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徒然ファンタジー27

「素敵な人ね…」


洋子が帰った後、シェリーと一緒にカウンターに立っているリリアンが言ったものだ。シェリーは穏やかに頷く。先程まで話していた余韻が一同にはまだ残っていて、リリアンだけでなくジェシカも新たな出会いをゆっくりと思い出しているようだった。それほど長い時間話し込んでいたわけではないが、それでも洋子の人柄はすごく良く分かったし、だからこそ安心して色んな事を話せたのである。ちなみにリリアン達と入れ違いになった和菓子屋で買ったらしいお菓子をみんなで食べていた。その中にリリアンも買った『玉羊羹』があって、楊枝を使って中身を取り出す食べ方を教わったりした。店を出る時に見せた嬉しそうな笑顔が忘れられない。



『リリアンさん、ジェシカ君。またね』


そう言った洋子を見送った一同だった。


「おばあちゃんはね、何といったものかしら…」


シェリーは何かを言おうとしたのだが、彼女にしては珍しく迷っているようだった。それは言い表せない何かがあるという事でもあるのだろう。


「う~ん…」


リリアンもちょっと困ったような笑顔でシェリーに微笑みかける。同じ時間を共有したという事がこれほどまでに多くのものを与えてくれるような事だとは思ってもみなかったという喜びがあった。



しばらくしてお客の来店があり僅かにだが表情が凛々しくなるシェリー。リリアンが気付いたのはシェリーは接客をしていてもどちらかというとフレンドリーに接していて、堅苦しいところが見られないという事であった。


<こういうところはリピーターが増えるかも…>


漠然と分析してみるリリアンだが、自然と堅苦しいところが多い自分の仕事と比較していた。一方ジェシカはシェリーに言われた通りに店の中を見回っていた。『サクラ』とまではいかないけれど、ジェシカの物色の仕方がそれっぽいからか店に人が入っているという感じが出ていた。その時ジェシカはリリアンが初日に気になっていた木造の家の「絵」に見入っていて、<こういう場所が何処かにあるんだろうな>と素朴に考えていた。



そうしているうちに時刻はそろそろお昼に近づいてきた。予定では電車の時間の都合でお昼前にはここを発った方が良かった。


「京子、じゃあ私達そろそろお暇させてもらうよ」


「そうね。手伝ってくれてありがとう。今車出すから」


「うん、それね私達帰りは道分るし歩いてゆこうかなって思ってるんだけど」


「そう?同じ道だけど良いの?」


「まあ何といいますか、趣をもうちょっと味わいたくって」


「『趣』ねぇ…ものは言いようというのか…」


「ジェシカだってもうちょっと歩きたいわよね」


「うん。俺ももうちょっと歩いてみたい」



という事で駅まで歩く事にしたジェシカとリリアン。準備をして外に出る。名残惜しいがシェリーとは店でお別れである。彼女も店の外に出て見送ってくれるようである。


「シェリー、俺ここに来て良かった。おばあちゃんも会えてよかった」


言葉からも分るようにジェシカはとても満足しているようだった。シェリーもそれを聞いて嬉しくなる。


「それを聞けて嬉しいわ。もし良かったらジェシカはここに残って…」


「何ふざけた事言ってるのよ!!!」


怪しげな企みを察知してリリアンが言葉を続けさせない。


「ち…」


冗談半分だとは思うが、本当に悔しそうなのが気になる。


「シェリー、また来ても良い?」


二人の間の不穏な空気を覆すようなジェシカの発言。


「ふふふ…そうね。ジェシカはそういう子だもんね。勿論よ、いつでもいらっしゃい」


「まあジェシカが来たいって言うときには来るからさ、良からぬことを企まない事ね」


「あ、そうだ…」


シェリーが何かを思いだしたようである。


「最後にここで記念写真撮りましょうよ。ベタだけど」


「ベタね。でも悪くないわ」


店をバックにリリアン、ジェシカ、シェリーの順に並んで写真を撮った。


「じゃあ、私達行くから。あっちについたらメールする」


「うん。分った。またね」


「うん、またね」


シェリーに見送られ、店を後にするジェシカとリリアン。まだこの町を知っているというわけではないけれど、道は分かり易くて迷うことはない。ロータリー、老舗の和菓子店、神社と確かめるように歩いて、駅までの坂道を下る。


「あ、そういえば何か喉が渇いちゃった…。ジェシカはどう?」


「うん。何か飲みたい…」



という事で最初にシェリーと待ち合わせした駅前のコンビニに入店する。やはりコンビニは何処に行ってもコンビニで、飲み物だけと思っていたのにちゃっかりお菓子や雑誌なども買いたくなってしまうのは共通である。店内にはお昼時だからなのかお客さんも多く、そういうのも同じなんだなと当たり前の事に感心するリリアンであった。



☆☆☆☆☆



まるでシェリーの店で見た絵に描かれているかのような光景。静かな木造の家の書斎で一人の男性が本のページを捲っている。本の新たなページには二人の女性と一人の少年が立ち並んで微笑んでいる『挿絵』が浮かび上がっていた。男性は何かを納得したかのような表情で文字を辿っていた。
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