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徒然ファンタジー22

シェリーの店「SHELLY」に戻ってきた一行。帰って来る前に少し回り道をして立ち寄ったスーパーで夕食の食材やちょっと飲み食いできそうなものを買っておいたのだが、ジェシカはあまりスーパーなどで並んでいる品物を見た事がなくそれなりに感動していた。リリアンはリリアンで、「何処に行ってもスーパーというのは同じ作りをしているものだ」と再確認し、普段よく口にしているお菓子などを何のためらいもなく買い物かごに放り込んでいた。


時刻はまだ2時半くらいでまだ何処か観光に出掛ける事も出来たのだが、主にジェシカの体力を考慮して相談した結果とりあえずその日はのんびり過ごす事に決めた。


「さて、どうしましょうかね?」


帰ってくるなり再びコタツの中で暖を取りはじめるリリアンとジェシカに、暗に「何かしませんか?」と誘うシェリー。


「あ、そうだ。持ってきてあるわよ」


「何を?」


「3人で出来そうなものよ。先ずは京子も持ってた携帯ゲーム機でしょ、ちなみに2台。そしてベタだけどトランプとか…」


「・・・。携帯ゲーム機というのは悪くないなと思ってしまう自分も自分だけど、私のも含めて3台あるから対戦できるわね」


「決まりね」



そしてベタベタだが三人でプレイできるレーシングゲームで静かな戦いの火ぶたが突如切って落とされた。それは妨害行為が可能なゲームだから、シェリーのちょっとした意地悪が現れるプレイとなった。と言っても狙われたのはジェシカではなく、ひたすら最速を目指していたリリアンであった。


「ちょっと!!何で私を狙うのよ!!」


「いいえ、私が投げた方向にたまたまあなたが寄ってきただけよ」


しれっと言い訳にならない言い訳をするシェリー。彼女に対しては応酬を辞さないリリアンもわざわざ狙う事のない後方のシェリーにトラップを仕掛ける。


「こら!なんてところに置いてるのよ」


「あ、ゴメンついうっかり…」


全然うっかりではないし、ニヤニヤしながら答えた。そんな風にお互いがお互いを狙っているうちにいつの間にかノーマークのジェシカが優勢になり、最終的に勝利の栄光を掴んだ。


「わーい!!やったぁ!!」


「ジェシカ、腕を上げたわね」


「うん。最近この人達の癖が分るようになってきて、強くなった!!」


「『この人達』って、もしかして他のキャラクターの事?」


「そう」


「リリアン…まだ教えてなかったの?」


ジェシカは未だにコンピュータのキャラクターがプログラミング通りに動いているとは思っていない。ただ最近少しづつ彼等が一定の動きをしてくるという事は理解しつつあるようだ。


「まあ説明しても疑われるだろうし、説明してもジェシカにとってはあんまり変わらないのかもね」


「うーん、でも一応説明しておいた方が…」


「そう思うんだけど、どうやって説明したらいいのか言葉が上手く出てこなくって」



「二人ともどうしたの?『この人達』をもうちょっと強くして戦おうよ」


ジェシカが言っているのはキャラクターの強さを変更できるシステムの事である。その口ぶりからするに、『この人達』と言いつつももしかするとそれが物凄く都合の良い存在であるように理解しているようである。


「まあ、これくらいシステムの事を理解していればあんまり変わんないかもね…」


「確かに…」


その後一通り遊び終えたところでシェリーの提案でコーヒーブレイクをする事にした。こだわりで豆のコーヒーを挽いて慣れた手つきでお湯を注いでゆくシェリー。本来ならば猫はコーヒーの匂いを好まないのだが、この姿だと香ばしい匂いの良さが分るジェシカ。


「あー、いい匂い」


「コーヒーは初めてだっけ?」


「こーひーは初めてだよ。ココアは飲んだことあるけど」


「そうだったかもね。ジェシカは甘いのが好きだったもんね」



主人とその猫の猫らしからぬ会話を聞いて、シェリーはふとある事を思ったが、そのある事はよく考えてみると馬鹿馬鹿しい話だった事に気付いて一人堪えきれずに笑ってしまうシェリー。


