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徒然ファンタジー19

「はぁ~寒くなってきたらやっぱりお茶よね…あったかい…」


「あぁ…気持ちいい…」



シェリーの自宅にはジェシカにとって初めて見るものが幾つかあったが、季節的には少し気が早い器具が部屋の真ん中目立つところに陣取っていた。その上でお茶を飲み、みかんが置かれていればなお良い器具。『コタツ』である。リリアンの部屋では暖房を用いるので猫であるジェシカが喜びそうなこの文明の利器を事前のリサーチによって用意しておいたシェリー。猫の身体でなくてもやはりその魅力にすっかり取りつかれてジェシカは半身を深く潜らせている。


「ふふ…計画通りだわ。ジェシカはすっかりコタツの虜ね」


「ねぇ、このお茶って何か香ばしい匂いがするんだけど、何のお茶?」


「そば茶よ。少し離れているけど山の方に蕎麦が美味しい店があってね、置いてあったそば茶を飲んでみたら美味しくて最近はまってるの」


「ふ~ん。蕎麦なんてあんまり食べてないわ」


「まああの辺には無いでしょうね」


「蕎麦の他にこの辺って美味しいもの食べれるの?」


「食べれない事も無いけど、ラーメンとかちょっと有名な店も最近できたらしくて食べに行こうかと思ってるけど店の事もあるから実際あんまり外で食べないのよね…」


「来て早々なんだけどちょっと小腹が空いているのよ。ジェシカは?」


「う~う~ん」


うめき声のような声を挙げているジェシカ。心地良過ぎて声が漏れてしまっているらしい。


「ちょっとジェシカ、のぼせちゃうわよ、ほら」


と言ってジェシカを揺するリリアン。


「あ、俺もお腹すいてる…ご主人さまごはんはどうするの?」


「ふぅ~」と溜息をついて言う。


「一応ジェシカのごはんは持ってきてあるよ。でも今日はなるべくその姿のままで居させたいから私達と同じものを食べましょう?」



「うん」


ここでシェリーは一つ疑問に思う事があってリリアンに訊いた。


「気になったのだけれど、ジェシカは私と外食した後とか普通の食事はしているの?」


「そうね。あれ以降ジェシカも少し積極的になって買い物とか出掛けた時にはなるべく外食するようにしているわ。ジェシカから聞いたんだけど、京子と外食した時に食べたものってスプーンを使う料理だった?」


「あら、どうして分ったの?確かオムライスだったはずよ」


「そうだと思った。あのね、ジェシカに「箸」を使わせたら案の定と言うか全然使えなくて教えるのに結構苦労したんだけど、京子はそういう事言ってなかったし、スプーンは使わせていたのよね」


「ふーん。流石飼主というところね。ふふ…あの時はジェシカの事ちょっと変わった男の子だとしか思ってなかったのを思い出したわ」


「今は慣れた?」


「うん。まあある人のアドバイスで、どんな状況でも『実際に起こっている事』の中でするべき事をするのは変わらないって思えたの」


「するべき事をする…確かにそうね。私もジェシカの事で迷ったり悩んだりする事もあるけど、何ていうかこうして「この子」はこの子のしたいようにしているから、それを助けてあげたりアドバイスしたりしてるとすべき事っていうのは段々分ってくるような気がするわ」


リリアンの発言にシェリーはほんの少し驚かされながらも、友人の新たな一面を見たような気がして何だか頼もしく思えた。


「なんか大人っていうのか、お母さんぽくなった?」


「ううん、年齢的にお姉さんかな…?」


「姉と弟ね…まあそうとも言えるし、やっぱり…」


「やっぱり?」


一呼吸おいてシェリーは悪戯っぽく言う。


「ご主人さまと「猫」ね!!」


頷きそうになったけれどリリアンは僅かに眉をしかめる。


「一応聞くけどそれってちゃんとした「猫」よね。変な意味じゃないわよね」


「変な意味って?」


してやったとばかりにシェリーはニヤニヤしている。


「え…それはその…」


リリアンが困っていると思わぬ手助けが入った。


「俺とご主人様は『ぴったりくっ付いてる仲間』だよ」


ジェシカであった。と言っても半分ウトウトしていて、話についていっているのかいないのかよく分からない。ただシェリーは思わぬ回答とジェシカらしい表現に感心してしまって、からかおうとした事もどうでもよくなってしまっていた。


「そう。ジェシカにとってはリリアンはそういう存在なのね。何だかちょっと…というか結構羨ましいわ」


「シェリーもだよ。『ぴったりくっ付いてる仲間』」


ジェシカの何気ない一言だったが、シェリーはそれを聞いて目を見張る。やはり同じように気持ちよさそうな顔で横になっているのだが、それはジェシカが時々見せる「迷いなさ」であった。


「うぅーーーーーーーーーーーふぅ…」


「どうしたのよ!」


「な、何でもないわ。私もちょっとお腹が空いただけよ」


「そうかしら?ふふふ…」


「何よ!何『私は分ってますよ』みたいな顔してるのよ!!ああ、仕方ない『ぴったりくっ付いてる仲間』達の為に美味しいものを食べさせてあげなきゃね!」


照れ隠しをしながらも、満更でもないシェリーだった。コタツに未練を残すジェシカを引っ張り出して車で移動をする。市内から移動して数分、バイパス沿いの洋食屋に到着する。そこはオムライスが絶品の店だった。
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