっきわたしが貰った景品も運よくそれが当たる位置で引けたというだけなのだ。
「君はそれについてどう思うの?」
何かを確認するようにそう訊ねていた。その質問に対して、
「まさかカプセルが瞬間移動するわけはないですし、運…タイミングが良いだけなんだと思います」
「まあそうだよね。それでも確かに運が良い人は世の中にいるからね」
『佐川真理』という人間は引きが弱いのだけれど、確率の概念とはまたちょっと違う意味でいわゆる『もっている人』というのは居たとしてもこの世界の在り方を変えたりはしないと思う。そもそもあの大震災にしても千年に一回と言われているのだから、私達だって千年に一回を目撃した世代になるわけだ。悪い事でもそれくらい『稀』な事象を経験しておいて、高々何万分の一くらいの偶然を許容できないほどわたしの認識は脆くはない。脆くはないけれど…
「でも、なんだかそういう話を聞くと不思議な感じがするね」
「ですよね」
それはわたしがあまり味わったことのない感覚だった。起こってしまった事象は後で変えることが出来ない。けれど起こった事をどう解釈するか、その想像の余地は十分に残されている。子供の頃に本を読んで感じていた淡く、でも心が満たされるようなそういう『世界観』は仕事に追われている時間では感じることが出来ない。わたしの胸の中にこの『少年』との出会いも、そんな一時なのかも知れないという、そんな予感がこの時生まれた。
「ねえ、わたし名前教えてなかったよね。わたし『佐川真理』っていうの。君の名前は?」
この時わたしは某アニメ映画を意識したりしなかったり。あの物語の登場人物よりは年齢が離れているけれど女性の方が歳が上なので。
「僕は、根本昴(スバル)です」
「え、格好いい名前だね」
「はい。父親がその車のメーカーが好きだそうで…」
「あ…なるほど」
こういう小話を聞かされると会った事もない彼のお父さんのイメージが勝手に出来上がってしまう。多分、キラキラネーム全盛の世代でそんなに浮くような名前でもなかったんだろうなとか、むしろ同級生にどんなキラキラネームの子が居たんだろうとか、色々妄想してしまった。
「真理さんって呼んで良いですか?」
「いいですよ」
こう確認した昴君もわたしとの出会いについて何か感じていたのかも知れない。それを示すかのように、その後こんな『告白』。
「僕、実はネットで動画投稿とかしてるんです。もしよかったら見てもらってチャンネル登録してもらいたいなって」
「え…?マジ!?」
驚いてばかりのわたし。こういうのを『隔世の感』というのだろうか、昴君のような子でも…勿論大学生だから全然おかしくは無いのだけれど、この辺で会う若者でもそういうのに抵抗が無い世代なんだなと思い知らされる。
「恥ずかしかったりしない?」
「えっと基本はゲーム実況とかなんで、顔出しとかはしていません」
「あ…そっか。どのくらい再生数あるの?」
「良くて三ケタですね。ただの趣味なんです。でも時々コメントしてくれる人がいるのが嬉しいんです」
そこでわたしは昴君から動画のアカウント名を教えてもらい、その場でちょっと確認してみた。スマホの画面に『ばるすちゃんねる』という名称で表示される動画のノリはなんというか、とても若々しかった。
「動画だとテンション高いね」
「実況系はみんなテンション高いですよ」
こうして『少年』とわたしの関係はこの日以来続いてゆく事になった。
1月3日の午前、わたしは前日に続いて弟の車に乗っていた。いつの頃からか帰省した時の恒例になっている職場用のお土産の購入に近場のとある場所に向かっていた。
「姉ちゃんもマメだよな。やっぱりアレ喜ばれるの?」
「喜ばれるなんてもんじゃないよ。みんな美味い美味いいってすぐ無くなっちゃうんだから。今回は仕事でお世話になっている人の分も用意した方がいいから結構買うかも」
「ってか駅で売ってないっけ?」
「あの辺りに行くと二本松に帰って来たって気分になるじゃん」
「まあ、そうね」
運転席でやや呆れ気味にわたしに訊ねる弟。そう言いつつもわたしの送迎には嫌な顔一つしないし弟も弟で「じゃあ俺も買ってみようかな」なんてぼそっと呟くのが聞こえた。インター入り口を横目に僅かに先に進んで右に折れるともうその店が見えてくる。いつもそこの駐車場は混む印象だけれど、運よく空きがありスムースに駐車できた。
「着きましたよ」
