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一つの不能

全体性として不適なものは常にそれを続ける事が出来ません。基調とする事は出来ても全体性それ自体を危うくするような情報がある場合にはそれを無視してしか全体性を得る事が出来ないからです。
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待つ事によって

待つから出来る事もある。というか微妙なところも味わえるからなのか、もっと練り直したり
こだわりをもって取り組んでみたくなる。


カタチ、言葉にするとき、その微妙さが言葉で言い表されるなら確かに読み取り得るものに
なったという事だと思う。


微妙さに迫ってゆくなら当然ながら全体性を見失い易い。或いはリズムを見失う。だからこそ
微妙さに待っていられずに言葉にならないで通り過ぎてしまうというものだろう。



微妙さに迫りつつも、微妙さが全てではない。同じ基調の中で語られて位置づけられる微妙さ
。いや、どちらともつかない。『瞬間』が『全て』であることもある。


どちらとも決めないまま、素直に狂い、そして取り戻してみる。ただ、待つと決めている。

ステテコ・カウボーイ ③

どちらでもいいよと思う。結局どちらも同じ道に繋がっているなら。けれどやっぱり選んでしまう。何かの基準で、或いはただの気紛れという不確かな気分で。


あと少しで昼になるという時刻、何となく退屈そうにしていたら「ファミレスに連れて行ってあげる」と言われた。声の主は珍しくリビングで本を読んでいた早川さん。早川女史…?


「行きます行きます!」


思いのほか気持ちが高揚するのを感じた。基本的に昼は自炊していて、早川さんには作業に集中できるようにと決まって軽い食事を作って持ってゆくのだが、この生活が始まって以来外食らしい外食はしていないにも等しいので楽しみだったのである。


「君はまるで犬のようだね。しっぽを振っている幻視をしてしまったよ」


「犬ですか…?できれば猫の方が良いんですけど…」


犬も好きな方だけど、猫派を自負しているのでつい言ってしまった一言だがこの言葉に、


「いや、私は犬を飼っていた事があるから自然に犬のイメージだね」


と強調するような感じで返されて「へぇ~」と声が漏れた。何はともあれ外食、ただしファミレスに行く事になったのだから準備をしようと思って「よし!」と立ちあがったのだが、実質居候の身で持ち物など無く、ポケットに財布も入っていたので特に必要がないと気付いた。それを観察するように見ていた早川さんは、


「私も立ちあがった方が良いかな?」


と一言。なんとなく頷いた。




ファミレスは思ったより近所にあった。歩いている間に早川さんが「以前はこのファミレスをよく利用していた」という情報を得て納得する。『以前は』というところも気になったが、そういえば早川さんは外出をあまりしないタイプである。出不精気味のような気がする。


「最近の子はファミレスで季節を感じるんだろう?」


入店したとほぼ同時に言われて一瞬何の事だかわからなくて訊き返した。


「いや、この前テレビで若い子のインタビューかなにかで、ファミレスのメニューが変わると季節が変わったと実感するとかそういう情報を得たものだからね」


そこで自分は「若い子」なのか小一時間考えたい気分に囚われそうになったが、とりあえず「若い子」だという事は認めることにして、店員に案内されながら返事を考えてみた。


<季節感があるかどうかは別にしても、折角だから春らしい食べものが食べたいなぁ…>


内心で思いながらメニューに目を通してみる。ところがどうも春らしい食べものが見つからない。季節限定のメニューで苺を使ったものが何故かあったのだが、少し早いような気がする。


「少なくともこのメニューで春は感じませんね」


思ったままを言うと早川さんは「そうか」と頷いた。こういうのも作品に活かされるのだろうか?と、早川さんは早くも、


「決めた。今日は和風パスタだ」


と宣言。実は僕もそれが食べたいと思っていたとはなかなか言い出しづらい。仕方ないので「たらこパスタ」を選ぶ事にした。


「そしたらサラダを何か選ぶといい。何か好きなサラダはあるかい?」


ここで僕は正直言って相当悩んでしまった。野菜は好きな方だが基本的に拘りがない。なのにファミレスのサラダというのはドレッシングを何にするかとかまで選択しなければならないシステムの店も時々あって、ここもまさにそれだ。多分こういう時はこだわる必要はないのだろう。けれど、せっかくの外食だししっかり選んで決めた方が良いのかも知れないと考え出すと基準がなくて困り果ててしまう。メニューを見たまま「う~ん」と呻る僕を見て、