「どうしたのよ京子、私達何かおかしかった?」


「ううん、そうじゃないの。ふふふ…あなた達を見ていたら、私も猫を飼えばいいのかなって思ったんだけど」


「思ったんだけど?」


「考えてみたら、猫を飼ってもこんな風にはならないのよねって改めて思ってしまっただけよ」


「そりゃまあそうね」


「さて、そう言っているうちに出来上がったわよ。ジェシカは砂糖とミルクを入れた方が良さそうね」


「私はミルクだけ入れるわ」


流石に淹れ方が違うのでお店で飲むようなコーヒーであると感じたリリアン。ジェシカも美味しそうに飲んでいる。基本的にいつもは一人で飲む為に作るコーヒーだが、友人の為、大切な存在の為に作るのは結構楽しい事だと実感したシェリー。ほっと一息ついたのもあって自然と会話が始まる。


「そういえば京子最近なんか面白いことあった?」


「面白い事ね…まあ今が一番面白いけど」


「現在進行形ってやつね。そうじゃなくって、例えば店の関係でよ」


「店についてはまあそんなに悪くないわ。常連もできたし、商売のコツも段々分りはじめてきたとこ」


「気になっていた事なんだけどさ」


「何?リリアン」


「ここに店を構えたのって、やっぱりおばあさんが居るからとかそう言うこと?」


「深い理由はないけど、結構この場所が気に入っているのよね。私は色々判断する時に縁とかを大事にする方なんだけど、そういう縁を辿ってこの場所を紹介された時に、『自分のイメージに合っている』って思ったの」


「へぇ~。縁ね…でもそうね自分のイメージに合っているならやり易いかも」


「ただね…少しばかり悩みと言うのか、なんていうのか…」


打って変わって歯切れの悪そうなシェリー。


「なによ、言いなさいよ!相談になら乗るわよ」


「そうね。その実はこの辺であんまり同年代の人を見ないっていうのか、なかなかプライベートで話を出来る人が少ないというのがちょっとした悩みなのよね…」


「っていうか、それはみんな同じだと思うよ。私だって今でこそジェシカと話すけど、もともと猫として飼ってたからね。あっちに友達はいないわけではないのだけど、忙しい人が多いから」


「それはそうよね。最近になって高校時代に『一人で良い』とか言っていた自分を張り倒したくなるわ」


「でも、多分京子は基本的には一人でも大丈夫だと思うのよね。あんた店なんてやってるけど実はそんなに社交性ないし」


「失礼ね、と言いたいところだけど実際自分から行くのは苦手なのよね。例外もあるけど」


『例外』と言った時にジェシカの方をちらっと見たシェリー。


「例外って?」


何となく自分が訊いた方が良いと思ったジェシカ。


「ふふふ、それはね、自分が興味を持った相手よ」


そしてじーっと熱視線を送り続けるシェリー。長い黒髪でもともと妖しさの漂う目のシェリーは、女性というものがあまり分っていないジェシカにとっては「綺麗な目」であった。もっともシェリーも別にモーションをかけているというわけではなく、別の意図があってなのでリリアンからしたら「妖しい」というより「怪しい」目つきであった。


「あんたがジェシカに興味津々なのはいいけど、ジェシカは一泊して帰るからね」


「う~ん…何とかしてうちの子にできないものか…」


「あ、ついに言いやがったよこの人!!ホンと、興味を持ったら一直線なところは変わってないわね」



「シェリーがきょうみしんしん」


自分が狙われているという事に気付いているのか居ないのかはよく分からないけれど、何となく空気で察しているジェシカ。だが、


「あ、シェリー!!」


「え、何?」


「コーヒー美味しかったよ!!」


と満面の笑みで言われてしまっては、


「そう。良かったわ」


とシェリーもほのぼのとした笑顔にならざるを得ない。
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