FC2ブログ

そらまちたび ⑥

仕入れた情報で気になった場所が二つほどあった。一つは図書館に入る時にも目に留まったのだが『歴史資料館』とここから少しばかり離れているようだが「ある伝説」で有名だという観光スポットだ。歴史にはそれほど詳しくない上に、特にこの地域の歴史となれば素直に『分らない』と言った方が誠実なレベルなのだが、ここに来た「ついで」という意味合いが強いが歴史的に価値のあるものを見るのも良いと思い、入館してみることにした。


片山さんの解説で入り口に飾ってある「まあまあ有名な物」について大まかに知る。「武士の戒め」を説いたものを石碑にしているらしく、内容を聞くと当たり前のように思われたのだが時代背景を考えるとそこそこ重要なのかも知れない。殆ど無いに等しい入館料を払って数枚のパンフレットや資料を貰う。結局その資料を読んだ方が知識は得られると思うのだが、「実物をこの目で見るという事に意味がある」との助言から、とりあえず片っ端から見て回る。この町で秋に行われる有名なお祭りの展示もあり、この地域を治めていた大名の名前を知り、分らないなりに付け焼刃の知識は得たような気もする。


「どうだった?」


「ええ、歴史を感じれました」


既に僕達は次の目的地に向かっていた。先程述べた、「ある伝説」に関係した場所だそうで古くは和歌に詠まれている『鬼婆』だそうである。


「鬼婆は知ってますね。昔話か何かで聞いたことがあると思います。この町にあったんですね」


「そうだね。結構悲惨な話だけど、昔は鬼婆の『着ぐるみ』とかあったらしいね」


「『着ぐるみ』ですか?今流行のゆるキャラとかですかね」


「その先駆けかな。ちなみにこの町には実はゆるキャラが結構いる。まあご当地キャラとかマスコットという意味合いも強いけれど、あ、それと」


「それと?」


「ご当地ヒーローも最近出現し始めたとの事だよ」



片山さんはにやりと笑ってこっちを振り向いた。何かあるんだろうなと思ったので一応聞いてみる。


「どういうヒーローですか?」


「なんかね、『二人で待つ』んだって」


「二人で待つ?って?」


「読んで字のごとしなんだけど、知った時に「ああ」ってなるからちょっと考えてみるといいよ」


ちょっとした謎かけなのか意地悪なのか、とりあえずそれを考えていると目的地らしきものが見えてくる。


「ここまで少し距離があった、というか市の中心からは少し離れてるよね」


「ええ、そうですね」


「市町村合併って平成に行われたところも多いけどここも例外ではなくてね、市としてはかなり大きくなったんだよ」


「あ、そうなんですか」


「だから市全体を案内するとなると、統一された印象が無くなるかも知れないね」



車は土産物を売っているというお店の駐車場に止まり、そこから降りて観光施設まで僅かな距離を歩く。平日というのもあってそれほど人はいないと思ったのだが、意外と子連れが目立つ。少し不思議に思ったが入ってみて謎が解けた。


「そうか、子供の遊び場が新設されたばかりなんですね」


「そういうこと。やはりここも春は桜の名所として知られているのだけれど、工事中は別の意味で騒がしかったよ」


「でも随分敷地が広いですよね」


「鬼婆についてはあんまり前面には押し出してないようなのがちょっと勿体ないところかな」



敷地内を周っていると何となくここだけ時間の流れが違うような錯覚に陥りそうだった。和紙で作られたものとか、古い武家屋敷を再現したものとか、その割に中心が広々としているのでちょっとした散歩になる。一通り見回ったと思った時、僕の耳小さな鈴の音が響いた。


「あ…あれ…」


片山さんは丁度誰かと電話していたようでこちらを見ていなかったのだが、僕の目の前には先程お城で見掛けたのと確かに同じ白い猫が優雅に歩いていた。よく見るとその猫は口に何かを咥えていた。猫がこちらに気付いて咥えていたものを落としたが、気のせいか猫の姿がぼんやりしてきた。というより、猫の身体が透け始めたような気がする。迂回路になっていたので慌ててそちらに向かうと、確かにそこに居たはずなのに猫の姿は既になく、その場所には猫が咥えていたと思われる小さな石のようなものが落ちていた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
普通のカウンター
投票
無料アクセス解析
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR