FC2ブログ

徒然ファンタジー50

ジェシカが唄い終わるとみな一斉に拍手した。大勢に褒められたので少しどうしたらいいか迷っているジェシカ。シェリーは、

「よく唄えてたわよ!凄いわジェシカ!!」


と更に称賛した。ジェシカは嬉しそうに答えた。


「唄えて良かった!」


プロの歌手である望も惜しみない拍手を送っていたのだが「ジェシカ君!」と呼びかけてジェシカを振り向かせた。そしてじっとジェシカの目を見つめ、


「ジェシカ君。凄く雰囲気が良かった。自然に唄ってたけど、素朴で、それが良いの」


と評した。それはまるで自分で確かめるようでもあった。こんな風に場が盛り上がってくるとかつてはカラオケの女王と呼ばれたリリアンが居てもたってもいられなくなり、その間にさり気なく曲を入力していた。


「よし、今度は私が唄うわ!」


打って変わってやや懐メロだが定番とも言えるメロディーが流れてくる。それはJ-POPの見本のような曲だった。リリアンは立ち上がって唄う姿勢になる。


「あ、リリアンさん、この曲って」


年代は違うけれど流石に望は知っているらしかった。メロディーに合わせて頭や体を揺らしてリズムを取る。


「あぁ…あなたが唄うこの曲を何度聞かされた事か…でも懐かしいわ」


シェリーはかつてリリアンと、時々数名を連れてカラオケにはせ参じた時の事を自然と思い出していた。ある程度数が集まった時に誰でも知っているこういう曲から始めるのもノリの良い『空気の読める娘』リリアンらしかった。いかにも唄いなれた発声で普通の人が聞いたら「上手い」と感じるような歌い方だった。


『ふぉーえーば~!!』


よくありがちな英語のフレーズが最後に響きリリアンは気持ちよさそうに唄い終える。ジェシカの時と同じような拍手が場に起る。


「えへへへ…ありがとう」


マイクを通して喋ったのでスピーカーから声が聞こえた。望は、


「リリアンさんにぴったりの曲ですね。とても唄いなれているという感じがしました」


と評した。それに対してシェリーが補足する。


「ええ、唄い慣れているというのは確かよ。リリアンはみんなの前で上手く唄いたいからって、私と二人で入って練習してたもの」


「ちょっと!!それは秘密の約束でしょ!?」


思わぬ暴露にリリアンが赤面して叫ぶ。これもマイクを通してだったので自分の大声でリリアンは逆に恥ずかしくなった。対してシェリーは余裕綽々で返事する。

「もう時効よ。大丈夫よ、何も恥ずかしい事ではないわ」


「ま、まあ、それはそうだけど…」


そう言われてしまうと何も対抗できなくなる。しぶしぶ食い下がり腰を下ろすリリアン。それを見ていた望は失礼と思いつつも堪えきれないと言った感じなのか口許を手で隠していたが吹き出していた。


「望さんまでヒドイ!!」


「ご、ごめんなさい…ふふふ…」


「そんなに笑うんだったら、聞かせてもらおうかしら?プロの歌手の実力とやらを!!」


リリアンのフリに望は「待ってました」とばかりに目を輝かせこう言い放った。


「ふふふ…任せてください!!」


「あ、『徒然ファンタジー』が聴きたい!」


これは意外にもジェシカが言った事だった。曲は唄えても曲名はあまり覚えていないジェシカだが、最近リリアンと一緒に『大宮望』の曲のCDを探しにCDショップに出向いていたのでしっかり覚えていたのである。一瞬不思議そうな顔をしていた望だがリリアンがそれを説明すると今度はとても嬉しそうだった。ジェシカが覚えていたこともそうだが、リリアンが曲を買いに行ってくれたのも嬉しかったのだろう。


「よし。唄っちゃいますよ、私。ちょー本気で行きますから!!」


本気宣言が飛び出した時、頑丈そうな黒いスピーカーから爽やかで流れるような旋律のイントロが鳴りはじめた。リリアンと同じように、いやそれ以上に堂々と立ちあがって姿勢を正す望。表情が一変してキリっとした表情になったけれど、曲に合わせているのか柔らかな雰囲気の目線である。


『この世界ってそんなに単純じゃない でも考える事は単純で君の事ばかり』


完璧な唄い出し。歌唱力には若手の中では定評があるだけあって、殆どピッチが崩れない。しかも良く響く声なのでリリアンは<これ外に聞こえたらばれちゃうんじゃないの?>と思ってしまった程である。


『然って言ってた誰かが 目を覚まして世界をみたら
 案外素敵な マジカルワールド~』


Bメロに入っても乱れず、綺麗なビブラートで最後の部分を響かせていた。いよいよサビになるというところでジェシカは無意識に強く拳を握りしめていた。ここから先は声量、つまり肺活量が必要なので聴いている方も力が入ってしまうのである。


『巡り合って また輝く』


しかしながら既に安定感のある声でまざまざとプロの実力を見せつけられる。外見はか弱く見える事もある望だが筋力や肺活量は相当なものである事を示していた。


『 君が居て  すぐ笑って そしたら私の
 ファンタジーが今日も動き出す』

当然と言えば当然だがその後も難無く唄いこなし、一番が終わるとアイドルばりのスマイルが飛び出した。


「凄い…。レベルが違うってこう云う事を言うんだわ…」


「うん…」


リリアンもシェリーも圧倒されていた。ただでさえ上手いのに生で聞くので迫力が違った。だがリリアンはテレビの時よりも今回の方がもっと上手いような気がした。その後も望は本当に楽しそうに唄う。


『この世界って難しそうでシンプル でも君の事を考えても全然分らない
 君の言いたい事がずっとずっと後になって 分って気付く本当の気持ち
 バスに乗って 今夜出掛ける』


歌詞の内容が意識しないでもすっと入ってくる。この曲は比較的新しいけれどリリアンは不思議と懐かしい気持ちになる。それはシェリーも同じだったようで、


「なんか、青春時代を思い出すわね」


と呟いていた。2番、Cメロ、大サビと王道ともいえる展開をしっかり歌いこなす本家。カラオケルームが殆どライブ会場と化していた。唄い終わった望に惜しみない拍手と絶賛する言葉が与えられる。


「参りましたぁ!!!」


「さすがね、完璧よ」


「凄い!!本物だ!!」


それぞれ大袈裟に言っているようでもあり、本心でもあった。望はプロの実力を存分に見せつけたが、一つプロとは思えないのがそこで照れている表情だった。


「うわ…なんかめっちゃ恥ずかしい…本番はこんなことないのに…」


望が席に着くと何となく大仕事をやってのけたようになったし、プロの後で唄うのには勇気がいる。したがって「この次は私」とは言いにくい。特にシェリーに至ってはどちらかというとカラオケでは聞く方が多くそんなに歌わないタイプなので好都合だったため、


「よし。とりあえず一旦ここで小休止。話もしなければならないしね」


と場を取り仕切った。他の者もその提案に賛成し、とりあえずこれまで分った事を話し合いながら振り返る事にした。


「多分「M・A」さんがジェシカの前に現れた事が始まりよね」


シェリーが確認する。


「その筈ね。でもそれ以前から「M・A」さんは秘術とかを調べてたみたいだよね」


「うん。これは私の推理なんだけど、「M・A」さんは何かの研究者なのかも知れない。『半分隠居』というのは個人で研究しているという立場なのかもって思ったり」


するとさっき歌い終わったばかり望も今度は別な意味で目を輝かせて、


「そうかも知れません!!『おじさま』は結構難しめの話もするし、あちらの世界でも少し特別な人なのかも知れません」


と言った。


「なるほど…。確かに秘術を使えるのって少数とか、あんまり知られてないとかだったもんね」


「そして本をよく読んでいるような話ね。色んな書物に通じている…しかもこちらの世界のではない書物…」


それはそれでとても興味が湧くような内容なのだがシェリーはここで再び忠告する。


「でも、『おじさま』と『異世界』の物事について知ることは私達の目的なのかしら?」


リリアンとジェシカはシェリーから既にそれを聞いていたので納得する。望も初めて聞いたらしかったが、少し遅れて何かに気付いたような素振りをして自分の言葉を確かめるように言った。


「違い…ますね。勿論、この世界の人に異世界の事とかを知らせるのであればある程度知らなければならないですが…」


「うん、望の言うとおり。あくまで「M・A」さんの意向に従う、望みを叶えるならマストよ。でもどうするかは私達が決める事。ただ…」


「ただ?」


リリアンは接ぎ穂を与えた。


「「M・A」さんの事とか、彼の考えを聞いて知ってから判断する方法もある」


「つまり?」


リリアンの問いに答えたのは望だった。


「『おじさま』の事情を知って、協力しようと思うかも知れない…という事ですよね」


するとシェリーは感心した様子で、


「貴女やっぱり凄いわ。想像力が豊かというのか、すぐわかっちゃうのね」


と言った。


「いえ、『おじさま』とやり取りをしているのは私ですし」


望は謙遜したが、この年齢にしてはしっかりしているのは間違いない。何となくリリアンも張り切って述べる。


「今の段階だとちょっと協力してもいいかなって部分もあるけど、私は今の生活で満足」


「そうね。私は自分の疑問については望から教えてもらった事で納得しちゃってるから、唯一『秘術』と『置物』の関係を調べたいだけよ」


「あ、さっき言おうとしてたのってそれね。もしかして京子の考えだと見せてくれたあの猫の置物が秘術が使われたものだって思ってるの?」


リリアンの推察は概ね合っていた。ただシェリーは難しそうな顔になって、


「そこなのよね、もしそうじゃないとすると不思議なままだし、関係があると考えた方が自然だと…」


望はそこで『猫の置物』という言葉が気になったのかシェリーに質問した。


「ああそれはね私、F県のN市で雑貨店を営んでいるんだけど、アンティーク物も集めてたの。で、不思議なものがその中にあってね、黒と白の猫の置物が一体ずつあって、今はとある事情で私の所に黒の置物しかないんだけど、それは『所有者の人生に彩りを与える』という力があると言われている物なの」


「と…いう事は…」


望はじっくり考えているようだった。


「それがもし「M・A」さんの世界の『秘術』に関わっているとか、貴方たちが変身する『道具』のように秘術をカタチにしたものだと云うのなら…」


「過去にこの世界に齎されたものの可能性があるという事ですね」


「その通り。「M・A」さんの話にもあったようにね」


「そうか、だから「M・A」さん、『おじさま』はさっき『黒猫』と言ったのね」


シェリーは首肯する。


「そうだとするとね、『おじさま』、「M・A」さんはそれも調べたがっているのよ。私はそこは協力しても良いかな」


「そうか。京子も調べる動機はあるわけね。私とはちょっと違う…ということだし、そうすると望さんは?」


すると望は躊躇いがちにこう答えた。


「私は…実はですね、異世界に興味があるというのか、惹かれていて…『おじさま』とのメールも楽しんでいたり…」


「でも、異世界の事とか猫になれる事とか公表するとなると話は別でしょ?」


シェリーは確かめるように訊いた。


「ええ、そこは同じです。協力したい気持ちはあるんですけど、そもそもどうやって良いのか分らないし、それが必ずしも良い結果になるとは言えない気もするんです」


そこで3人は頭を悩ませていた。お互いの気持ちは分るし、そこまで喰い違っていないという事も明らかなのだが何か決定力に欠ける。その時、3人の話を聞いていたジェシカが口を開いた。


「俺、もう一回『おじさん』に会いたい」


「「「え…?」」」


それは誰とも違う意思だった。そしてジェシカはしっかりした口調で続ける。


「『おじさん』に来てもらって、俺がこうしている所を見てもらいたい」


それを聞いた3人は最初戸惑っていたが、ある意味でその気持ちはとても自然な事のように思われてきた。けれど、それを実現するのはこれまでの話だと難しいような気もする。しかしながら、望とシェリーはにこやかにほほ笑みながらほぼ同時に言った。


「いいと思います」


「いいと思うわ」


そしてリリアンも頷いて、ジェシカに微笑みかける。


「そうね、私も会ってみたい。そして『おじさま』に「M・A」さんに直接発表してもらうのがいんじゃないかしら。それが出来るように私達が協力するのよ!」


「ご主人さま!!」


「ふふふ、決まりね。じゃあ望、メールを送ってみて」


「分りました」


望がメールを送ると数分後に返信が来た。そこにはこうあった。


『なるほど、そうなりましたか!面白いアイディアですね。協力していただけるなら実現可能かも知れません。そうですね私も皆さんとお話ししてみたいと思っていました。こちらでも少し練ってみようと思います。


ありがとうございました


『朝河』より』


「「M・A」のAって『朝河』だったのね…Mはなんなんだろう?」


やはりそういうところが気になってしまうリリアン達であった。
スポンサーサイト

徒然ファンタジー49

一行がリリアンのアパートに到着すると望は何か感動したのか嬉しそうに、

「うわぁ~」

と声を上げた。その際の仕草も可愛らしい女の子に特徴的なものだったので会って間もないシェリーは感心して彼女を見ていた。猫を飼っていいという条件以外はごく普通のアパートなのでリリアンは思わず何に驚いたのか訊いてみた。


「実は私、他の人の家ってあんまり来たことがなくって…」

「え…?そうなの、なんか意外…」


この発言には逆にリリアンの方が驚いてしまった。


「その、プロの歌手になるって決めてからレッスンとオーディション漬けの毎日だったんです。それで、あんまり友達と遊べなかったという理由がありまして…」


少し恥ずかしそうに訳を説明する望。リリアンもシェリーも確かにそう云う事情があるならと思ったのだが、リリアンは特に歌手を夢見ていた時期があるだけに自分がそういう風な生活をしていたら早々にギブアップしそうだなと望に対する尊敬が増した。


「それだったら仕方ないよね。でも最近はオフとかもあるんだよね?」


「ええ。デビューしてからはスケジュールがしっかり決められるし、オンとオフがきっちりしているところもあるので結構一人の時間も増えて…」


するとシェリーが、


「会ったばかりでこういう質問をするのもなんなんだけど…」


と前置きしてからこんな事を訊ねた。


「お友達はいらっしゃるのかしら?」


明らかに望は複雑な表情になって「えーと…」と言って答えにくそうにしている。そして何か悪いことをした時のような自信のない調子の声で、


「あんまり…事務所がLINEとかも気をつけろって云うので…」


「ああ、それはちょっと大変かも…」


シェリーとリリアンは世代的にそこまでSNSに依存しているわけではないけれど、若く中高生の代表であるような望にとってそういうもので密に連絡を取れないというのは会話に混ざり難くなる要因であるという事は十分了解できた。


「だからその、歳は少し離れていますけれど、皆さんとはお友達のような気持ちというか…その…」


年下の子のそういう切なくいじらしい表情を見てしまうと、先輩として、皆まで言わせるわけにはいかない。


「うん。私もお友達になれたらいいなって思ってました!」


元気よく答えるリリアン。彼女の人懐っこい部分と気持ちのいい部分が遺憾なく発揮されたカタチである。シェリーも友人に引っ張られるように続ける。


「貴女のように素敵な人とお友達になれるチャンスを無駄にするわけには行かないわ!!」


彼女らしい少し回りくどい言い回しだが語調ははっきりしていた。そしてトドメとばかりにジェシカが、


「みんな仲間になったんだね!!」


と仲間認定をしてしまったので、場は一気に明るくなった。ぱあっと花弁が開くような表情になった望。


「ありがとうございます!!とっても嬉しいです!!」


その後新しい友人に少しばかりアパートの中を見せてから、再び外に出て続々とシェリーの真っ赤な自動車に乗り込み始めた。助手席に座ったリリアンがシェリーに向かって言う。


「こういう時に車があるって言うのは便利よね。私の同僚で車通勤の人なんて滅多に居ないけど、ちょっと考えてみようかな…」


「まあ、私の住んでる所では車無いと生活できないとも言えるしね」


シェリーが答えると、彼女が住んでいる場所について気になる事があったらしい望が訊ねた。


「京子さんの住んでる所って確かF県でしたよね。数年前は大変でしたし、今でも大変だと聞きます」


望のその心配そうでいかにも気掛かりだという様子をフロントミラー越しに見ていたシェリー。何かを納得した顔になって優しく語りかけた。


「この国には望のように素晴らしい人が沢山いるから大丈夫。ふふふ、逆に将来は安泰かも知れないわ」


「え…?」


一瞬ぽかんとしていた望だが、褒められたらしいことに気付いて少し恐縮して顔を赤らめていた。


「う~ん、『カワイイ』っていうのはこういう娘の事を言うような気がしてきたわ」


「京子はカワイイってあんまり言われないもんね」


リリアンが得意になって茶々を入れる。少しイラッとしたのか、


「あら、あなただって似たようなもんよ」


とやり返した。実際、シェリーはカワイイとは言われないタイプだが皆口をそろえて「キレイ」とか「カッコいい」と云っているのでリリアンの言い方では不十分であるといえるだろう。そしてリリアンについても一部の人からは「結構カワイイ」と言われているタイプなので、シェリーの言い方でも足りない。望とジェシカは二人のやり取りを聞いていて、自然と笑顔になった。そしてこんな時にはこう云うのが定番だろう。


「お二人とも仲が良いんですね!!」


既に車は走り出していたので前を向いてシェリーが答える。


「ふふ…否定はしないけど、肯定をするのは癪だからノーコメントで」


「あんたがそういうねじまがった性格をしてなけりゃ、「カワイイ」って言ってあげるのに!!」


「なんか俺は二人がこういう風に話してるの見ると安心する」


「分りますよ、ジェシカ君。私達も一杯会話しましょう」


「うん」


とさり気なく良い雰囲気になっていたジェシカと望に対してリリアンもシェリーも複雑そうな表情で、


「ある意味末恐ろしいわ…」


「ほんとね、ちょっと注意しなきゃ…」


と言い合っていた。徒歩で15分ほどの道程なので車だと5分程で到着した。そのカラオケ店は時間的に日曜でも10時半頃が空いているのか、スムーズに入室できた。店員が望を見ても特に気にしていた様子もないのがちょっと面白かったリリアンであった。4人だが少し広めの部屋をあてがわれた。望も慣れているようで広い部屋を見て「ラッキー」と呟いていた。ややテンションの上がっている一同の中でもシェリーは少し冷静で、


「さて、歌も唄ってもらって結構なんだけど、みんな本題は忘れてないわよね?」


と確認をした。少し浮かれていた部分があったがこの発言でちょっと顔つきが変わった。


「そうですね。時間も取れましたし、色々確認した方が良いですね」


そして望が最初に切り出した。


「メールをお読みになられたと思いますが、正直言って私も『異世界』の事を詳しく訊いたのは初めてでした」


「そうね、多分望がリリアンに接触した段階で説明しようと思ってたのかも知れない」


シェリーは自らの推論を述べた。


「確かにそうかも知れませんね。『おじさま』には今日の会合についても事前に連絡してあります」


「それだと好都合ね。あの、ちょっと思ったんだけど今少しメール送ってみる事出来るかな?」


それはリリアンの思いつきだったが、シェリーにとっては確認したいことの一つだったので「そうね」と賛成する。


「ではどういう文章を送りましょうか?リリアンさんにこの前説明したように、私が送ろうと思わないと送れないんです」


「一応、私もアドレス確認させてもらっていい?」


「はい。これです」


シェリーは望のスマホの画面を見た。彼女はすぐに分ったが、表示されたアドレスは明らかに最後の方が利用可能な文字列ではない。正確に言えばメールアドレスの体裁を為していないのである。


「これはそもそもメールアドレスとして不正ね。試すまでもなく、これでは送れないわ」


「やっぱりそうだよね」


リリアンも馴染みのない文字列だったのは分っていたが確信に変わる。


「じゃあ、こういう文章は可能?『立華京子さんをご存知ですか?』って」


状況から言ってこれはかなり有効な質問だった。望は頷いてメールを打ち込む。そして目を瞑って送信のところを押す。数秒後望が目を開けて再び画面を見た時に送信が完了した際の「ポン」という音が鳴った。


「見てください。送信完了しています」


シェリーは画面をじっくり見て確認して、周囲に、自分に言い聞かせるように「確かに送れている」と言った。


「返信がどうなるかだよね」


ジェシカも次に何が起るか望のじっと見守っていた。ここ一週間ほどリリアンと異世界の事とか「M・A」氏の事について長い間話していたので、どんな返事が返ってきても殆ど準備できていた。数分後メールの着信音が鳴った。望は素早く確認して、


「着ました!!『おじさま』からです」


と告げた。そこにあった文章は以前見たものとくらべると短いものだったが、


『ええ、以前から名前も存じ上げております。どうやら今そちらにいらっしゃるようですね。立華さんの店の『黒猫』についても興味がありました』


と大体の事を把握している様子が窺える。シェリーは、


「うん。間違いないわ。それは「M・A」氏の書いたものよ」


と確信していた。リリアンは一つ気になる事があった。


「『黒猫』って何だろう?猫飼ってたっけ?」


シェリーは自信をもって答える。


「それは私の部屋の『黒猫の置物』のことよ。どうやらその置物について「M・A」さんとは同じ考えみたいね」


「どういう事?」


「まあ、焦らないで。一つ確かめたし、せっかくカラオケに来たんだからちょっとジェシカに唄ってもらいたいわ」


「そうね。じゃあジェシカ、唄える?」


「うん。前唄わなかった曲も唄えるよ!!あの人たちの曲で、「全力で走れ」ってやつ唄える!」


「ああ、あれもいい曲よね。分った、今入れる」


そして室内にはリズミカルなテンポの伴奏が流れ始める。望は「はっ」とした表情になった。


「あ、これって…」


その特徴的なイントロで曲のタイトルが分ったようである。すぐジェシカは唄い出す、



いつだってこんがらかってる 今だってこんがらかってる僕の~頭のな~か~
そ~れ~は~恐ら~く君と初めて会った時~から~




「今『Sugar!!』って表示されてたわね、誰の曲?」


シェリーは知らないらしかった。リリアンが教えようとしたとき、望は


「フジファブリックです。私も大好きなんです」


と言った。リリアンはその時、望の「徒然ファンタジー」という曲の雰囲気が彼等のものに似ていると感じた事を思い出した。「もしかして」と思い望に訊ねてみる。


「もしかしてだけど望の曲ってちょっと意識してるの、フジの事?」


「やっぱり分かっちゃいますよね。作詞作曲は私ではないんですけど、アレンジのイメージを伝えたんです」


「ああ、そうだったの」


リリアンはそれを聞いて望の事がもっとよく分かったような気がした。一方シェリーはジェシカの歌声にこの前のリリアンと同じように感動しているらしく、彼女には珍しく手拍子などをしていた。


「ジェシカ君。なんか…いえ、、、」


望は何かを言いかけて辞めたようである。ただ、ジェシカの一生懸命唄っている姿を真剣に見つめ、感じ入っているようであった。




全~力で走れ 全~力で走れ 36度5分の体温
上~空で光れ 上~空で光れ 遠くま~で~!! 

徒然ファンタジー48

ジェシカと愉快な仲間たち…ではなく二人の女性は公園までダッシュしていた。望との待ちあわせの時間は10時だけれど、もうまもなくその時間になってしまう。近いからという理由で悠長に構えていたのが仇になった。別に多少遅れてもとは思うが、年長者二人がそれではなんとも格好がつかない。必然的にみんなで疾走するのだが、やはりというかジェシカが速く少し前に出ている。


「私の車で来ても良かったような…」


公園に着いた時にシェリーが気付いたが実際は車で来ても大して時間は変わらないくらいの距離である。


「まあ、運動になるから、はぁ…いいんじゃない?」


昔は運動部だったリリアンも走るとなると流石に息切れしてしまう。親友を見たがあまり疲れてなさそうである。気になって訊ねてみた。


「あんた、疲れないの?」


「こう見えてもそこそこ体力があるのよ。店でも立ち仕事とかだからね」


「へぇ~…はぁ、はぁ…」


「いや、むしろあなた疲れすぎじゃない?」


「あれ、望は何処に居るんだろう?」


先に到着したジェシカは周囲を探していたが望の姿が見えないので不思議そうにしていた。既に10時は廻っている。


「本当にこの時間で合ってるの?」


「え、大丈夫だよ。多分」


リリアンは一瞬多忙な望の方で何か遅れる理由があるのかも知れないと考え始めた。屈んだ姿勢のまま周囲を見渡すが、望らしき人がいないか確認する。どうも見つからない。


「いないわね…」


「そうね、あそこに猫が居るけど、人は見当たらない…」


「え…猫?」


「ほら、あそこ。あら、近付いてきたわ」


「あ…」


リリアンとジェシカはその猫に見覚えがあった。桃色の首輪に鈴が付いていて、近付くごとにその鈴の音が大きくなる。白に黒のぶちのはいった猫は一同の前で立ち止まり「にゃ~」鳴いた。


「京子、その猫ね…」


リリアンが説明しようとした時、猫は自分の前足で首元の鈴を数回鳴らした。すると、猫がみるみるうちに一人の女の子の姿になる。次の瞬間そこに居たのは勿論、大宮望であった。


「あ…」


シェリーは思わず口をあんぐり開けたまま固まってしまった。確かに初めて見るとショッキングには違いない。彼女はそこではっと気付いて「ううん」と首を振って目をくわっと見開くと初対面の望に向かってこう言った。


「全く、あなたも猫の姿で現れるのね!」


少し呆れた感じで言ったのだが、対する望はこれぞ見事な営業スマイルという風ににっこりと笑って答えた。


「こっちの方が説明が省けると思いまして。初めまして…えっと」


「立華京子よ」


同じくシェリーもにっこり笑って手を差し出した。


「そうでした。立華さん。今日は宜しくお願いします」


そう言ってシェリーの手を握る望。


「『京子』で良いわ。私もあなたの事を『望』さんと呼ばせてもらうわね」


「ええ、そうして下さい!」


シェリーのフレンドリーな様子に望は喜んでいるらしかった。リリアンは何となく気の合いそうな二人だと思った。二人で紹介が進んでしまっているが、よく考えてみると確かにシェリーに猫から人間に戻る瞬間を見せるのは効果的だと思った。お陰でこれからの話もスムーズに出来そうである。その時ジェシカが、


「うわ~みんな集まっちゃった」


と素朴な感想を洩らした。ジェシカはこういう状況が初めてとも言えるので少しばかりワクワクしている。


「ご主人さま、シェリー、望、俺!!」


そんな何気ない確認に、女性陣3人はみな同じようにほほ笑んでジェシカを見つめた。


「じゃあ、ここでも良いけど何処か話すのにいい場所あるかしら?」


リリアンが少し自分が仕切らなければと思って発議する。


「そうね、別にあなたのアパートでも良いんだけど。一旦戻れば車で移動できるし」


「あ、それはいいですね。私もリリアンさんの住んでいる所見てみたいと思ってましたし」


「何にもないし、ちょっと恥ずかしいけど車で移動するっていうのは賛成したいわ」


「じゃあ…」


決まりかけた時、ジェシカが何かを思い出したのか突然大きな声で言った。


「あ、そうだ!!カラオケ!!」


「え…、あ、そうか。その手があったか」


リリアンはその意図を汲んで二人に説明した。


「あのね、前望にあった日の午前に近くのカラオケ屋さんに行ったの。それでね、ジェシカが『望の歌が聴きたい』って言ってて、あの…そのもし大丈夫だったら私からもお願いしたいの」


何となくプロの歌手をカラオケに誘うのも恐縮してしまうのだが、ジェシカの希望でもあったし実は自分も聴いて見たかったのである。


「えっと…」


握った手を顎のあたりに当て少し考え始める望。ジェシカが心配そうに見つめる。望はその様子を見て、意を決したのかニコッと笑って


「いいですよ!行きましょう」


と快諾した。さしものシェリーもこの展開には「うわっ…凄い」と呟いたくらいだった。後々の事を考えてとりあえずリリアンのアパートに先に戻ってから車でカラオケ店まで移動する事に決めた。

徒然ファンタジー47

翌週の日曜、立華京子がリリアンの家を訪れた。前に来た時ように真っ赤な自動車でやって来た彼女は大分暖かそうな黒いコートを着ていて外見的には顔つきもキリっとしていて気合が入っているように見えた。けれどそれも致し方ない事だろう。彼女はこれから起こる事に対して気合を入れて臨むべきだと思ったのである。


が、その表情も家の中で待っているであろう『猫の少年』にもうすぐ会えると思うといきおい緩んでしまう。玄関の前で誰も見てないのに既にニヤついているシェリーをもし見ている人がいたら少し気持ち悪いと思うだろう。それでも自分を戒めて再び凛々しい表情になって優雅な動作で呼び鈴を押す。


「は~い」


中から聞きなれた声が響く。いざ参らんという気持ちで扉を開ける。


「え…」


だが中で待っていてくれていたリリアンとジェシカを見て一瞬呆然とする。確かに両名とも待っていてくれたのだが、彼女が期待した通りではなかった。


「何でジェシカはその姿なの?」


『キジトラの猫のジェシカ』を見てシェリーは動揺しているのかそのままジェシカに向かって言った。少しはシェリーの言葉が分るのかシェリーをじっと見ながら「にゃ~」と返事をするジェシカ。そこでうっかりしていた事に気付いて改めてリリアンに訊ねる。


「どうして猫のままなの?」


するとリリアンは悪戯っぽく「てへっ」と舌を出し、


「ちょっと期待を裏切ってみました!!」


と白状した。その後一応付け加えるように、


「でも京子、あんまり猫の姿見てないからいいんじゃないの?」


と言いシェリーもこれには複雑な表情をしている。シェリーは小さく溜息をついて言う。


「でも、やっぱり人間の姿で出迎えてもらいたいわ…」


「私は猫の姿でも嬉しいけどね」


「まあ、そう言われてみればこの姿の方が…こうやって」


と言いながらジェシカを抱き上げて頬ずりするシェリー。「う~ん、ジェシカぁ~」とやたら甘ったるい声でスキンシップを取る親友の姿を見て、<京子ってこんな人だったけ?>とちょっと疑問に思うリリアン。とにかくこの後の事もあるのでその辺で家に上がらせて、部屋でジェシカを人間の姿にする。


「ジェシカ、元気にしてた?」


「うん。シェリーも元気だった?」


「元気だったけど、ジェシカに会えなくて淋しかったわ」


「俺も、シェリーに会いたかった」


ここでもまるで感動の再開のシーンが再現されるのでさすがに食傷気味のリリアン。ここは自分が仕切って話を進めなければと思い、やや強引に話を始める。


「京子、メールは読んでみた?」


シェリーの方もここに来た目的を思い出したのか真面目な表情になって答える。


「ああ、そうだったわ。その事でちょっと考えてきたんだけど…」


と前置きをしたシェリーは胸ポケットから小さな手帳を取り出してそれを調べながら言葉を続けた。


「えっとね、ちょっと気になるところをメモして来たんだけど、先ずはね「M・A」さんの住んでいる場所が私の住んでいるF県のN市というところだって話なんだけど、つまり地形とか、もしかして歴史とかも同じって事かしら?」


「あ、そういえばそういう事も気になるよね、同じところは同じだって言ってたけど」


「あとね、秘術と言ってるみたいだけど私の事も彼は知ってるのかしら?」


「それも聞いてみないとわからないよね」


「今までの話だと少なくとも「M・A」さんが「大宮望」さんが有名人でどういう立場にある人なのかを知っていたわけでしょ」


「多分ね」


「という事は、その気になればあちらの世界に居たままでこちらの世界の事を調べられる状態にあるんじゃないかしら?」


「うん、確かに。さすが京子ね、まるで探偵みたい…」


実際シェリーはこの頃探偵以上に複雑な情報を整理しているので強ち間違いでもなかった。ただこれは事件ではない。むしろ与えられた情報から生活を推理する考古学のようなものかも知れない。


「そういう部分を詳しく訊ければ、「M・A」さんがどういう人なのかも見えてくるかも知れない、けれど…」


「けれど?」


シェリーはリリアンの考えを確かめるように言った。


「リリアンやジェシカ、私達のこれからに直接関係あるのかどうかという事を考えると微妙な疑問ね」


「というと?」


「つまり、私達は『異世界の事』が知りたいのかってことよね」


その言葉を聞いてリリアンは「はっ」とした。確かに異世界の事は当然好奇心で気になるけれど、自分達は厳密には異世界の事を調べようとしているわけではないという事に気付いたのである。


「確かに言われてみれば私達は異世界があるとしてもそれを確かめる必要もなければ、「おじさま」の…「M・A」さんの事を知る必要もないのかも知れない。あくまで彼がこの世界の人達に異世界の事を知らせたいと思っているだけで」


そういう風に整理すると自分達のすべきことが見えてきてすっきりする。リリアンがシェリーのメモを見せてもらうと『大事な事』という見出しで、




・「M・A」氏の希望を叶えるのかどうか?

・『異世界』の事をどれだけ調べるか?

・大宮望の意向





と箇条書きされていて、その部分がまとめなのか大きな丸で囲ってあった。勿論リリアンもいろいろ考えたけれど、ジェシカと相談し合っていて『異世界はどんなところだろう』という話ばかりしていたのとは大違いだと思った。親友は頼りになるけれど、逆に自分もしっかりしなければと思い直す。


「そうだ大宮望さんのことだけど、今9時だから一時間後くらいに待ち合わせするんだけど」


「場所は?」


「近所の公園。その方が都合がいいからって」


「へぇ~。なんか緊張するわ」


「京子が緊張するのって珍しいわね」


「望は良い人だよ。なんか「ふわっ」ていう感じ」


ジェシカがこう言ったのだがシェリーは何か気になった事があるようである。


「大宮望が「ふわっ」ていう感じだとすると、私はどんな感じ?」


急に訊かれたのでジェシカは「うん?」と不思議そうな声を出したが、ちょっと考えた様子。少し悩んで、


「うんと、「きらっ」て感じ」


と言うとシェリーはそれで満足だったのか、うんうん頷いている。それならばリリアンも訊いてみたいと思ったのだがこのペースになるとまた本題からそれてゆきそうだったので今は控える事にした。


「そういえば、京子、あと何かある?」


「ああ、一つあったわ」


訊ねられてシェリーは思い出すことがあった。


「リリアン、この間メールでお母さんがアパートに来たって教えてくれたわよね」


「あ、そうだった。それがあった」


「その後どうなの?」


リリアンは少し神妙になってシェリーに伝えた。


「年明けてから一応連絡したんだけど、お母さんからは『寒くなるから、とにかく健康には気を付けなさい』って。ジェシカの事はなんか有耶無耶になってる」


「なるほどね。気持ちは分からなくもないわ。まあその辺は時が解決すると思う」


「うん、そうだといいんだけどね」


それから待ち合わせ時間まで意外と時間があった事もあるけれど結局いつものように対戦ゲームをし始める一同。ジェシカにクリスマスプレゼントとして与えた人生ゲームのようなボードゲームで対戦していると危く時間を過ぎてしまうところだった。

徒然ファンタジー46

シェリーこと立華京子がやって来るという事だったが、それまで少し間が空くのでリリアンは望とある程度連絡を取っていた方が良いと考えた。「おじさま」の事に直接関係のないちょっとした事はこれまでも時々メールしていたりしたのだが、シェリーの勧めで「とりあえず彼の方はリリアンとやり取りするつもりがあるのか?」という事を確かめみようと思った。

「う~ん、これでいいかな」

文面を考えていたのだがあまり配慮し過ぎると意図が伝わらないのかも知れないと感じストレートに訊いてみる事にした。文末に「これを『おじさま』に伝えてほしい」と加えて望にメールを送信すると、


『分りました。メールの件、伝えてみます』


とすぐに返ってきた。高校生の望は恐らくまだ冬休みで今日はオフなのかも知れない。社会人であるリリアンがこのメールを昼休みに送信したのはお昼ならば相手にもある程度余裕があってメールを見る可能性も高いと踏んだからである。問題はリリアンにとっては謎の人物である「おじさま」の方である。彼と望が通信する場合には『異世界』との通信だから地球上でも時差があるように相手が現在活動中とは限らない。


<というか、活動しているとしても何をしているのだろう?>


相手の状況を想像したり考え始めると分らない事だらけで何から訊ねればいいのか迷ってしまいそうだ。望によれば相手は何らかの手段でリリアン達の事はある程度知れる状況にあるのだから、少し気を遣って欲しいとも思ったりする。


「まあ、気長に待ちますか」


と気を抜きかけた時再びスマホにメールが届いた。望からである。


「え、結構早くない?」


メールを確認すると件名が『おじさまの返信です』となっていた。本文ではまず望が「おじさま」が返事をくれた事、そしてそれを望からリリアンに転送してもらいたいとの希望があった、という事などが手短に説明されていて、その後に「おじさま」が書いたと思われる文章がそこにコピーされていた。それはこういうメッセージだった。



拝啓 リリアン殿

ジェシカ君の事や望さんのことなどで貴女にはご迷惑というか面倒をお掛けして申し訳ありません。もともとは私個人の願望から始まっている事です。まずこういう場合は自己紹介から始めるべきなのですが、その前に『こちらの世界』についてお話しするのが良いのかも知れません。


『こちらの世界』と言っても貴女がたがまだ直接見たわけではないでしょうし、実際のところ『こちらの世界』とそちらの世界には実現可能な事などで大きく違うところもありますが、人間普通に生活を営んでいるという事では共通していて、つまりベースとなる部分は同じなのです。『こちらの世界』の人も仕事をしたり子供を産み育てたりといった日常生活があります。私も一応仕事のような事はしていていますが半隠居とも言えるのかも知れません。


少し注意をしていただきたいのは『こちらの世界』の人で貴女がたの世界を知っている人はごく少数だという事です。こちらにある過去の書物によるとかなり前の事ですがそちらの世界に行き来できる人が居たという記述がありますが今は失われつつある秘術によって可能になる事であり、私が偶然その秘術が記された記された古書を手にして不完全ながら、あの日実現できたのです。あの日とはジェシカ君に会った日の事です。私はそれが貴方の住んでいる所だと知っていたわけではありません。私の知っている秘術ではランダムに場所が選ばれるのです。つまり貴女のアパートの座標が偶然選ばれたという事であり、私がその後の貴方たちの事を知っているのはまた違う秘術による通信によってなのです。




その後も文章は続いているが、これは明らかに短時間で書いたものではなく考えられたものであるという事が分った。つまり「おじさま」はリリアンにどう説明するか予め考えていたらしいのである。ここまで読んでみて、リリアンとしては安心したのが本音である。相手は少なくとも言葉が通じるし、リリアンにきちんと説明する気もあると見える。ただ、この場で全てを理解するのも難しそうなので、とりあえず望には礼を伝え、仕事が終わってからじっくり読んでみる事にした。


その日の仕事はほとんどデスクワークと資料の整理だったがリリアンは仕事をこなしつつもやや複雑な気分だった。自分がとんでもない世界の事に関わっている真っ最中なのに普通に仕事は続いていて、誰もかれもそういう事を知る由もない生活を送っている。もしこの場でリリアンが『異世界』の事を口にしたら「現実逃避しないでちゃんとしろ」と言われるだろう。だが、異世界が現実の事として存在するならば、現実逃避ではなくある意味現実直視なのである。もっとも、「当面すべき事」に集中すべきだというのならば、やはりある種の逃避行為なのかも知れない。


年明け早々でちょっとしたトラブルもあったが速やかに片付け、定刻通りの帰宅。帰りの電車でメールの続きを読むリリアン。




私の知っている別の秘術ではジェシカ君を人間の姿にしたり、逆に望さんを猫にする事は造作もない事で『こちらの世界』の人も貴女がたも驚かれるかも知れませんが、その秘術をカタチにしたものならば世界を越えても使用できるという事も判明しています。いわば違う種類の秘術の応用が私が為した事なのです。私が確認したところそちらの世界にも秘術をカタチにしたようなものが少しばかりあるようで、それが『こちらの世界』から伝わったものなのか、それともそちらの世界に元々あったものなのかは今の処謎です。


さて『こちらの世界』とそちらの世界で大きく違うところは、最近の事ですと『怪獣』が普通に存在するという事でしょうか。そちらの世界では創作の世界の出来事かも知れませんが、こちらの世界では特殊なエネルギーによって突如として出現する巨大な生物で、それが数十年前という比較的新しい出来事なので現在もその問題については世界の人が頭を悩ましているところでもあります。望さんにその話をした時にそちらの世界の創作で『ウルトラマン』という作品があるそうですが、それを教えてもらいこちらではそういう人間離れした超人的な存在を一般的に『超人的ヒーロー』と呼ぶようですが、そういう存在も既に一般的になっている世界です。





その辺りまで読んで一瞬「これは創作なのではないのか?」という気持ちや、もしかすると大宮望がこれを書いて望にからかわれているのかもという疑惑が頭を過ったりしたが、リリアンとしては信じたい気持ちだった。異世界の事だからなのかリリアンとしては「夢がある世界だな」と思ったりしたし、こういう話を聞いて出来るものなら行ってみたいと思ってしまう。文はもう少し続いていた。



さて、私はそんな世界で貴女の世界における日本と同じ名前の「日本」という国のF県のN市という処にに住んでいます。ある方法で知りましたが貴方が以前ジェシカ君と旅行に行ったところもそういう名前だそうですね。とても凄い偶然ですが、ある意味では必然なのではないかと思っています。


というのも、二つの世界は我々が感じる事の出来ない次元で繋がっているような気がするからです。『シンクロニシティー』のように二つの世界はそこに暮らしている者がまるで違うのに何処かでは似ていたり同じだったりこうして言葉も同じです。我々ですらも与り知らない何らかの必然性があるとしか思えないのです。

そういう事を確かめてみたくなったのが私の行動のきっかけだったかも知れません。つまり私が希望しているのは貴女がたの力を借りてこの世界の事を貴女がたの世界に知らせてほしい。もしその影響が大きくなった場合、二つの世界の関係は、類似性はどうなるのだろうか。そういう事を調べていけば、もしかしたら何か隠された秘密が分るかも知れない…と。



これは私の願望だし欲望かも知れません。無理にとは言いません。けれど私が為した事と貴女が普通にしている事だけでも少しづつ何か微妙な変化が起こりつつあるような、そんな気が私にはするのです。長々と語ってしまいました。これからも出来る限りの事はしたいと思っていますし、説明したいと思っています。どうぞ気が向いた時は望さんを介してと言うかたちですが、よろしくお願いします。




「おじさま」ことM・Aより





「あれ?『M・A』ってイニシャルかな?」


リリアンは最後に書かれた二文字がかなり気になった。確かにこの文全体で述べたい事も凄いのだがイニシャルを名乗ったのがこれで初めてだとすると「おじさま」こと「M・A」さんは大分情報を出したように思えるのである。それはキラキラネームで苦しんだリリアンだからこそそう思うのかも知れない。丁度電車を降りたところで念のため望に確認してみる。今度は普通に電話してみる。


『あ、もしもし今大丈夫だった?』


『はい。大丈夫ですよ』


『メールじっくり読んでみたよ。なんか最後の文でイニシャルらしき文字があったけど』

『はい、私も初めて「おじさま」のイニシャルを知りました。これだと普通ですよね。でもこれだと「おじさま」って呼ぶしかないかも。あ、そういえば気になってたんですけどリリアンさんの苗字って何て言うんですか?』


どうやら望も初めて知ったらしい。リリアンは後半の質問に答えた。


『安斎よ』


『安斎リリアンさん、ですか』


『お願いだから、続けて言わないで!!苗字めっちゃ和名だから変な響きになるのよ!!』


『あの、安斎さんって呼んだ方が良いですか?それともリリアンさん?』


『まあ、貴女だから名前の方でいいわよ』


『分りました。そういえばちょっと前から考えてたんですけどもう一度何処かで会えたりしませんか?今日のメールを見ていて少し話し合いたいなと思いまして』


『あ、それなら』


とリリアンはある事を思い出した。


『丁度一週間後なんだけどジェシカの事を知っている友人がね、こっちに来てくれるそうなの。紹介も兼ねてもしそちらがよければその日に会う事にすれば凄く都合がいいかも』


『一週間後だと日曜日が空いてますね。大丈夫だと思います』


『それなら良かった。丁度日曜日に来る予定みたいだから。さっきのメールも転送してその人に伝えておくから』


『はい。では』


『じゃあ』


色々と上手く都合がついたようである。歩きながらシェリーにメールを転送する。彼女もしっかり読んだらしくアパートに着いた頃に返事が来て、


『色々興味深いわね。上手く考えがまとまらないのだけれど、「M・A」さんはどこまで知ってるのかしらね?』


と書いてあった。シェリーらしい鋭い視点だった。こういう事も含めて再びの望と会った時までに考えをまとめる必要があるなとリリアンは思った。

進展

正月明けて数日過ぎた頃に挨拶も兼ねて「店」を訪れる。前年の十二月は仕事などでいろいろバタバタしたため行けてなかったので久々と言えば久々の入店。「店」ではいつも通り立華さんが歓迎してくれた。

「こんにちは、来てくれてありがとう。店ではちょっと久しぶりね」


「ええ、先月は休暇があまり取れなくて」


「まあ私も年末の方は大分忙しかったわ」


私は入ってすぐ少し店内を見回してみた時に微妙に物の配置などが変わっている事に気付いた。


「配置替えとかしたみたいですね。あと絵が増えたような…」


「よく分かったわね。絵はインテリアで時々買ってゆく人がいるのと、地元の絵描きさんに「少し店に置いて欲しい」と頼まれたのもあってちょっとスペースを増やしたの」


「そうだったんですね。納得しました」


絵はそれほど詳しいわけではないが、以前からこの「店」に飾ってあった絵はちょっと気になっていたしどこか幻想的で牧歌的でもある画風の作品はこの「店」の雰囲気にあっているような気がしていた。ところで新しく入ったと思われる絵の中には猫が描かれているものもあった。白と黒の猫が一匹づつ中心で線対称になって描かれていてデザインとしても優れているし、何より「白」と「黒」の猫というのが興味をそそられるポイントだった。それを指さして「あれは?」と訊くと、


「ああ、やっぱり気付いた?実はその絵描きさんに頼んで一つ描いて貰ったのがそれなの。本当はキジトラでも良かったんだけど、モデルが見つからなかったとかでそのデザインになったわ」


「へぇ~!凄いですね。うわー、めっちゃ欲しいな」


「その絵描きさん少し変わってる人なんだけど結構リクエストに応えてくれて、もしかしたら描いてくれるかもよ」


「え、それはいいな。うちの猫描いて貰えないかな…」


「今度会ったときちょっと話してみても良いけど?」


「うわー、お願いできるなら是非!!」


「オーケ。ところで話は変わるけど、神社でも言ったけどこちらも少し相談に乗ってもらいたい事があって」


「ええ、そのつもりできました」


「話が早くて助かるわ。じゃあ、こちらへどうぞ」


そう言って奥の倉庫兼事務所のようなところに案内される。こちらも少し整理されたようで以前よりもしっかりした抽斗のあるデスクなどが置かれている。この前のようにコーヒーをご馳走になりながら話を聞いた。


「例の話なんだけど、何処から説明したものか」


立華さんが説明し難そうにしていたのでこちらから知っている事を述べる。


「親友とその飼い猫の…というかその少年に何かあったという事でいいのでしょうか?」


「まさにそうなの。あの言っても信じてもらえるか分らないし私も実際確かめたわけではないんだけど、歌手で「大宮望」ってご存じ?」


それは最近有名になり始めている一人の女性歌手だった。ルックスなどを見ればアイドルと言ってもいいのかも知れないが、若いながらも歌い手としての実力は確かでテレビの歌番組に何度か出演している。私もこの頃は音楽に疎くはなってきているけれど知らないわけではなく、オリコンなどのランキングなどをチェックしたりするくらいの事はしている。もっとも、オリコンだけでは追えなくなってきたので知らないアーティストは全然知らなかったりである。そんな私でも知っているくらいだから「大宮望」という人は結構知名度はあるような気がする。だがその人がどうしたというのだろう?


「親友が会ったそうよ」


「へぇ~それは凄いですね。やっぱり都会にいるとそういう事もあるんですかね?」


「というか、あっちからアプローチされたそうよ」


「はい?」


一瞬立華さんの言った事の意味が解からなくなって変な声が出てしまった。アプローチとは普通の意味のアプローチだろうか?


「やっぱり普通はこれじゃ伝わらないわよね…」


立華さんも自分で言ってて困り顔だったが、気を取り直して云う。


「もっと凄かったのは彼女が猫に変身できたことよ」


「…?」


最早意味不明だった。それは聞いた限りだと作り話として言っているとしか思われないのだが、例によって立華さんは嘘を言っている感じはない。


「あー、これじゃやっぱり私が変な人みたいじゃない!」


私の様子を見て少し憤ってしまったよう。何となくフォローしなければならないような感じだったので、


「それは、本当の話ですか?」


と一応訊いてみる。すると更に困り顔でちょっと泣きたそうにも響く声で、


「そうなのよ!真面目に話してるのよ、多分本当なのよ!」


まるで私に訴えるようにして話す。大分疑わしいけれど、立華さんの事は疑えなかった。


「なるほど。とにかく、それが本当だという前提で話してみてください」


「分ったわ。その「大宮望」の事を説明するには親友とジェシカの事も話さないといけないの」


「それはどういう?」


「つまり、繋がっている事なの。ある人物によってね」


まるで推理小説かミステリーみたいな話である。頭をフル回転させて話を追ってゆく。立華さんも真剣である。


「そもそもジェシカが人間に変身できるようになったのはジェシカの前に突然現れたある男性のお陰なの」


「はい」


「その人がね、どうやら「大宮望」とやり取りできるらしいのだけれど、『異世界の人』らしいの」


「異世界…?」


その単語を聞いてファンタジーのようだとも思えてしまった。最近巷ではブームらしいけれど、現実の話として異世界という言葉が出て来るとは思ってなかった。


「つまり話をまとめるとこうなるわ。異世界の住人である男性が、ある日ジェシカの前に現れて変身させる道具を置いていった。その人物は同じく異世界から「大宮望」に手紙を送って彼女が変身できる道具を渡した。そして…」


「有名人である「大宮望」が立華さんの親友とそのジェシカ君と接触した…という事ですか?」


私が理解した事を確認して立華さんの目は明らかに輝き始めた。


「そうなの!!まさにそういう経緯で、親友の女の子が先月の末に私に連絡してくれたの」


「異世界…謎の男、猫に変身できる…」


思わずキーワードを口で言って確かめる私。言っていて私は正直なところ少し戸惑っていた。話としては分かるのだが、現実の事として理解しようとすると話に聞いただけなのでどうしても信じられない。でもそういう事なら筋は通るし、猫のジェシカ君が人間に変身できるという事も不可能ではないと論理的に説明できる。だがキーワードのような『仮定』が多過ぎて、更には『異世界がある』という大前提を認めることがそもそも大変であった。こういう時はミステリーよろしく『証拠』なのだが、それが無いとなると実際に会ってみるしかない。私は今考えたような事をそのまま立華さんに伝えた。


彼女はじっくりと頷いて、


「そうね。常識的にも理性的にもそう判断するのが当然。実のところ私も『異世界』については半信半疑よ」


それを聞いてある意味で私は安心した。立華さんが決しておかしいというわけではなく、あくまで話が全て真実だとした場合にどうするかということで私たちは話し合っているのである。


「ただね」


と立華さんはその後自分の推論を述べた。


「もし異世界があってその人物が居たとしたら、その人物がどうしようかという事を考えると結構すんなり理解できるところがあるの。そもそも異世界があったとしても接触できるとは限らない。仮にその人物のように異世界を渡る力があるのならば猫を人間にする事くらい容易いとも思えるし、「大宮望」の話だとその人物は私達普通の人にも「異世界」があるということを伝えたいらしいのだけれど、それならば今までの事は一つの線で繋がるような気もするの」


そう説明されると確かに無理なところが無いようにも思われてくる。もし自分が異世界に行けたら、自分の世界の事を知ってもらいたいと思うのは自然ではないだろうか?そして、この世界で出来ない事も異世界の技術ならば…



そこまで考えて私は自分の想像が無限に広がって収集がつかなくなりそうな事に気付いた。確かにこういう事をずっと考えてゆく事も出来る。でも、私が確実に知っていて自信があるところに立脚しなければそれは夢や妄想とあまり変わらない、そんな気がする。それも参考になるかどうかは分からないが、伝えてみる。再び立華さんは頷いて、


「うん。確かにそうね。私も自分が確かめたところを出発点にした方が良い」


「すると、立華さんはジェシカ君が猫になれるという事までは…」


「そうね。そこから先は後は自分で確かめてみるしかないと思ったわ」


私の相談に乗れるのはある意味でここまでかも知れない。ただ私は一つだけ保証したくなった。


「大丈夫だと思います。私も立華さんと同じことを知っていたら同じように考えると思います」


そう言うと立華さんは嬉しそうに笑った。その笑顔があんまりにも眩しかったので照れ隠しで、


「でも、私が当てになるとは限りません」


とニヤニヤしながら言った。立華さんは、


「あら、意地悪しなくっても良いのに」


と言い「ふふふ」と笑った。後日立華さんは親友の所に出向いたそうである。

成長

季節は移り、県内で初冠雪が記録されたというニュースを聞いた頃になると「そら」は前よりももっと大きく、白く、より猫らしくなっていた。雌猫だったのであまり大きくならないと云うけれど、結構やんちゃですばしっこいところがあるので家の中を駆け回ったりして遊んでいるところをよく見る。何にでも興味を示す時期なのかこの頃は家の中を冒険しているようにも見える。狭い隙間を見つけて入り込んだり、押入れを開けた時にその中に隠れたり、トイレの中に侵入したり飼主としては少し気を付けなければいけないようである。



こちらが呼ぶと鳴いて返事をしてくれたり、私の元にやって来てくれるようになった。その辺りから鳴き声の使い分けで「遊んで」と要求してくるようになったり、ご飯をねだったりし始めた。大きくなって知恵がついて来た事を実感する。そして「そら」に向かって自然と話しかけている自分がいる。反応してくれるとどうにかすれば意思疎通も可能なのではないかとさえ思われてくる。最近猫語の研究があるとか、いつかは猫と会話できるようになるとか何かの記事で読んだが、長く一緒に居る飼主とだから分かり合えるという事もあるのではないだろうか。



「そら」が今どうしたいのか何となく分るというのも不思議と言えば不思議である。



もっとも「店」の主である立華さんの話は本当の意味で不思議である。というか、彼女自身どこまで本当の事を言っているのか本気なのか、時々判断出来なくなるような時もある。けれど少し変わっている部分はあるものの彼女は非常に常識人で、むしろ性格的にしっかり考えるタイプの人だと思うので何か特別な事があるのかも知れないと間接的な理由で思えたりする。


その立華さんには「店」以外でも一度だけ偶然に出会った。それは年が変わって元旦の朝である。年末に地元の友人と少し飲んだ時に「年齢的にキリが良いから久々に新年に神社で初詣でもしてみようか」という流れになって折角だからというので元旦から初日の出が見れそうな場所と時間に集合して、そのまま地元では結構有名な神社に移動した。神社は既に参拝客が沢山いて、階段の下のちょっとした屋台のようなものも昔のままで何となく安心した。数人で少し急な階段を登って行った時に、上の方から若い女性と少し年を召した女性が並んでゆっくり降りて来たのとすれ違った。若い女性の方をよく見るとまさに「店」の店主で、思わず私は名を呼んで声を掛けた。声を掛けられた立華さんは一瞬戸惑ったのだが私の方を向いて顔を見た時に誰だかが分ったようである。


