FC2ブログ

徒然ファンタジー18

「うわぁー!!」


ジェシカは感動していた。シェリーこと立華京子の経営する店『SHELLY』の店内に陳列された様々な品物はそういうものをあまり見た事のないジェシカにとっては珍しく、また店自体が新しいという理由もあり床も清潔感がありピカピカしていて、まるで別世界のように見えたのである。その様子と表情を見ているとシェリーも嬉しくなってきた。


「ジェシカに来てもらって良かったわ。結構良い物を置いているでしょ?」


「すごーい!!これって何に使うの?」


と言ってジェシカは見た事も無い商品を指さして説明を求める。店の品はアンティークものと主に食器や雑貨などを扱っているのだが、デザインが良く色合いが豊かなので見ているだけで楽しそうである。シェリーも「ああ、これはね」と一つずつジェシカにも分るように丁寧に説明してゆく。二人の様子をほほえましく見守りつつも、<よく考えてみると、自分もここ初めてなんだけど>と思ったリリアン。とりあえず、しばらく店内を見回ってみる事にした。



雑貨はともかくアンティークものはリリアンにとっても謎な物が結構あった。美術的な価値があるのか無いのかよく分からないオブジェはジェシカでなくとも「何に使うんだろう」と思われてしまう。そんな中、リリアンにはとても気になるものが壁に飾ってあった。どこかの風景を描いたと思われる「絵」である。日本的ではないようにも見える広々とした草原に、小さな木造の家がポツンと存在している光景。物語でよく出てきそうな光景で、実際にこういう光景があるのか想像で描いたのか分らないけれど、妙にリアリティーがあるのが印象的だった。



「京子、この絵って何?」



ぼんやり見ていたせいか、少しとぼけた質問になってしまうリリアン。


「え?絵よ」


ジェシカに説明していたのでおざなりな答え方になってしまうシェリー。


「絵だっていうのは分ってるわよ。これは何処の絵なの?」


「ああ、その事ね。実は私にも分らないのよ」


「本当にこういう場所があるの?」


「それも分らないわ。誰が書いたのかも分らないの」


「え…?」


「そういうアンティークなのよ。面白そうだから飾ってあるの」


「ふーん…そうなんだ」


リリアンは絵の事は良く知らないので、その時は「そんなものなのか」と思ってそのまま絵を眺めていた。リアルだからなのか珍しい光景だったからなのか、自分でもよく分からないがその絵に惹きつけられていた。


「気に入ったの?」


いつの間にかシェリーが隣にいた。


「なんか妙に惹きつけられるのよね」


「あんまり風景画とか興味なかったんじゃなかったっけ?昔あなたが、『私は動物画の方が好きだわ』って言っていたような気がするわ」


「そんな事言ったっけ?」


「ああ、思い出したわ。確か、高校の美術の時間に言ったのよ。その時「猫」の絵を描いてたはずよ」


「あ、そういえば言ったかも…あんた良く覚えてるわね」


「うん。絵心が無いという事も覚えているわ」


「…。悪かったわね下手で」


「ううん、下手ではないの。観察眼と繊細さが足りないの」


「尚悪いわ!!」


「ふふふ…まあ店の中は一旦これくらいにして、店の奥が倉庫で2階が居住スペースになってるから案内するわ」


シェリーは二人を居住スペースに案内した。建物自体が外から見るより面積はあるようで、二階の部屋もそれなりに広い。話では二人が泊まる事になっていたのだが、十分である。シェリーの性格を示すように物があるべきところに収まっているような感じで、綺麗で整頓が行き届いていた。


「あー、ほんと京子の部屋って感じがするわ。ね、ジェシカ」


「あ、すごい…」


ジェシカは再び感動していた。これまでの生活から、どうしても他の人の部屋に入った事がないので新鮮なのである。また猫特有の感覚で部屋の匂いからシェリーの匂いを少し感じ取っていて不思議な気分だった。荷物を置いて、部屋の中を見回しながら言う。


「ねえ、シェリーはここに住んでるの?一人で?」


「そうよ」


と言うとシェリーはジェシカをじっと見つめた。熱視線とでもいうべき見つめ方である。


「どうしたの、シェリー?」


「私はリリアンとは違って広い部屋に一人で住んでいるわ」


「うん」


「ところで、ジェシカ。この家は気に入ったかしら?」


「え、うん。気に入ったよ」


「そう。それは良かったわ」



このやり取りを聞いていたリリアンは、シェリーの言葉に少しばかり不穏なものを感じていた。思わず訊いてしまう。


「ジェシカ、家とどっちがいい?」


「え…家と…?」


「リリアン。それを訊くのはまだ早いわ。ジェシカはまだこの部屋で生活していないのだから比べられない筈よ」


「…あんた…」


「ふふふ…そんな怖い顔しないの。ちょっとジェシカに訊いてみただけよ」


「まったく…油断ならないわね」


「??????」


ジェシカにはちょっと分らない争いである。とはいうもののしばらくしてリリアンもその家の居心地が良く、心が落ち着くような感じがするのであった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
普通のカウンター
投票
無料アクセス解析
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR