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徒然ファンタジー15

その日リリアンが帰宅すると猫妖怪が出迎えた。朝も見ているが、図体のデカいキャラクターが待ち構えていると少しばかりドキッとしてしまう。

「おかえり…」


「た、ただいま」


しかも心なしかジェシカの声が小さく、元気がないように聞こえる。リリアンの後をとぼとぼと着いてくるようにして居間に入っても普段座っている場所に座ろうとせず、隅っこの方で所在なく立ち尽くしていた。


「どうしたの?あ、もしかしてその格好で疲れちゃった?」


「う、うん。まあそんな感じ」


歯切れが悪いので「これは何かあったな」と思ったリリアンだが、一先ずジェシカを猫の姿に戻す事にした。あの道具を捻ると見慣れたキジトラの猫がそこに現れた。


「にゃ~…」


それでも元気がないので、とりあえず疲れているのだと思ったリリアンはジェシカを膝元に置いて背中を撫でさすってあげた。徐々に気持ちよさそうな顔になり、しばらくするとジェシカはそこで眠りはじめた。


「まあ、こういうのもいいかもね」




次の日はリリアンが休みの日だった。すっかり調子を取り戻しているジェシカに朝いつものようにごはんをあげて人間の格好に変身させる。さすがにそこに現れたのは猫妖怪ではなく、どちらかといえば控えめの部屋着を着た男の子だった。


「ジェシカ、おはよう」


「おはよう、ご主人さま」


笑顔で返してくれたのでリリアンは安心した。と、やはりここで昨日あった事を訊かないわけにはゆかない。


「ジェシカ、私に何か言うことない?」


「え…。あ…うん。その…」


何か良くない事なのだろうとは思うが、こういう場合はこう言うしかないんだろうと思ったリリアンは、


「怒らないから言ってごらん」


と甘く囁いた。ジェシカは素直なので、


「あ、うん。実はね、」


と昨日あった事をありのままに語った。リリアンは素直に言ってくれたのは嬉しかったのだが、やはり何かを言わなくてはならないと思う。彼女は突然目をカッと開いて気持ち大きめの声で言う。



「ジェシカ、『めっ』!!」


と同時にジェシカの首筋辺りに軽くチョップをお見舞いした。ジェシカは突然の事に吃驚してしまった。


「えっ…怒らないって言ったじゃない!?」


「怒ってないよ。注意したの」


「でも、いたずらをしようとしたわけじゃないんだ。みんなを喜ばせようと…」


「それも分ってる。でも喜ぶからってあんまり大胆な事をすると、騒ぎになっちゃうって分ったでしょ?」


「うん。それに自分が何処に居るか分らなくなって大変だった」


「戻って来れたから良かったけど、ジェシカだけで遠くに行ったらもしかしたら帰ってこれなくなっちゃくかも知れない。怖いでしょ?」


「怖い…」


ジェシカが答えるとそれまで厳しい表情をしていたリリアンは一転して優しい顔つきになり、穏やかに言った。


「だから、何か特別な事をしようと思ったら、必ず私に相談するのよ」


ジェシカもそれを聞いて安心したのか、元気よく答えた。


「うん。分った」


「まあ、と言ってもその姿で暮らす以上、何かあった時にどうすればいいかは練習しておいた方が良いのかもね…どうしたものか」


リリアンが考え始めた時、着信音が鳴った。


「あ、ご主人さま鳴ってるよ」


「あ、ありがとうジェシカ」


ジェシカがスマホを手渡すと、そこに表示されていた名前を見てリリアンは少し驚く。


「もしもし」


『あ、もしもし?私よ』


「それは分るけど、どうしたの何か用?」


『用があるといえばあるけど、無いと言えばないわ。あなた次第よ』


「どういう事よ?」


『あなたとジェシカでこっちに来てみないかなって誘ってるのよ。観光みたいな感じで』


「え、突然?」


『というか、誘うときには突然にならざるを得ないわよね』


「あんたは全く屁理屈ばっかりね。そこはこっちの事情も考えたりしないと駄目なんじゃない?」


『でもあなた達の事だから、予定なんてないんでしょ?』


「う…図星…」


『なら決まりね。今度の土日に来なさいよ。泊まるところは用意してるから』


「そうね…ジェシカの事を考えて遠出なんてしなかったし…それに『丁度いい』かも」


『丁度良い?』


「こっちのことよ。ジェシカ絡みでね」


『ふ~ん。まあ何となく想像がつくわ』


「じゃあ、よろしくね」


『分った』



ジェシカは会話の間に自分の名前が出てきたのでなんだかムズムズしていたのだが、リリアンが話し終えてニヤニヤしながらこちらを見ているので、訊いてみようと思った。


「誰からだったの?」


「立華きょ…じゃなかったわね、シェリーよ。あの変な女」


「あ、シェリーから!?」


ジェシカがシェリーという単語を聴くやいなや目を輝かせ始めるので、多少納得はいかないがそこは堪えて説明する事にする。


「喜びなさい、ジェシカ。シェリーの所に行くことになったわ!」


「え…シェリーの所に…?って何処?」


「それはね…」



こうしてジェシカとリリアンの小旅行が決定した。
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