「あら、奇遇ね!明けましておめでとうございます」


「明けましておめでとうございます。早いですね!」


「そちらの方々は?お友達かしら?」


「ええ、みんな地元ですよ」


二人で話し始めると友人達もこの背が高い黒髪の女性に興味を抱いたのか「誰?」と訊いてくる。私は「店」の事とその店主である事を手短に説明した。地元にできた新しい「店」の事は結構みな知っていたのか、口々に「ああ、あの店か」と言って納得していたようだった。立華さんは軽く自己紹介をしたが、その時隣にいた女性が彼女の祖母であるという事が分った。


「最近はどんな感じですか?」


この頃店を訪れる度、立華さんにこのように訊くのが恒例になっている。この質問は「店」の事もあるけれど主にこれまで二人で話していた事の進展があるのかどうかというニュアンスで訊いている。立華さんは、


「それがね、なんか凄いことに…ってここだと話せないかも。今度店に来たときに話すわ」


と何か色々話したそうにしていた。


「分りました」


私も了承して、新年の「店」の予定について訊ねる。


「もう4日からは通常営業よ。ただし」


「ただし?」


「2週間後くらいに用事があって店を休みにするつもり」


「あ、そうなんですか。じゃあ、その前に一度」


「ええ、出来ればそうしてもらえるとありがたいわ」


そこで立華さんとは別れた。別れ際、立華さんの祖母はにっこりとほほ笑んで上品にお辞儀をしてくれた。こちらもそれに倣う。その後の初詣自体は新鮮な気持ちになれてよかったけれど、友人達から立華さんの事で少し詮索されたので微妙な気分になった。異性との付き合いのあまりない私の事なので珍しがったという事もあるかも知れない。


「気になる事は気になるけど…」


家に戻ってそう呟きながら玄関の扉を開けると、そこにはある意味ではもっと気になる存在がそこでちょこっと座って私をお迎えしてくれていた。


「そら、ただいま」


「にゃ~ん」


この頃はこうして迎えてくれるようになったけれど、それがまた愛おしい。『猫の置物』の効果なのかどうかは分からないけれど、すっかり猫の魅力に憑りつかれている一人の男がここに居る。

徒然ファンタジー45

正月も終わりになろうという日、リリアンとジェシカは満を持して近くの神社に向かっていた。そもそもリリアンが会社の友人の勧めでほんの気紛れで始めたパワースポット巡りはジェシカを連れ出す良いきっかけになっていて、ジェシカも近場の神社についてはそこそこ廻ったのでおおよそ神社というものがどういう由来で建てられたのかという事も含めて理解し始めていた。そしてシェリーに言われて思い出した初詣に参ろうとしているところなのである。


近場なので完全に徒歩の移動で昨日うっすらと積もっていた雪も既に跡形もなくなっている。とはいえ午前中だと外はかなり寒いのでジェシカはリリアンにアドバイスを受け、紺のコートを羽織っている姿である。デザイン的にまさに高校生くらいの子が着そうな物だがその姿で歩いていると何となく大人びても見える。実際、ジェシカは様々な事を経験してちょっとの事では動じなくなったし、もう一つの理由としては猫は成長が早いという事もある。ジェシカは夏仔なのでこの冬には2才半ほどになっていて、人間で言えば十分大人とも言える。人間に変身した姿も若干変化があるようで、身長が少し伸びて表情も幼さは残るけれど大人にも見受けられるようになっている。一緒に暮らしているリリアンはあまり意識していないものの、ジェシカが頼もしく感じられてきたというのは間違いない。



神社に行くルートはジェシカもすっかり覚えていた。というのもいつもの公園を通って、その道を真っ直ぐ行った突き当りの小高い場所に神社が建っているからである。11月にリリアンに初めてその神社に連れられて行った時以来、比較的ありふれている造りの神社が他の場所とは違っているせいか妙に気に入ったジェシカ。今では散歩コースがその神社が見える辺りまで延長されている。


「初詣って何をするの?」


神社が見えてきたところでジェシカが訊ねる。基本的な質問であるが、言われてみればリリアンもよく分かってない部分がある。


「う~ん、『新しい年になりましたよー』って神さまの所に行って、一年無事でいられますようにとか願掛けするとか…なのかな?」


パワースポット巡りをしているわりには実はあまり調べてないリリアン。だがジェシカはその説明の中で気になる事があったようである。


「神社って『神さま』が居るところなんだよね」


「そうね。祀られてるっていえばいいのかな」


その辺りはリリアンに教わっているので大丈夫なのだが、


「『神さま』って本当に居るのかな?」


とやはりジェシカも根本的なところが気になったらしい。


「私も分んないけど…」


リリアンも迷いつつ言葉を選びながら答える。


「他の世界も多分あるんだから、別に居たってそんなに驚かないかな、今は」


直接的な答えにはなっていないがそう言われてみるとジェシカも同じ気持ちだった。うんうん頷いているジェシカ。実のところリリアンが友人からパワースポット巡りの事を聞いた時もジェシカの事があってあまり抵抗がなかったのである。とはいえ同じ性質の話ではないという意識はちゃんとある。むしろ知るにつれて、神社というのはこの国の歴史とか文化のようなものだとも思えてくる。ジェシカも文化的なものだからこそ気になるのではないだろうかとリリアンは思った。


「さあ、あとはこの階段を登るだけね」


「うん」


階段を登っていると途中に何人かとすれ違う。既に参拝を終って降りてくる人達である。リリアンは<やっぱり来てるんだな>としみじみ思う。彼女がこういう場所に興味を持ち始めたのは最近だが、初詣については何となく年を越したという気分を味わいたいという理由で新年思い立った場合は来ることが結構あった。この頃はここに来ている人を見ると何だか温かい気持ちになれるのだ。


階段の途中にある鳥居をくぐり少しして登り終えると両者とも「ふぅ」と息をついた。そこで顔を見合わせるとお互いに頬に赤みが差している事に気付く。再び正面を向くとなかなか立派な拝殿が彼等を迎える。少数だが白と赤の巫女さんが待機して破魔矢などを売っている。


「あの人達って何してるの?」


普段は人を見かけない場所で特別な格好をしている女の人を見ればジェシカでなくとも初めてなら気になってしまうだろう。


「よく覚えておきなさい、あれは『巫女さん』よ。ああいう格好をして神さまに遣えているの」


「へぇ~凄いんだ」


「あの格好してたら凄いわよね。まあ最近は神社じゃなくてもああいう格好する人いるみたいだけど…」


リリアンは言葉を濁した。ちょっとだけコスプレが好きなのでその手のSNSを見ていて『巫女さん』のコスチュームは意外と人気だという事を知っていたのである。


「まあとにかくそういうのは後よ」


リリアンは足早に拝殿へ向かった。目の前で賽銭箱の前で手を打ちあわせている男女がいたがジェシカは既に拝礼については手ほどきを受けていたし、他の神社に行ったときにも同じ事をやっているので慣れたもので彼等が引いた後、リリアンと供に『二拝二拍手…』と続けていきお賽銭を投げる。これほど淀みない動作をされれば誰もジェシカが猫だと気付かないだろう。そして手を合わせて静かに祈る。


「よし」


最後に一拝をして拝礼は終わった。勿論お約束で、


「ジェシカは何をお願いしたの?」

と訊くことも忘れない。


「『みんな仲良く暮らせますように』って」


リリアンは思わず微笑んだ。ある意味それ以上の願いはないような気がする。彼女は少し違う事を願っていた。


「ご主人さまは?」


ジェシカに問われてリリアンはこう答えた。


「私はね、シークレット!」


「?」


きょとんとするジェシカ。


「秘密って事よ」


そう言って悪戯をしたような目をするリリアン。少し年下の少女の可愛らしさを見倣ったというのが正直なところである。


「え、ズルい!」


勿論ジェシカはちょっと憤慨する。リリアンは


「女の人は誰しも秘密を持つものなのよ」


とその場では説得したが、彼女が願ったのは「もうちょっと可愛くなれますように」と「みんな幸せになれますように」であった。実のところ一つ目の願いごとを言うのがちょっと恥ずかしかったのである。

徒然ファンタジー44

年が明けて正月になるとその辺りでは珍しく雪が降った。ジェシカも一度アパートの窓から見た事があるくらいだったのでリリアンに外に出ていいかを伺う。

「雪ね。いいわよ」


ついでなのでリリアンも一緒に外に出た。道路にはうっすらと積もっているくらいだけれど、それでも景色は一変して見慣れている場所でもなんだかいつもとは違うように見えた。


「これが雪なのか!白い!!」


「クリスマスとかに降ってくれると雰囲気が出るけど、これはこれで良し」


雪の感触や温度を確かめているうちに段々寒くなってきたため部屋に退避して、すっかり馴染んでしまったコタツで暖を取る。正月の間は少ないお昼時のニュースで一部地域で雪の為に交通などに影響が出ていると伝えられた。何となくここよりも北の立華京子の住んでいる所が気になって電話してみる。

『あ、京子?明けましておめでとう』


『明けましておめでとうございます』


『なんかこっち雪降ったんだけど、そっちはどうなの?』


『雪は時々積もるわよ。一応雪国だからね』


『大丈夫なの?』


『雪国なんだけど、そんなに雪国でもないのよ、これが』


『は?』


『まあちょっと仕事の関係で北の方に移動する事もあるんだけど、そっちは半端じゃないから。それと比べたらかわいいものよ』


『ふ~ん。何となく分った』


『で?他になんかあるの?』


『いや、別に…っていうのも変なんだけど』


『そうよね、何だったらジェシカに代わるわよ?』


『頼みます!!!』


提案すると瞬時に返されたのでちょっと焦ってしまったリリアン。スマホをジェシカに渡す。使い方は教えてあるので多少ぎこちないながらも耳に当てて喋りはじめる。


『もしもし…でいいんだっけ?』


『ジェシカ?そうよ。こんにちは、シェリーよ』


『あ、シェリーの声だ。もしもし、俺です』


『ふふふ、何かジェシカと電話で話すのは変な感じね』


『シェリーは今何してるの?』


『今、テレビ見てるよ。おばあちゃんの家でね』


『あ、おばあちゃん居るの?』


『居るわよ。正月は地元の神社で初詣をして、って初詣は知ってる?』


『「はつもうで」?神社はご主人さまに時々連れてってくれるけど』


『それはうっかりね。リリアンと行って来ると良いわよ。で、初詣をしておばあちゃんの家で過ごすのが私の定番なのよ』


『へぇ~そうなんだ』


『そういえば「大宮望」さんの事聞いたわよ。可愛がってもらったそうね』


『うん。望は凄かった。変身できるし』


『色んな意味でなんとも羨ましい話なんだけど、どちらかというと私もジェシカに会いたいわ』


『俺もシェリーに会いたい』


ジェシカがその言葉を伝えた後、しばらく沈黙があった。随分長い間だったので、


『あれ、どうしたのシェリー?』


と心配になって訊いてみると


『あ、今ちょっと…そのボーっとしちゃった。ごめんなさい』


という返事があった。シェリーは気を取り直したのか続けて言う。


『あのね、リリアンに聞いてるかも知れないけど多分2週間後くらいにそっちに行く予定だから』


『うん。楽しみ』


『嬉しいわ。じゃあリリアンに代わってもらえる?』


『分った』


と言ってリリアンに渡す。


『うん。大体内容は想像出来たわ。そういえば初詣まだだった。神社にはよく行くんだけどね』


『今おばあちゃんの家でのんびりしてるところ。まあ明後日には店開けるんだけど』


『そうなんだ。じゃあ今度来たときに、色々と…』


『そうね、色々と。じゃあね』


『うん』


通話が終わってしばらくそのままニュースを見ていたのだが、全国の正月の催しなどが紹介され始めてジェシカは興味津々である。地域によっては独特の風習などがあるので物珍しさでついつい実際に見に行きたくなる。正月に食べるものも地域によって大分違うらしい。

<そういえば、京子の家に行ったとき、食べたあれなんだったっけ…郷土料理とか言ってたような…>


何となく思い出していたリリアンだが、シェリーの話だと正月などのめでたい時にもその『沢山具材が入っているお汁のようなもの』を食べる風習があるらしい。


「ざっくりした感じの何かだったような…」


曖昧な記憶だがまた電話で聞き直すのも面倒なのでネットで調べてみる事にする。ノートPCを起動して、検索窓に『〇〇市 郷土料理』と打ち込む。最近ニュースになっていたらしくすぐに検索結果の上位にざっくりしてそうなひらがなの料理名があった。


「ああ、やっぱり!!」


自分の記憶が正しかったことで安堵するリリアン。PCを起動したのでついでに「大宮望」と打って検索してみる。リリアンとしては大して意図があったわけではないが、テレビの出演予定やCDの情報などを一応調べようと思ったのである。オフィシャルサイトを覗くとかなりアーティストらしい凝った作りになっていて、出演情報を探すのに少し手間取ったりしたが、新年になっての活動はお正月以降はそれほど活発ではないようである。ただ一か月後にはタイトル未定の新曲が出るという事で、レコーディングなどは行われていそうである。それを示すように公式ブログは毎日ではないにせよ結構な頻度で更新がなされ、機材に囲まれた写真などがアップされていたりした。テレビに集中しているジェシカをちょっと呼んで、それを見せると


「あ、望だ!」


と喜んでいた。その後興が乗ったので少し詳しく調べようと思って色々検索結果を開いてみるリリアン。彼女も現代人なので有名人を検索すれば様々な検索結果が出てくると知ってはいたけれど、噂話も含めあんまりあてにならなそうな情報まで目に入ってしまうので何とも複雑な気持ちになった。もっとも大宮望については大方の意見が「売り出し方が微妙じゃないか?」というところに収束していて、その流れで「大宮望はアイドルなのか?」という事について議論されるのが恒例になっているようである。分るような気もするけれど、<もっと素直に見ればいいんじゃない?>ではないかとリリアンとしては思ってしまう。勿論、そう思うのは直接会っているからという理由も大きい。


念のため「大宮望 秘密」、「大宮望 猫 変身」という大分直球な絞込みをしてみるが、もちろん「おじさま」の事とかは出てくる筈もなく、リリアンはひそかに安心した。ただし『秘密』と打ち込むと「大宮望には彼氏がいる」という誰が言ったか分らないような情報まで出てきて流石に当惑した。


「あの娘の反応を見ると、居る方が不自然だと思うんだけどね…」


と言いつつやっぱり本人に訊いて確かめたくなるのは人間の性なのだろうか。軽い気持ちで望にメールで「彼氏とかって居るの?」と訊くとすぐに「シークレットです(^-^)」と返ってきて、その文面に思わずにっこりしてしまった。

そらまちたび ⑧

片山さんに案内された山の方の旅館。来る時には知らなかった温泉の名所であるという情報は現地に近付くと<なるほど確かだ>と思われるように旅館が沢山存在した。車の中にも硫黄、正確には硫化水素の匂いが漂ってきて、今すぐにでも温泉に入りたいという気持ちになってくる。

「たまたま学生時代の知り合いに関係者が居てね、『ライターなんだから宣伝してよ』って言われてるんだ」

と言って片山さんが旅館の内部事情を語ってくれる。勿論旅行者として行くのだからあまり事情を知り過ぎても気を遣ってしまうのだけれど、最近客足があまり良くないという話は色々考えさせられる問題だった。

「温泉は本当に良いし旅館自体も悪くないんだ。でもちょっと宣伝にあまり力を注いでないというのか注げないというのか。だからさっきも言ったように地酒も一緒にアピールすればいいのかなって」


「確かに、この国には色んな所に温泉有りますしね。最近では外国人なんかも温泉を好んだりという話もあるそうです」


「そこも是非取り入れたい層ではあるね。だから外国語で紹介文とかを書けばいいんだろうけどちょっと勉強中でさ」


「そういえばこの町には外国人とかいらっしゃるんですか?」


「ああ、そういえば数年前から奇特な方でラテン語の塾を開いている女性がいるよ。ちょっと前も何かに関わってたとか聞いたけど、なんだったかな…」


「ラテン語ですか…何人なんだろう」


「そこも謎らしいね」


という話をしているうちに目的地に到着。とても立派で大きな旅館で平日だが他にも車が何台が停まっていて、それなりに人が入っていそうな様子が窺われた。車を降りると山の上で広々とした土地だからか気持ちが開放的になる。


「はぁ~」


と背伸びをして息を吐くと片山さんもそれに倣って「はぁ~」と言った。その時この旅でこんなに気が合う人に出会えたのは幸運だなと思ったりした。彼に誘導されて入口の自動ドアをくぐると、女将さんらしき人が出迎えてくれた。


「どうも!お久しぶり」


「いらっしゃいませ!片山くん、今日はありがとう」


「どうも、今日は片山さんに案内してもらいました」


「遠いところ足をお運びいただきありがとうございます。ささ、上がってください」


「これはどうも」


玄関からスリッパに履き替えて、女将さんに部屋に案内される。途中で何となく気が付いたことだが片山さんのいう関係者というのはこの女将さんのようである。エレベータで3回まで上がって、出てすぐの部屋が今日泊まれるところらしい。ドアを開け、中に入って襖を開けると外の景色もしっかり見える良い感じの畳の部屋で、大分前からある建物らしいけれど部屋は美しく整えられていた。


「この部屋です」


「いいですねぇ。なんだか落ち着きます」


「それは良かった!じゃあ少しお茶でも飲んでから、早速温泉に行きましょう」


「え、随分気が早いですね」


「何種類か温泉があるんですよ、ここ。折角なので一通り入浴してもらいたくてね」


「なるほど」


「あとはね…」


片山さんはちょっと恥ずかしそうに言った。


「今日はどうせあと動かないから酒を思いっきり飲もうと思って」


「ふふふ、相変わらずお酒好きなのね」


女将さんにも笑われていた。


「ではごゆっくりどうぞ」


彼女は僕等が落ち着いたのを見届けて戻って行った。その後予定通りお茶を飲んでから浴衣に着替え、温泉まで移動する。まだ夕刻になったばかりなので温泉に向かう人は居ないようで、事実上の貸切状態らしい。先ずはオーソドックスな『源泉かけ流し』の湯船に浸かる。


「あぁ~活き返る…」


「あぁ…」


それぞれお年寄りのような声が出てしまって、見合って笑いあう。室内の広い湯船から立ち昇る湯煙や、充満する硫黄の匂い、比較的熱い方の湯で身体が早くも火照ってくる。昔はこういう裸の付き合い的な事が多かったようだけれど、自分の住んでいるところには銭湯も余りなく、多少恥ずかしい気はするけれどそれよりなにより満足感の方が大きい。この国の文化でこれほど平和なものは無いんじゃないかという気がしてくる。


「う~んそろそろこういうのが気持ちいい歳になって来たなぁ…」


この片山さんの呟きにはまだそこまで歳が行かない僕も同意しそうになる。
プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
普通のカウンター
投票
無料アクセス解析
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR