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徒然ファンタジー24

翌日、リリアンはちょっとした物音がするのに気付いて目を覚ました。少し寝ぼけていたので自分が寝ている部屋を見回していつもと様子が違うので不思議に思った。

「あ、そっかここ家じゃないんだっけ」


すぐに思い直して頭を整理する。<ここは京子の家で、ジェシカと来たんだっけ>と確認したところでジェシカが隣の布団にぐっすり眠っているのを見てとりあえず安心する。具体的に何が安心なのかは分からないが、初めての場所でも物怖じせずにいられるという事は今後の事を考えると頼もしくもあった。


「ジェシカが居るけど京子はどうしたんだろ」


とリリアン達の為に新調されたと思われる質の良い布団の上で考えてみる。と、先ほどから聞こえている物音がどうやらリビングの向こうのキッチンから聞こえるという事に気付いた。部屋から出ると案の定既に朝餉の用意をしていたシェリーを見つけた。


「京子、おはよう。早いわね」


リリアンの声に気付いたシェリーはそちらに振り返る。機嫌が良いのかリリアンの顔を見るなりにこやかに微笑んだ。


「おはよう、リリアン。今日は店を開けるつもりだから」


「あ、そういえばそうだったわね。手伝おうか?」


「いいわよ。お客さんなんだし、もう少し寝ててもいいのよ?」


「昨日はぐっすり眠れたし、眠くはないのよね」


「じゃあテレビとか付けててもらえる?」


「うん、分った」


と言って昨日と同じように早速コタツで足を伸ばすリリアン。すっかり家に馴染んでしまっているが、仕事の都合で今日中には帰らなくてはならないのでこれからの予定を考えながらニュースを見る。普段日曜の7時台というと二度寝をしようか迷っている時間だが、多少緩い感じではあるがきっちりとニュースの原稿を読んでいるアナウンサーを見ていると、背筋がピンとするような気持ちになる。折よく地域の放送局による地元のニュースの時間になって見慣れない人が画面上に現れたので、ちょっと<おお!>と思ったリリアン。


「へぇ~やっぱりこういうのってあるんだね」


「こういうのって?」


対象がはっきりしない言葉だったので反射的に訊き返すシェリー。


「あ、この地域のニュースの事よ。当たり前だけど知らないニュースだ」


「まあそうね。こっちの事って全国版じゃあんまり流れないけど、色々あるのよ」


「やっぱり大変なの?」


「どこも大変なところは大変だし、これから何をするかって事が大切だって言い聞かせてるわ」


その地域の事は人並みには知っているリリアン。決して明るい事ばかりではないという事はニュースを見ていて伝わってくるが、それを知って自分がどうすればいいのかというと分らない部分もある。


「ねえ、訊いても良い?」


何気なく訊ねられる相手が居るからなのか、自然と声となって出てきた。


「なあに?」


長く付き合った相手だからなのかこちらも自然なシェリー。


「わたし達がさ、もしこういう場所で出来る事があるとすれば何なんだろう」


シェリーは料理を続けたままだが質問の意図は伝わったらしい。リリアンの言う「わたし達」とは彼女のような別の場所で生きている人達の事である。実際、シェリーもそこに店を構える前には別の場所で同じような事を考えていたから彼女の質問もよく分かったのである。


「そうねぇ、難しいわ。けど」


「けど?」


「来たんだったら楽しむ事かも知れないって、最近では思うのよ」


「楽しむ?」


「そう。何かの縁で来たんだったら、短い時間であれその場所の魅力を感じてもらいたいっていうのかしら。多分、この町に少し足りてない部分があるとすれば、そういう魅力を発見してもらう努力とか工夫なのかもねって」


「…楽しむ、か」


「って、その一助になれと思って店をやっているという気持ちもないわけではないのよ」


いつもは何を考えているのか分からない事もある親友の意図が何となく分ったような気がした。


「うん。なんか分るような気がする」


そのままを言うとシェリーが振り返って、


「そこは『分った』って言うべきでしょう!?っていうか分りなさいよ!まったくあなたらしいわね」


と半ば呆れながら半ば笑いながらリリアンに微笑みかける。かく言うシェリーはそんな親友だから付き合っていて退屈しないし笑顔でいられるのではないだろうか。リリアンもシェリーとのやり取りですっかり本調子になって、コタツから「よっ」と足を出して立ちあがる。


「さて、寝坊助を起こしてきますか!!」


「あ、待って!!」


「何よ」


「わたしもそれやりたい!」


「なんなのよその自己主張は…」


「良いじゃない。わたしだってスキンシップは必要なのよ」



ここで思い出してもらいたいのだが、ジェシカはもともと過剰なスキンシップをあまり喜んでいないのである。流石に二人の人間にベタベタされながら、しかもまだ布団から出てきたくない状態なので



「ねえぇ~…ちょっとぉ~…あのぉ~…う~ん…」



猫らしからぬ苦悶の表情を浮かべるジェシカ。左右に身体を揺さぶっていやがる反応を見て楽しんでいる女性二人が、こういう時にはやたら協調性があるのはジェシカにとってちょっとした不幸だったかも知れない。
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