「はーい。ありがとう」
二人で車を降りて店内に。中は洋風でありながらもどこか和を感じさせるのは目立つ所に置いてあるその品物のせいだろうか。
「『ままどおる』。チョコのやつもあったね」
「ミルクたっぷりママの味」
「これ系のって他所でも見かけるけど、食べやすい気がするね」
「企業努力でしょうね」
子供の頃にも親にここに連れてきてもらった思い出がある。あの頃のように純粋に家に帰って食べるのが楽しみではしゃいでいただけではなくて、今は『ものづくり』という考えなくてもいいような言葉や感想が出てきてしまう。でも当時よりもこの一つ一つが何か貴重なものだというような気もしてくるし、開発の歴史などを自分なりに調べていったりすると感動さえ生まれてくる。それを『不純』と呼ぶことはしないでいいと思う。
「チョコってある時と無い時があるよね」
「毎年10月から期間限定で発売してるんだって」
「へぇ…さすが」
そこでは先ほど述べたように職場用、仕事でお世話になった人用、そして『自分用』を購入する。普段食べるお菓子としては少し高級感があり、どちらかというとすぐに手に入るコンビニのスイーツよりは食べる回数は多くないはず。こういう風に誰かにお土産として用意する『ついで』という口実で自分用のご褒美を用意しておくと数日は上機嫌で過ごせるもの。スイーツは幸せを運ぶのだ。弟がわたしが選ばなかったチョコ味の方を一箱選んだ時、ふと思いついてこう言った。
「それはわたしが出すよ。今回も送ってもらったし」
「え…?いいの?ありがと」
お互いに年を重ねてゆくと取り立てて『姉』としての姿を見せなくても弟も逞しくなってゆくし、段々と友達のような感覚になってゆくものだけれど「姉らしさ」は何処かで見せておきたい、或いは感じていたい時もある。そんな瞬間だ。会計後、紙袋に詰まった品物を一旦後部座席に乗せた後、中からプラスチックの袋で包装された10個入りの『ままどおる』だけを取り出し、いきなりではあるが開封してそこからいくつか取り出して弟に一つ手渡す。
「あらあら…」
弟は何だかとても残念そうな人を見るような目でこちらを見ているが、「ありがとう」と言ってさっそくそこで食べ始める。残りはコートのポケットに詰め込んだ。そこでちょっと思いつくことがあった。
「わたしちょっとあっち寄ってくる」
近くにあるゲームショップ兼レンタルの店だ。最近ゲームショップ自体あまり行かないので中がどうなっているのか確認したくなったのだ。ここで弟も、
「ああ、そしたら俺ちょっとヨーク行ってくる。酒とか買おうと思って。車そっち停めるから歩いてこれるでしょ?」
「一輝はまだ休みなんだもんねぇ。羨ましいわ。分かった了解」
弟が言った「ヨーク」とは地元民にはお馴染みのスーパーでわたし達家族が一番よく買い物に来ていた場所。弟と別れ、わたしは一度目的の場所に向かう。
そこで意外な事が待っていた。
その店の広い駐車場には既にそこそこの車が停まっている。歩道から周囲の町並みを確かめるように歩き、店の前には自転車が一台停めてあるのが見える。やや仰々しい入り口から入店すると、中が大分大胆な造りになっていることが分かった。
<けっこう広い…あっちは…カード?>
かなり昔の記憶だと古本なども売っていたような気がするが、その時と配置もスペースも変わっていてパッと見『ゲームセンター』のような印象にも思える。それは店の入り口から直ぐにいくつかのUFOキャッチャーが見えたから。ちなみにわたしはUFOキャッチャーが大の苦手で多分一度も景品を取れた事が無い。さっき別れた弟が尋常じゃないくらい上手いので何が違うのかと思うけれど、得意な人は得意なゲームである。
「あれ…?ってもしかして」
わたしはある違和感を覚える。それは店についての違和感ではなくて、中に居たある人物に強烈な既視感を覚えたのだ。UFOキャッチャーの前で景品の位置を確認しているのか、身体を左右に動かしている人。その人はわたしと同じくらいの背格好の男子で、それは…
気付いた時にはわたしはそちらに向かって小走りで近付いていた。そして彼の前で、
「あなた昨日カラオケで会った子だよね!」
と声を掛けていた。
「あ…お姉さん!」
わたしの存在に気付いた彼はあの名前も知らない『少年』だった。中々の偶然だけれど市内でこれ位の歳の子が行きそうな場所としては非常に納得できる。以前はカラオケ近くにゲームセンターがあったのだけれど今はやっていないようだったし。
