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徒然ファンタジー45

正月も終わりになろうという日、リリアンとジェシカは満を持して近くの神社に向かっていた。そもそもリリアンが会社の友人の勧めでほんの気紛れで始めたパワースポット巡りはジェシカを連れ出す良いきっかけになっていて、ジェシカも近場の神社についてはそこそこ廻ったのでおおよそ神社というものがどういう由来で建てられたのかという事も含めて理解し始めていた。そしてシェリーに言われて思い出した初詣に参ろうとしているところなのである。


近場なので完全に徒歩の移動で昨日うっすらと積もっていた雪も既に跡形もなくなっている。とはいえ午前中だと外はかなり寒いのでジェシカはリリアンにアドバイスを受け、紺のコートを羽織っている姿である。デザイン的にまさに高校生くらいの子が着そうな物だがその姿で歩いていると何となく大人びても見える。実際、ジェシカは様々な事を経験してちょっとの事では動じなくなったし、もう一つの理由としては猫は成長が早いという事もある。ジェシカは夏仔なのでこの冬には2才半ほどになっていて、人間で言えば十分大人とも言える。人間に変身した姿も若干変化があるようで、身長が少し伸びて表情も幼さは残るけれど大人にも見受けられるようになっている。一緒に暮らしているリリアンはあまり意識していないものの、ジェシカが頼もしく感じられてきたというのは間違いない。



神社に行くルートはジェシカもすっかり覚えていた。というのもいつもの公園を通って、その道を真っ直ぐ行った突き当りの小高い場所に神社が建っているからである。11月にリリアンに初めてその神社に連れられて行った時以来、比較的ありふれている造りの神社が他の場所とは違っているせいか妙に気に入ったジェシカ。今では散歩コースがその神社が見える辺りまで延長されている。


「初詣って何をするの?」


神社が見えてきたところでジェシカが訊ねる。基本的な質問であるが、言われてみればリリアンもよく分かってない部分がある。


「う~ん、『新しい年になりましたよー』って神さまの所に行って、一年無事でいられますようにとか願掛けするとか…なのかな?」


パワースポット巡りをしているわりには実はあまり調べてないリリアン。だがジェシカはその説明の中で気になる事があったようである。


「神社って『神さま』が居るところなんだよね」


「そうね。祀られてるっていえばいいのかな」


その辺りはリリアンに教わっているので大丈夫なのだが、


「『神さま』って本当に居るのかな?」


とやはりジェシカも根本的なところが気になったらしい。


「私も分んないけど…」


リリアンも迷いつつ言葉を選びながら答える。


「他の世界も多分あるんだから、別に居たってそんなに驚かないかな、今は」


直接的な答えにはなっていないがそう言われてみるとジェシカも同じ気持ちだった。うんうん頷いているジェシカ。実のところリリアンが友人からパワースポット巡りの事を聞いた時もジェシカの事があってあまり抵抗がなかったのである。とはいえ同じ性質の話ではないという意識はちゃんとある。むしろ知るにつれて、神社というのはこの国の歴史とか文化のようなものだとも思えてくる。ジェシカも文化的なものだからこそ気になるのではないだろうかとリリアンは思った。


「さあ、あとはこの階段を登るだけね」


「うん」


階段を登っていると途中に何人かとすれ違う。既に参拝を終って降りてくる人達である。リリアンは<やっぱり来てるんだな>としみじみ思う。彼女がこういう場所に興味を持ち始めたのは最近だが、初詣については何となく年を越したという気分を味わいたいという理由で新年思い立った場合は来ることが結構あった。この頃はここに来ている人を見ると何だか温かい気持ちになれるのだ。


階段の途中にある鳥居をくぐり少しして登り終えると両者とも「ふぅ」と息をついた。そこで顔を見合わせるとお互いに頬に赤みが差している事に気付く。再び正面を向くとなかなか立派な拝殿が彼等を迎える。少数だが白と赤の巫女さんが待機して破魔矢などを売っている。


「あの人達って何してるの?」


普段は人を見かけない場所で特別な格好をしている女の人を見ればジェシカでなくとも初めてなら気になってしまうだろう。


「よく覚えておきなさい、あれは『巫女さん』よ。ああいう格好をして神さまに遣えているの」


「へぇ~凄いんだ」


「あの格好してたら凄いわよね。まあ最近は神社じゃなくてもああいう格好する人いるみたいだけど…」


リリアンは言葉を濁した。ちょっとだけコスプレが好きなのでその手のSNSを見ていて『巫女さん』のコスチュームは意外と人気だという事を知っていたのである。


「まあとにかくそういうのは後よ」


リリアンは足早に拝殿へ向かった。目の前で賽銭箱の前で手を打ちあわせている男女がいたがジェシカは既に拝礼については手ほどきを受けていたし、他の神社に行ったときにも同じ事をやっているので慣れたもので彼等が引いた後、リリアンと供に『二拝二拍手…』と続けていきお賽銭を投げる。これほど淀みない動作をされれば誰もジェシカが猫だと気付かないだろう。そして手を合わせて静かに祈る。


「よし」


最後に一拝をして拝礼は終わった。勿論お約束で、


「ジェシカは何をお願いしたの?」

と訊くことも忘れない。


「『みんな仲良く暮らせますように』って」


リリアンは思わず微笑んだ。ある意味それ以上の願いはないような気がする。彼女は少し違う事を願っていた。


「ご主人さまは?」


ジェシカに問われてリリアンはこう答えた。


「私はね、シークレット!」


「?」


きょとんとするジェシカ。


「秘密って事よ」


そう言って悪戯をしたような目をするリリアン。少し年下の少女の可愛らしさを見倣ったというのが正直なところである。


「え、ズルい!」


勿論ジェシカはちょっと憤慨する。リリアンは


「女の人は誰しも秘密を持つものなのよ」


とその場では説得したが、彼女が願ったのは「もうちょっと可愛くなれますように」と「みんな幸せになれますように」であった。実のところ一つ目の願いごとを言うのがちょっと恥ずかしかったのである。
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