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「ATJ アナザー」を更新しました。自分でも予想しない方向に話が進んでいる気がします。


今月もそろそろ終わりですね。12月はネタに困らない月でしょう。きっとそうでしょう、うん。
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ATJ アナザー ⑤

イベントが終わり、私は『ケロ子』から普通の格好に戻った乙女と、この街を流れる大きな川沿いを歩いていた。既に日は落ちかけ、紅い空と夕陽は私達を後ろから照らし、それぞれの顔にほんのり影を与えている。乙女の下げている大きなバッグには、あの被り物が丁寧に仕舞われていて、小柄な体躯でそれを持ち運ぶのは一苦労だろうと感じられた。「持ってあげるよ」と言ったけれど、知りあって間もないし、これは私にとって大切だからと、断られた。先ほどと打って変わってテンションの下がっている彼女に何を言うべきか悩んでいると、


「送ってもらってありがとうございます」


と彼女の方から言われた。私の帰路はこの方角ではなかった。ただ、乙女が会場から少し遠い駅まで歩くというので、何となく「送るよ」と言ったのである。生憎私も徒歩で来ていたから、実際はただ一緒に歩いているだけなのだが。


「いや、全然。ところで、」


私は先ほどから気になっていた事を訊こうと思った。


「最後の問題、どうして答えなかったの?」


乙女はちょっと苦笑いになって、


「実は私、このお祭りがここであるって聞いて、よく分からないままエントリーしたんです。それも締切間際。で、あろうことか商店街の名前確かめてこなかったんですよね」


と言った。私はちょっと笑って、なるほどなと思った。このお祭りの趣旨は多分友人が言った通り、「ゆる過ぎて不人気なキャラクター」を集めることにあって、それは商店街も言明はしないものの明らかに狙ったのだと思われる。けれど、チラシにはさすがにそういう事は書けないから、「キャラクター祭り」としか記名されていない。遠くから意気込んで参加した乙女には、そういう噂は伝わってこなかったのだろうし、慌てて準備をしていた彼女はそういうことを確かめるどころではなかったのだろう。


「そうだったのか。残念だったね…」


ちなみに優勝したキャラクターには商店街で使える商品券と、あの商店街の公認キャラクターにしてもらえるという副賞があったのだ。残念がるだろうなと思うと、何故か様子が違った。彼女はちょっとはにかみながら言う。


「いいえ。それはいいんです。落ち込んでたのはそういう事じゃなかったんです」


「どういうこと?」


「私、あの問題に答えられなかった時、『ケロ子』だったらどういうリアクションするのか分からなくなっちゃったんです」






「ん?」


「いえ、だから、優勝する事ばかり考えていて、『ケロ子』になりきる事を一瞬忘れてしまったんです」


「あ、そういう事か」


私は確信した。この娘はとても真面目で、本当にキャラクターを愛しているのだと。普通なら、優勝させてやれなかった事を悔やむのだが、それよりも、キャラクター愛の方を優先させるあたり、愛し方が本物である。というか、友人だったら「思い込みが激しい」と言うかも知れない。何せ、その『愛』について教えたのは、他ならぬ私で、私は私で本当のところよく分かっていないからである。確かに彼女は『ケロ子』になりきることでキャラクター愛を私に見せてくれたのである。


「いや、でもそれも正しいんじゃないかな?」


私はあまり考えず言った。


「どういう事ですか?」


「だって、キャラクターを活躍させたいと思うのは、キャラクターを生み出した者としての愛じゃない?その愛と、もう一つキャラクターになりきるという愛がたまたまぶつかってしまっただけだよ。どちらを取るかは、どちらを優先させるかだけど、この場合、どちらも正解だと思う」



「そうですか?う~ん…」


乙女は少し悩み始めた。そして悩んだと思っていたら、突然何かを閃いたように、


「そうか。だけどそうすると…」


と呟いた。私はまた嫌な予感がし始めたが、何故だろう夕陽の美しさに無防備になっていたと、後から振り返るしかない。乙女は言い出したのである。


「そうです。二つの愛を実現するには、一人では十分ではないんです!!私が生み出したものとしてプロデュースして、他の誰かにキャラクターになり切ってもらうしかありません」


私は先ほどの落ち込みから急激に復活した様子に戸惑いながらも


「あ、そ、そうだね」


と相槌を打っていた。しかし、また彼女の表情が曇り出す。



「だけど…私、頼める人がいません…」



ああ、何故だろう。その表情がとても悲しそうだったから、そんな顔は見たくないと思ってしまったのは、夕焼けが美しかったからだろう。しかし結局のところこの日の私はどうかしていたのだ。何故、どうして、