「偶然ですね」
「UFOキャッチャー得意なの?」
またも自然な流れで会話…交流が始まる。内心<いいブログのネタができたぞ>と思いながら、せっかくだからもう少し少年の情報を得られればと考えていた。
「えっと…苦手です。なんかでもこの間ネットで攻略法調べたからもしかしたら出来るかもなぁ…って思ってたんです」
「ネットで…」
ややその発言に驚くわたし。今は動画で解説とかが当たり前になっているけれど、家庭用ゲームだけではなくて『現実の攻略法』も調べる時代なのかもなんて。流石にそれはないか。
「やってみるの?」
「はい。あの身体が浮いているぬいぐるみを狙おうかなと」
「なるほど」
そこから成り行きで『少年』の挑戦を見守る事になった。『少年』はかなり強い視線でぬいぐるみを見つめ、意を決してコインを投入。そこから静かではあるけれど大胆に目標までクレーンを誘導してゆく。クレーンがピタッと、なかなか良いように見える位置で止まり、そこから目標に向かって降下してゆく。ただちょっと様子が変だなと思ったのは、実際にクレーンが落ちたのは目標の中心からズレた場所だった事。
「あのタグに引っ掛けようと思って」
「あ、その作戦か」
そういえば弟が以前そんなことをわたしに言っていたような気がする。ただへたくそなわたしはそちらの方が高等技術に思えてしまう。そんなことを思っている間に、クレーンがタグに…
引っかかりそうになってすり抜けた。
「あ…アカン。だめだこりゃ」
この結果にがっくり項垂れている『少年』。やっぱり向かない人には向かないような気がするし、このゲームで採算が取れるという事は基本的に一発では取れないようになっているのだろうと考えられる。『現実』の厳しさを味わった『少年』に掛ける言葉を探していると、ある事を思い出した。
「そんな君にはこれを進呈しよう」
何かの作品でこんなシーンを見たことがあるなと思った。わたしはポケットから『ままどおる』を一つ取り出して『少年』に手渡していた。
「え…?いいんですか?」
「嫌いかな?」
これはちょっと演技しているような口調。
「大好きです。好物です。ありがとうございます!」
『少年』がぱっと明るい表情を見せてくれた時、<ああ、こういう事の為に『ままどおる』は存在するんだな>とやや大袈裟な表現が頭に浮かんだ。すると今度は『少年』の方が、
「あ、だったらお姉さん、ちょっとこっち来てください」
とわたしをどこかに誘導する。『少年』が案内したのは店の入り口付近、そこに設置してあった『ガチャ』であった。『少年』はわたしのほうを見て、
「お姉さんってこの中だったらどれが欲しいですか?」
『少年』がこの時「この中だったら」と言った理由は二つある。一つは『ガチャ』の機械が数台並んでいる事。更にそのガチャの景品で自分の欲しいものはどれかという事。当然『ガチャ』なので欲しいものがあるとは限らないのだけれど、この時は運よく一つ見つかった。
「この『猫』のがいいね!」
それは『猫』をキャラクター化したミニフィギュアだった。何を隠そう猫派のわたしはこういうグッズに目が無い。知り合いからは意外と言われるけれど、猫動画もよく見る。
「そうですか。その中でどの『ポーズ』がいいですか?」
「この中だと、猫っぽい座り方『香箱座り』っていうらしいんだけど、これかな」
指でそのポーズのフィギュアを示すわたし。
「じゃあお姉さんにこれプレゼントします」
「え…?でも…」
ガチャの性質から言って『確率的』には一度で当たるとは思えない。つまり場合によってはそれを当てる為に何回か回さなければならないことになる。それを確認する前に『少年』が何か確信を胸に秘めたような表情でコインを投入して、一気にハンドルを回していた。
カタッ
排出口に落ちてきたカプセルが少年の手から手渡される。どういう事なのか分からないけれど、自信満々な表情に促される様にカプセルを開くと…
「え…?凄い本当に当たった!」
偶然と言えば偶然でこれはラッキーである事には違いないのだけれど、それとは別に『少年』のそれまでの行動が少し理解できないでいた。
「『こういう時』って当たるんです。僕の『特殊能力』なんです」
「え…?どういう事?」
わたしはそこで興味深い話を聞かされることになる。