「どうしたんだい?もしかしてサラダは好きじゃないのかい?」


と少し心配そうな顔の早川さん。


「いえ、選ぶ基準がなくて困ってるんです。どれでもいいけど…」


「私もどれでもいいんだけどね。しいて言うならあっさり目のドレッシングが好きかな」


少し選択肢が絞れたが、そうすると青ジソドレッシングなどが良さそうである。ただ、海藻を初めとしてやけに種類の多いサラダの方に悩む。こういう時、人はどうやって選ぶのだろう?『気分』なのだろう。気分…色…緑…。


「じゃあこの緑が多めのサラダで」


「ああ、いいね。じゃあそれにしよう」


結局注文は決まり駆けつけてくれた店員に告げてゆく。ドリンクバーも勧められたが、早川さんは例によってコーヒーだけでいいというので僕もそれに倣った。運ばれてくるのを待つ間早川さんがこんな事を訊ねてくる。


「さっき緑が多めのって言ったけど、実は私も葉物の野菜が好きでサニーレタスは好物なんだ」


『じゃあそれを先に言ってくれよ』とは流石に言えなかったが何であれ良いものを選んだなと思った。


「そういえば早川さんは決めるの早いですね。最初から食べたいもの決まってたんですか?」


なんとなく訊くと、


「いや、気分だよ」


と言われた。気分でそんなに即決できるものなのだろうか?


「なんか羨ましいですね。僕は気分って言われるとちょっと分んないんですよ」


「うん。なんとなくそんな感じだね。っていうか君を拾ったのも気分に依るところが大きいかも…」


さり気なく爆弾発言をする早川さん。そうか…僕は気分次第では見放されていたのか…などと思っていたら、


「そんな捨てられた子犬のような顔をするのは辞めたまえ…。大丈夫だよ今は拾って良かったかもと思いはじめている」


「具体的にどんなところがですか?」


「そうだね…う~ん…」


そこで少し沈黙があったと思ったら、


「そういえばね、博くん(僕の名前)には言ってなかった事だけど私は君が来るまでは結構頻繁にここで食事を済ませていたのだよ。よくあるようにネタを考える様な事はしないけど、気分を変えたい時などはここで和風パスタをよく食べて実家での事を思い出していた」


と、またしても一つの発言に気になる事が複数出てきたのだがとりあえず、


「実家?」


というキーワードを確かめてみるとにした。


「うん。実家の母コダワリの和風パスタが私の好物でね、ここのパスタもそれに比べて悪くない」



「気分を変えたい時っていうのはどう言うことですか?もしかして今も?」



「まあ気分を変えたい気分の時とでも言えばいいのかね?ややこしいけど。ちなみに今は単純にメニューを見て久しぶりだったから食べる事にした」


「おお…」



何故か説明に納得していた。早川さんの好きなところだが、質問すれば必ず納得のゆく答えを返してくれる。そんな話を続けていると意外と早く食事が運ばれてきた。



「いただきます」「いただきます」



料理は美味だった。パスタの堅さも好みである。早川さんも満足そうに、


「うん、この味だ」


と言った。


「じゃあ、今度は僕が和風パスタ作ってみましょうかね?」


特に意識して言ったわけではないけれど、


「君のそういう素直なところは私の気に入るところだよ」


と彼女がほほ笑む。


「そういえばはぐらかされてたんですね…」


途中で話を変えられたという事をあまり意識しないまま早川さんの話を聞いていたところなどは本当に素直だなと実感したのだった。

掌のワインディングロード ⑮

有馬記念くらいは同世代のちょっと雑学が好きな子なら知っていると思う。『ウマジョ』という言葉も次第に広まりつつあるみたいで、今週仕事場でも一度「有馬記念が…」と誰かが言っていたのを聞いた。多分その次の日だったと思うけど、そのレースに出る馬の並びが書いてある『出走表』というものが発表された。しかも何気なくテレビを点けていたら、平日の昼間なのに順番を抽選で決める光景が放送されていたのである。その後ゆっくり起きてきたタラちゃんに訊ねてみたら、


「ああ、今年もなんですね。だんだん恒例になってきましたね」


と一言。もちろんそれだけでは何の事か分らないので詳しく説明してもらうと、


「確か去年とかその前位からだったと思いますけど、有馬記念を盛り上げる為に抽選の様子をテレビとかで放送するっていうイベントを行うようになったんです。もともと有馬記念って『ファン投票』で出走馬が決まるレースですからね」


説明の中に『ファン投票』なる言葉が入っていたけれどこれは一か月ほど前に説明してもらっていた。インターネットなどで一人10頭まで好きな馬を選んで、多い順から有馬記念に出走する資格を得るというシステムで、ずっと前から続いているらしい。私はまだ馬の名前もそんなに知らないので「ふ~ん」と頷いただけだったけれど、タラちゃんと勇次はしっかり投票していたらしい。投票すると抽選で何名かにプレゼントが当たるというので、今度はやってみたいなと思っている。



テレビに映し出されている会場には正装をした騎手や調教師などが参列し、少し緊張が漂っていた。タラちゃんの勧めでネットの公式ページに既に公表されている『出走登録』を確かめて参加者を確認してみると、この前の「ヨコスカパンドーラ」も登録されている事に気付いた。でも、不思議な事にテレビにはその関係者が映っていない。


「あ!回避だ!」


これはタラちゃんの声。その大きな声に自室で本を読んでいた勇次が何事かとリビングにやって来た。


「どうしたの?回避って聞こえたけど」


「今テレビで有馬記念の抽選をやってるんですけど、ここに予定していたヨコスカパンドーラの関係者の姿がないと思ってたら、今朝のニュースでヨコスカパンドーラの体調不良で有馬記念を回避するって発表されたみたいです」


「へぇ~、そういう事もあるのか…」


勇次は感心していたようだけど、私はそれを聞いて一気にがっかりしてしまった。というかさっきまでヨコスカパンドーラで『勝負』するつもりだったのだ。


「いやぁ…これは残念ですね。やっぱり有馬記念はドリームレースなので、強い馬は出てほしいんですよ。でも仕方がないです…」


タラちゃんも本当に残念そうだ。そんな中勇次は、


「お…アースサウンドはデルーカか!やっぱり日本語で喋ってるのが凄いな…」


若干マイペースのような。お気に入りがラウロ・デルーカらしいというのは何となく分かる。という事は勇次はこの馬を選ぶのだろうか?


「あ、ブロンドアクター!!そうか、ファン投票上位だったのか!」


と思っていたら、タラちゃんも急激にテンションが上がっていた。こちらの驚いた視線に気付いたのか少し照れながら、


「いやぁ、実はファン投票で上位に来ないと出走できないかもって囁かれてたので僕もこの馬に投票したんです。アルゼンチン共和国杯っていうGⅡで強い勝ち方をしていて、連勝中で、しかも父がスクリーンボーイという馬で、この前マイルCSを勝ったクライヴも…〇※×▼」


とだんだん饒舌になっていって、最後の方の説明はちょっとついて行けなかった。とにかくタラちゃんが注目しているのはこの馬らしい。テレビが順調に進み全頭抽選が決まったけれど、私はどうもどの馬も勝ちそうに思えて決められない。そんな中タラちゃんが、


「今週は忙しくって競馬の予想もあんまりできてないなぁ…毎日ニュースは見ようと思ってるんだけど…」


と小さく言った。確かに最近は毎日バイトに行って朝早く帰ってきているようで、起きてくるのが遅かったのも仕方ないと思う。私の方は意外ともう休みを取っているような人もいたりで変則的になっているけれど、今日は休みを貰っていた。


「あ、今日クリスマスイブか…」


タラちゃんが確認したように、今日はクリスマスイブだった。一応今日はこれから出掛ける予定。勇次が気合を入れてホテルの予約をしてくれたらしい。何となくドキドキしてくる。


「タラちゃんも大変だなぁ…こういう日にいつもと変わらない仕事って微妙にダメージあるよな…」


勇次は憐みではないけれど、かなり強い同情の眼差しをタラちゃんに送った。私も数年前まではそんな感じだったのでよく分かる。恋愛なんてどうでも良かった頃の私でさえ夜一人で静かに本を読んでいて、


<これでいいのか?>


と疑問に感じてしまうくらい、殆どの人がどこか浮足立っていて浮かれている。というか、私がそうなのだ。


「タラちゃんは、誰か一緒に過ごせる人って見つからないの?」


ちょっとデリカシーがないかもと思ったけれど、本心からタラちゃんを思いやっての言葉だった。タラちゃんだって幼い顔立ちだけれど結構整っていて、優しい人が好きな娘なら好きになるという事があると思うのだ。けれどタラちゃんはやはり照れくさそうに、


「まあ、俺みたいな状態の男だったら情けないって思うのが先なんじゃないでしょうか。趣味もちょっと受け付けないかも知れないし…」


と自分を卑下する。私は常識の部分ではそういう風に見られるという事が分っていたけれど、タラちゃんは何かが分っていないように感じた。


「情けないって事はないと思うよ。趣味だって、理解してくれる人はいるよ。それにタラちゃんは一杯いいところがある!」


気付けば少し大きめの声で断言していた私。自分でもここまで熱くなるとは思わなかった。最早タラちゃんは他人ではなくて『大切な弟』と同じようなものだった。普段の生活でも色々手伝ってくれることが多いし、何よりも私と勇次を理解しようとしてくれる。それは誰にでも出来る事ではないと思うのだ。


やや面喰っていたタラちゃんは「え…っと…」と言っていたけれどここで勇次が、


「タラちゃん。聡子が言うんだから自信持って良いと思うぞ。それに、好きになったらそんな事考えている暇なんてないぞ」


と加勢してくれた。勇次も多分私と同じことを考えてくれていると思う。


「誰を好きになる…」


何かを了解したように勇次に言われた言葉を口ずさんでいるタラちゃんが印象的だった。



夕方近くになって、私は勇次と出掛ける準備をしていた。派手になり過ぎないように、それでも出来るだけオシャレにそして、『可愛らしく』を意識して服を選んだら勇次が「かわいいね」と言ってくれた。そんな勇次もいつもよりも決まっていて、何もかも委ねてもいいというような雰囲気だ。もっとも、全部委ねるわけではないけれど。


「いってらっしゃい」


タラちゃんはどこかすっきりした顔で玄関で見送ってくれた。


「「いってきます」」


「あの…俺、ちょっと頑張ってみます!自分の出来る範囲で二人みたいな関係になれる人を探してみようかなって思います」



私はその言葉を聞いてちょっとだけ笑ってしまった。照れくさかったのかも知れない。



「きっと良い出会いがあるよ!」



そんな言葉を送りながら、玄関のドアを開けた。

待つこと

必然と言えるのだろうか。ただの気紛れだろうか。あると思えたものが、また、あると思えている。
ごく個人的な事。言う必要のない事を言うくらい、柔らかくある。


飾り立てた言葉は不要だけれど、出来るだけ言葉を待つように。


待つ事が出来るというのは、きっと何かなのだろう。

ただ柔らかく

余計なものと言えばそれまでだけれど、僅かな躊躇いとともに要るかも知れない
一言を付け加える。


変わらぬ言葉と自らで確かめるなら、眩暈さえもその証と。


けれどそこから、そこから。



ささやかに今の証を。馴染みのないその柔らかさを。

時の厚み

日々は時の厚みの上に続いている。記憶なのか歴史なのか、判らなくなるほどに今を今
たらしめている。愛おしく思うほどに、離れがたく、けれど同じくらい今日を生きなけ
ればと思わせる。


いつからか衒いではなくなった。それほどの時が経ったのだと、気付く今も。

宵の酔い

酔いに似た何か。導かれて紡ぎ出す言葉に春が匂う。常世からの訪れのようにみてよいものか。
去らぬものが何処(いずこ)にあるというのか。酔いの醒めと供に連れ去ってしまうのだらう。


留まると云っても、永久にではない。此処にあるうちは出会いと別れを繰り返そう。


宵の花がまた匂う。

重なる

重なる想いは何でしょう。重ねる心はどうでしょう。気のせいというばかりではない
重なりに、膨らむように感じたのは。


どの道も同じように何かがあって単調ではないのなら、時に夢をみることもあるでしょう。
過ぎゆく季節に、またいつかと重なる想い。


こうしてまた年を取るのですね。

どこかにあるような

醸し出す雰囲気が何かへの入口なら、ひたむきにそれを追い求めるのも悪くない。

日々の中に探し当てるいつか求めていた瞬間。


世界が廻り続けるならいつかあるだろうと、予感していたっていいじゃないかと
思える日に、待ちくたびれてもそれは素敵だろう。


僕等が知りたいのは、なんでもなくただ知らないこと。どこかにあるような気がしたもの。
プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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