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徒然ファンタジー14

「ここはどこ?」


ジェシカが立っているのは勿論いままで来たことのない裏路地だった。一般的な道の作りに慣れていればたとえ迷ったとしても大通りに出るように歩いて行けば大抵の場合はなんとかなるし、現代の武器ともいえる地図アプリを使えばそもそも迷うという事がないのだが、そこはジェシカ特有の困難があった。そして、この姿のジェシカだからこそ感覚が人間と同じになってしまっていて、動物的な勘も鈍る。


先ほどの喧騒とは対照的に路地は静まり返っていた。路地に人通りがないというのは目につきやすい格好をしているジェシカにとっては幸運なのだが、誰にも頼れないという意味では不運であった。


「どうしよう」


変に想像が豊かになってしまう分、ジェシカの焦りは時が経つにつれ増していた。こんな時、リリアンが颯爽と駆けつけてくれたらと思うのだが、そういう状況が未知であった事から、とにかくどうすればいいのか分らず途方に暮れてしまう。


「・・・・っ」



思わず大声で叫びだしそうになったときだった。ジェシカの耳に僅かだが何かの音が聞こえた。それはとても馴染み深いというか、ジェシカは特別な意味を持っている音だと感じた。



「にゃ~」



猫である。白に黒いぶちが特徴的な、野良なのか飼い猫なのかよく分からない猫である。実はジェシカは人間の姿で他の猫を見たのは初めてだった。自分は眼の前にいる何かの同類だという本能的な了解と、人間には「にゃ~」としか聞こえないその鳴き声の微妙なニュアンスというのか調子から、その猫が自分に対して友好的だという事を感じ取ったジェシカ。


「あ。おまえ、、、」



言葉にしようと思うが、伝えようとしている事が上手く出てこない。その鳴き声の調子は自分に対して少しばかり甘えてきているものだと分かったのだが、それがジェシカを猫として認識しているのか、人間として認識しているのか、不明瞭であった。



「にゃ~」



猫はジェシカの足に頭を擦りつける。その仕草で人間には良く慣れているという事が分るのだが、それに応えるにはどうするのかの知識はなかった。まるで動物に慣れていない人のようなオロオロとした動きになってしまうのだが、猫の方はマイペースで少しジェシカにまとわりつくとそれで満足したのか戸惑うジェシカをよそにどこかに向かって歩き出してしまった。



「あ、待って!!」



思わず猫に着いて行ってしまうジェシカ。そのまま着いてゆくと、いつしか見慣れた場所に出てきた。そう先ほどの公園である。どうやら猫はこの公園を良く知っているようである。先ほどまでの人だかりは消え、公園はいつものような穏やかさを取り戻していた。猫は日当たりの良いところで眠りはじめる。




「ありがとう…」



猫を見つめてお礼を言うジェシカ。別にその猫が助けてくれたわけではないだろうが、もしかしたらジェシカをここに連れてきたかったのかも知れない。とにもかくにもジェシカは難局を乗り切った。ジェシカとしてはもうこれ以上大変な事になって欲しくないという気持ちから、自然と自宅に向かって歩き出す。




帰路。どうしても人目が気になってしまうのだが、それでも頭に被っているものを取り外さないというのは、ジェシカを意図したわけではないけれど、夢を壊さないという意味では良かったのだろう。
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