「私でよければ…え?」


と口が動いてしまったのだろうか。


「え…、ほ、本当ですか?」


「う…うん…」


どうして、頷いてしまったのだろうか?未だにその理由が分からない。

なんとかさんの暴走

ちょっとよく分からない過去作「ノスタルジックな人形劇」とそれを少し補足するような「あてなし」。


もう先がない、どん詰まりで何が出来るか、というと、多分、ちょっとはみ出す事なんです。それまでの枠を少しはみ出すためには…と言って実際にやってみると、こんな感じのが出来あがります。


気の迷いです。

ノスタルジックな人形劇

「とりわけ変ではないですよね。好都合ですから。」

人形劇を見たいと思った。それもとびきりノスタルジックな。鉄格子の中で思っていたのは、今日は晴れなのか、曇りなのか、という事。人はそんなに気にしない、当たり前過ぎて。

今、言い方を知らない事への言及をしていると思う。それを何と言うのか、何と言われているのか僕は知らなくて、それでも僕はそれを言いたいのだ。紙飛行機に乗って砂漠の上空を飛んでいるような、何か無理がある感じ。見たくないから、もう見る必要がないから、人はそこから目を逸らし、関わらなくなってゆくようなそんなところが僕の中にある。これは僕の物語にすらならない物語で、季節が幾ら巡っても、巡ってくることのない時間。全ての人が欲しがっているものがそこにあって、実際にはないような、そういう所。僕はまた訳のわからない事を言っているのだろうか?狂ってしまったのだろうか?

「秘密を見たくないかい?」

僕は、その秘密を別に明かす必要はないと考えた。あの日、思い出せないあの日に、僕は確かに誰かに会って、何かを知った。変わってしまったのだと思う。なぜ僕だけが?なぜその人が?疑問は尽きないが、起こったことは確かで、やっぱり振り返ってしまう。


鉄格子は、それに触れている僕を無言であざ笑っている。罪深き人だからという理由で。何の罪だろう?嘘をついてきた事とか、あんまり言いたくない事とか。後悔はしていて、何らかの形で償わなければいけないと思っている。それはそれでいい。だが、償いようのない事って、どうしたらいい?冷たい。ただひたすら冷たい。


「人形劇の中で、ハーディーはマリーを娶る。だけどマリーはハーディーの事をそんなに好いてなくて、好いていないことについて申し訳ないと思うけれど、どうしようもないと一方では思っている。君の心の中はこんなところかな?」

僕はハーディーよりもマリーに同情してしまう。その関係は長く続くはずが無いのに、続かせてしまう何かがある。それは経済的な事情だろうか、世間体だろうか。どっちにしても僕には関係がなくて、ただ、思うという事は常にその人のものだということをそこに事実として付け加えるだろうか。その人のものだから、どうしようもない。そしてその人のものだから、それに責任とか罪の意識を抱くのも仕方がない。そういうことだ。思うことはどんなに醜くても僕のもので、褒められはしないけれど、思ってしまうことは止められない。だからと言って、誰彼構わず伝えてしまうことは恐らく、もっと褒められたものではないのだろう。


人形劇の続きなんてどうでもいい。勝手に続いているのだから。それよりも空模様を知りたい。相変わらず曇りの多い日々なのか、とか。


何故だろう、行き詰っている。それはそうだ。鉄格子の中なのだから。でも生きてゆく事の出口がない事の方が、僕にとっては行き詰まりだ。


「なぜ有意義な時間ばかりを求める?君は君の歩みで認識してゆけばいいじゃないか。君には抱えようのない問題ばかりなのだ。君一人で解決させようなどと誰も考えていない。君は、君で生きなければ偽りの時間を過ごしている事になるのだ。」


例えば有意義が時間を過ごせるとして、僕という条件から解き放たれて思考できる立場にある他者というものを考える。その人は、僕という条件は望まないだろうし、むしろ僕を避ける為に思考しているとも言えないか?いやこれは僕を中心に考えすぎている。そうではない。有限の時間の中で関われる人を多くしようと思えば、僕のような閉じこもってしまうようなところにやって来る好事家はそんなに居ないという事だ。


「友人の話をしよう。その友人は全てにおいて優れていて・・・」


僕にそんな友人はいない。僕のリアリティーを少しでも生きたり、感じたことのある人は、そういう広がりのある世界に関係してゆける道が最初から閉ざされていると感じるのだ。


