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徒然ファンタジー34

母の事もあってリリアンは少しばかり柄にもなく悩むようになっていた。理解者である家族であったとしても、というか予感はしていたけれど実際に自分が受け入れられる事をそのまま受け入れられるわけでもないとするなら、どうしても自分がこうしている事は本当にこれでいいのか、という事に対して迷いが生じてしまう。ある意味でジェシカの身に起こった事については個人個人でどう受け止めるかである。ぼんやりとしたままで何となく受け入れるのが一番穏当かも知れないが、やはり見る人が見たらショックというのか、戸惑ってしまう事なのだ。


そう思いつつもジェシカを見ていると、<これでいいのだ>というかなりはっきりとした自信があるのも確かである。リリアンはそれでも「シェリー」にメールをしたい気持ちになる。彼女は戸惑いながらもちゃんと受け入れてくれた。


「京子なら何ていうのかな…」


けれど一方でそれは自身の問題でもあるような気もしたリリアン。どうしたら良いのだろう。そう思いつつも、丁度年末に向けて仕事の方が忙しくなってきた頃で何となく連絡できずにいた。ジェシカは溜息を付く回数の増えてきたそんなリリアンを見ていて、必ずしも彼女の悩みが全て分かるというわけではないけれど、自分の事が何か関係しているように直感していた。


「ねぇ、ご主人さま」


リリアンと部屋で寛いでいる時、ジェシカは自然とリリアンに話しかけていた。


「どうしたの?ジェシカ」


「うん。その何て言ったらいいのか分からないけど、俺も頑張るっていうか、その…」


と言ってもどうしたらいいのかが分っているわけではないから、どうしても足りなくなってしまう。リリアンは一瞬首を傾げたが、少しづつ何かに気付いてゆくように見えた。


「もしかして心配してくれてるの?ジェシカ」


「心配…あ、そう。心配してる」


するとリリアンは目を細め、穏やかに嬉しそうに笑った。


「ありがとう。ジェシカ。大丈夫よ、ジェシカが居るから」


「俺が居るから?」


リリアンはジェシカに優しく語りかける。


「そう。あなたが居るから、私は平気。それにね」


「それに?」


「私は何とかなると思ってるのよ。だって、私のお母さんだから」


ジェシカは黙ってそれを聞いていた。ジェシカは何か心が温かくなるような気持ちになったが、何となく羨ましいなと思いもした。ジェシカも「お母さん」というのは何となく覚えているような気がする。だがそれは遠い昔の事で、確認が出来ないような事だという事も知っている。そして「お母さん」というのはなにか「ご主人さま」という響きに似ているようにも思えるのである。


「ご主人さま…」


「なあに、ジェシカ?」


「明日、また散歩しようよ。いつもの公園」


丁度リリアンは次の日は休みだった。


「ジェシカあの公園好きね」


「なんだか、あそこに行くと落ち着くんだ」


「そうなんだ。何でだろうね?」


「うーん…」


その時、リリアンのスマホにメールの着信があった。送り主は「立華京子」とあって、


『最近何かあった?っていうかジェシカ成分が足りないから写真とか送りなさいよ!!』


という文面。これで殆どの心配は吹き飛んでしまった。一方でこのメールで別の心配というか危惧が出てきたのも確かである。


「だんだん京子の要求が率直になってきたような気がするわ」


「?」


友人の別の人格が現れているかのようなジェシカに対するあからさまな欲求は、それでそれでどうかと思った。
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