「君の友人は、外交的で明るくて、いつも笑顔の絶えない人だった。」


僕は床に寝転がった。ゴツゴツしていてとてもじゃないが安眠は期待できない。この空間で僕は、ありもしない事を想像したり、一瞬の白昼夢の中でそれを幻視する。何にもない筈の壁に見える、何かしらの像は、多分僕の脳が作り出したものに違いなくて、それが僕に世界を想像させる。僕には現実が何も見えない。何も見えないから、色んな事が想像できる。でもそれすら何の慰めにもならない。何で生きているのか分からない。



辞めよう。こんな話は辞めよう。僕はノートに鉛筆で書き記す。

『想像はどこにも連れてゆかない』

ノートは早くも残り数ページになってしまった。この記録にすらならない、一見すると狂った言明たちは、不毛で終わりを考えさせる思考を終わらせるための工夫である。

『「何故」と問うてはいけない。問うたところで何も起きないから』

これは最初から数えて2ページ目に書かれて、それ以降も似たような語句で強調しているわりと重要な教訓である。「何故」と問い始める時点で、気付いてしまうのだ。生存を否定したくなっているという事に。


ノスタルジックな人形劇など馬鹿げている。人形劇自体が既にノスタルジックではないか。そうとも限らないか。少し考えるテーマが出来そうだ。ノスタルジックな人形劇。具体的にはどんなものだろう?

あてなし

小憎たらしいへそ曲がりが、胸の中で暴れている。どうにかなってしまったような感情は、行き場を求めて、どん詰まりでヘラヘラ笑っている。君が辿り着けるところ何て、この世界に存在していないんだよ。

「だけど僕はまだ、限界を突き破って進みたいんだけどさ」

進める事なんて出来やしない。進んだと思っても、それは一瞬の錯覚のようなもので、全然道になっていない。それでもその進んだという錯覚を味わいたいが為に、君はその場でぐるぐる回っているのだろうか?


単なる時間稼ぎ。君が檻を破って、鎖を喰い千切って、解かれるその時、その間だけが君がこの世の中に存在したと言える時間で。君を君と呼ぶのは、君がここにない可能性を持っているから、こことは違う何かを見せつけられるからなんだよと、君がいる間は誰もが信じて疑わない。けれどいつか君も収まってしまうんだろ?ありきたりに。分っているから、それを誰も心の中にしまっている。


「ない」ものが「ない」って、分かるまでの、猶予を愉しませてくれるだけでいいのに。


「『ない』と言っている何かを、どこかに見出そうとする、その気持ちだ」


その気持ちとやらが何をするんだね?どうして、掻き乱すの?


「ただ、物分りが悪いのでね。いつの頃からだったか」



私は何ということもない事で動いて、何ということもない事をする。言ってしまえばそれだけなのだ。掻き乱された何かを、正しながら、掻き乱す張本人を掴まえて、また檻に閉じ込めて。




君こそは、ナンセンス。ナンセンスな主体。張本人。



「だけど、それに期待して」

流れるもの

某アニメの影響で、プラモを蒐集し始めてかれこれ35年になるという父。我が家の一室がプラモの為に割り当てられている。雰囲気作りが大切だという事でその部屋のBGMはかけっぱなしの当時のレコード。僕は小さい頃からそれに慣れ親しんできたためか、アルバムごと諳んじれるけれど、カラオケで歌う気にはなれない。ちなみに僕は手が不器用なのでプラモは作れないし、ロボット(と言うと父は怒るけど)の名前は一通り知ってはいるけど、良さがよく分かっていない。

「俺の好きなものは、お前の好きなもの。お前の好きなものは、知らん」

ジャイアニズムが霞んでくるほど、父は押しつけがましい。そういう父親を持った子が割り切らないといけない事は結構ある。例えば、アニメのネタを当然の知識として身につけていないといけないとか。


「そんな父に比べれば僕の趣味なんて可愛いもんだ」

僕は友人に言った。


「いや確かに可愛いよ。だけど基本的に系統とか方法とか規模は一緒じゃね?」


「全然違う。親父のは、ごついけれど、僕のは柔らかい。僕のはワールドワイドだけれど、父のは比較的ジャパンだ。一体どのあたりが一緒だというのかね?」


「この部屋に所狭しと並べられているぬいぐるみと、この部屋に来るといつも流れるBGMとか…」

「どこが?僕が好きなものは、みんな好きだし。君の趣味は知らないけどね」

「いやその理屈はおかしい」


僕は父との違いを強調するが、今まで誰も納得してくれたためしはない。

がんばった

今日のはぎりぎり、及第点な、作品です。
どうして、こんな、乱雑な作品が生まれるのかと言うと
偶然の力に頼り過ぎているからだろうと思われます。

狙って書こうとすると、書けなくなります。
とはいえ、狙わなければ、書けないのも確かで。


でも、読んで頂けて、とても嬉しいです。


探さないでください。


明日も普通に書くと思うので。



すいません。ふざけ過ぎました。300という目標が遠くに感じられて、ちょっと逃避してみたくなっただけです。

熱さまし

おでこに張ったシートが既に熱を帯びている。今日はこのまま寝ていることになりそう。頭がボーっとしているのに、意味もなくしゃしゃり出るイメージたち。


兎を追いまわしていたと思ったら、いつの間にか月にやって来ていて、

「ほらお餅だよ」

とつきたてのお餅をご馳走してもらったけれど、それが毒入りでお腹を壊して、今も熱にうなされている…ような気がする。


三か月前に大海原へ漕ぎ出した船の先端に立ってタイタニックよろしくポーズを取っていたら、そのまま海に投げ出されて、昨日やっとの思いで陸に上がったら、何の記念かよく分からないパレードに鉢合わせ。強制的に参加させられて、リズミカルに踊っていたのはいいが、お蔭で身体の節々が痛い…のだと思われた。


駄目だ、頭が混乱してきて何で昨日の記憶がないのかよく分からない。誰かに電話して訊いてみる事にしよう。誰に電話しよう…とりあえず「何かあったら電話してね」って言ってくれた先輩に電話してみよう。



「もしもし、あの昨日、俺餅食べましたっけ?」

「は?」

「いやだから、毒入り餅を食べて、パレードに参加したじゃないですか」

「何言ってんの?頭大丈夫?」

「大丈夫じゃありません。ボーっとしています」

「え?風邪か何か?ちょっと待ってて、今そっち向かうから」


30分くらいして、先輩がやって来た。

「うわー、凄い熱。」

「先輩…なんか俺、駄目みたいです。」

「何言ってんのよ、しっかりしなさい」

「いえ、もう海水浴も、ダンスもしたくないです。身体中が痛くなります」

「は?」

「あと先輩…」

「何?」

「実は俺…先輩の事」

「え…」

「ずっと前から」

「え、待って!」






「尊敬していました…」

「あ…はい。そうなの」


こんな具合に私はよく分からない話をしていたそうである。適切な看護もあって翌日ごく普通に出社した私に対して先輩の態度が少し冷たいと感じたのは、熱が引いた証拠だろうなと思った。

人力にゃんこ

私はニヤニヤしていた。ネットで猫の動画を見て。愛くるしいその姿に、私はディスプレイに手をつっこんで引っ張り出してきたい気持ちを抑える事が出来ない。

「ネコさん、どうしてあなたはネコさんなの?」

思わず零れた独り言に私は苦笑する。猫の魅力はあの毛並み。私はつやつやとした毛が魅力的な猫を見てからというもの、本人…本猫に会って実際になでなでしたいと思ってしまう。ちょうど見ている動画の猫も素晴らしい毛並み。わーもう、我慢できない。動画をしばらく漁っていると、私は『ねこからのメッセージ』という動画を発見した。何だろうと思ってクリックしてみると、なんと猫が喋っていた。それは猫の口の動きに合わせて、猫が喋っているように音声を合成している動画だった。その猫は、

『ぼくのご主人様は、全然モテなくて、情けないことにぼくをダシに使って出会いを求めているような駄目な男ですニャー』

といきなり切ないことを言った。毛並みはそんなに良くないけれど、愛らしい猫。その猫は飼い主の欠点をどんどん暴露する。

『ぼくのご主人は、この前も仕事で失敗して今とっても落ち込んでいるニャー。だから毎日ぼくに泣き言を言って来て迷惑だニャー。何とかして欲しいニャー。ご主人は誰でもいいから構って欲しいと言ってるニャー』


動画の紹介文には、某呟きサービスのアドレスが載っていて…要するに、フォローしてくれという事らしい。何から何まで情けないし、飼いたくても飼えない人がいる中で、本当に猫をダシに使っているのが許せなくなった私は、フォローするわけではないが、主人宛てに「動画見ました。可愛い猫だと思いますが、そういうやり方はどうかと思います」とメッセージを送った。数時間後、その人から返事が返ってきた。


『メッセージ、ありがとうございます。動画見てくれてありがとうございます。本当に情けなくてすいません…』


過去の呟きを見直してみると、本当に「物凄く情けない人」という臭いがした。なんだか可哀想になった私は、間違ってフォローした後に、間違ってこんなメッセージを送っていた。

「猫の写真をアップして、ネコ語で喋ってくれるなら、フォローしてあげてもいいですよ」



やたらネコ語が上手いその人のアカウントは、その後、ほんの少しフォロワーが増えたみたい。良かったね猫ちゃん。

ようせい

ある日の事、私は甥にむかし話をせがまれた。だが困ったことにむかし話はあまり知らないし、記憶力、再現力ともに衰えが始まっている私は、誰もがよく知っている話でも出来るかどうか自信がなかった。とはいえ、叔父としての威厳を見せつけなければ、あとあと…といっても遠い将来だけれど、彼になめられてしまうのではないかと思い、苦渋の末、むかし話を即興で捏造する事にした。

「『バナナの妖精』」

「えぇ~『ばななのようせい』?なにそれぇ」

「昔々、ある南国の島に、具体的にはフィリピンとか…にたいそうバナナ好きの男がおって、名を『ナババ』と言った」

「なばばぁ?」

「ナババは、あんまりにもバナナが好きだったから、バナナの木を家の庭に植える事にした」

「うん…」

ここまで話すと結構食いつきが良かったので、私は調子に乗ってあんまり要らない設定を付け加えてみる事にした。

「でもナババは年老いたおじいちゃんから、『庭にはバナナを植えてはいけない、バナナの妖精がやってきてしまう』と堅く禁止されていたのだ。それでもナババは信じようとはせず、あろうことか庭に20本もバナナの木を植えてしまった」

自分で適当に話を作っていると、この辺で、庭の管理が大変そうだなとか、どうやって育てるんだろうとか悩み始めたが昔話の都合の良い展開というものに任せて、勢いで乗り切ってしまう事にした。

「それでそれでぇ」

甥も初めて聞く話だろうし、全世界で初めての昔話だから興奮し始めている。

「バナナが立派に実をつけた頃、ある朝、ナババはバナナを一房もぎ取った。ナババが味見をしようとしたその瞬間」

「そのしゅんかん?」

「ナババは一本のバナナが青白く光り出したのに驚いた。こんなバナナは見たことがないナババは、それを家に持ち帰ろうした。すると、そのバナナから小さな声が聞こえるではないか。声はこう言っている。

「ワタシバナナノヨウセイデス。バナナノヨウセイガアリマス。」

ナババはおじいちゃんの『バナナの妖精』という言葉を思い出したが、バナナの妖精がそれしか言わないので何の事がよく分からなかった。



「??」

「ナババがおじいちゃんのところに光るバナナを持っていった時、おじいちゃんは興奮しだして若干血圧がやばくなりながらもこう言った。

「あぁ、やっぱり。またバナナ取られちゃう」

ナババはまたしても何の事か分からないからおじいちゃんに訊いてみた。

「あのな。この家に伝わる伝説で、庭にバナナを植えると、バナナの国の王様がバナナの妖精を遣わせて、うちのバナナの木ごともってかれちゃうんだわ」

「『バナナノヨウセイガアリマス』は?」

「それな、バナナの要請がありますだそうだ。だからバナナが王様から要請されているんだわ」




「ヨウセイ?」

「そう。妖精だけに要請…」

と言うところで話を終わらせようとしたとき、物凄い勢いで兄に睨まれたので、一応その後も考える事にした。


「というのは冗談で、ナババは自分の大切なバナナが王様だか誰だか知らないが、もっていかれてしまう事に怒った。


だがここでナババは物凄い事を考えた。


数日後、ナババの家の庭に植えてある木々が一変に青白く光り出し、一瞬にして何処かに飛んで行ってしまった。木が無事バナナの王国に届いたと思って王様が喜んでいると、なんとそこにはナババがいるではないか。ナババはバナナの木に自分を括りつけて、バナナと一緒にバナナの国にやって来てしまったのである。



「うわーすごい!!」


兄夫婦もこれには少し感心したようで、私が語り出す結末を見守っている。


「ナババは王様にこう言いました。

「バナナ農家なめんなよ」

王様はこの勢いに圧倒されて、ナババをバナナ王国のバナナ大臣に任命したそうです。ナババの作るバナナはみんなに愛されたそうです。


めでたしめでたし」


「わー、おじちゃん凄い!!」


その後、兄の機転で、私も甥に自作の物語を作る、「お話大臣」に要請…もとい任命されたとさ。ちゃんちゃん。
プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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