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徒然ファンタジー48

ジェシカと愉快な仲間たち…ではなく二人の女性は公園までダッシュしていた。望との待ちあわせの時間は10時だけれど、もうまもなくその時間になってしまう。近いからという理由で悠長に構えていたのが仇になった。別に多少遅れてもとは思うが、年長者二人がそれではなんとも格好がつかない。必然的にみんなで疾走するのだが、やはりというかジェシカが速く少し前に出ている。


「私の車で来ても良かったような…」


公園に着いた時にシェリーが気付いたが実際は車で来ても大して時間は変わらないくらいの距離である。


「まあ、運動になるから、はぁ…いいんじゃない?」


昔は運動部だったリリアンも走るとなると流石に息切れしてしまう。親友を見たがあまり疲れてなさそうである。気になって訊ねてみた。


「あんた、疲れないの?」


「こう見えてもそこそこ体力があるのよ。店でも立ち仕事とかだからね」


「へぇ~…はぁ、はぁ…」


「いや、むしろあなた疲れすぎじゃない?」


「あれ、望は何処に居るんだろう?」


先に到着したジェシカは周囲を探していたが望の姿が見えないので不思議そうにしていた。既に10時は廻っている。


「本当にこの時間で合ってるの?」


「え、大丈夫だよ。多分」


リリアンは一瞬多忙な望の方で何か遅れる理由があるのかも知れないと考え始めた。屈んだ姿勢のまま周囲を見渡すが、望らしき人がいないか確認する。どうも見つからない。


「いないわね…」


「そうね、あそこに猫が居るけど、人は見当たらない…」


「え…猫?」


「ほら、あそこ。あら、近付いてきたわ」


「あ…」


リリアンとジェシカはその猫に見覚えがあった。桃色の首輪に鈴が付いていて、近付くごとにその鈴の音が大きくなる。白に黒のぶちのはいった猫は一同の前で立ち止まり「にゃ~」鳴いた。


「京子、その猫ね…」


リリアンが説明しようとした時、猫は自分の前足で首元の鈴を数回鳴らした。すると、猫がみるみるうちに一人の女の子の姿になる。次の瞬間そこに居たのは勿論、大宮望であった。


「あ…」


シェリーは思わず口をあんぐり開けたまま固まってしまった。確かに初めて見るとショッキングには違いない。彼女はそこではっと気付いて「ううん」と首を振って目をくわっと見開くと初対面の望に向かってこう言った。


「全く、あなたも猫の姿で現れるのね!」


少し呆れた感じで言ったのだが、対する望はこれぞ見事な営業スマイルという風ににっこりと笑って答えた。


「こっちの方が説明が省けると思いまして。初めまして…えっと」


「立華京子よ」


同じくシェリーもにっこり笑って手を差し出した。


「そうでした。立華さん。今日は宜しくお願いします」


そう言ってシェリーの手を握る望。


「『京子』で良いわ。私もあなたの事を『望』さんと呼ばせてもらうわね」


「ええ、そうして下さい!」


シェリーのフレンドリーな様子に望は喜んでいるらしかった。リリアンは何となく気の合いそうな二人だと思った。二人で紹介が進んでしまっているが、よく考えてみると確かにシェリーに猫から人間に戻る瞬間を見せるのは効果的だと思った。お陰でこれからの話もスムーズに出来そうである。その時ジェシカが、


「うわ~みんな集まっちゃった」


と素朴な感想を洩らした。ジェシカはこういう状況が初めてとも言えるので少しばかりワクワクしている。


「ご主人さま、シェリー、望、俺!!」


そんな何気ない確認に、女性陣3人はみな同じようにほほ笑んでジェシカを見つめた。


「じゃあ、ここでも良いけど何処か話すのにいい場所あるかしら?」


リリアンが少し自分が仕切らなければと思って発議する。


「そうね、別にあなたのアパートでも良いんだけど。一旦戻れば車で移動できるし」


「あ、それはいいですね。私もリリアンさんの住んでいる所見てみたいと思ってましたし」


「何にもないし、ちょっと恥ずかしいけど車で移動するっていうのは賛成したいわ」


「じゃあ…」


決まりかけた時、ジェシカが何かを思い出したのか突然大きな声で言った。


「あ、そうだ!!カラオケ!!」


「え…、あ、そうか。その手があったか」


リリアンはその意図を汲んで二人に説明した。


「あのね、前望にあった日の午前に近くのカラオケ屋さんに行ったの。それでね、ジェシカが『望の歌が聴きたい』って言ってて、あの…そのもし大丈夫だったら私からもお願いしたいの」


何となくプロの歌手をカラオケに誘うのも恐縮してしまうのだが、ジェシカの希望でもあったし実は自分も聴いて見たかったのである。


「えっと…」


握った手を顎のあたりに当て少し考え始める望。ジェシカが心配そうに見つめる。望はその様子を見て、意を決したのかニコッと笑って


「いいですよ!行きましょう」


と快諾した。さしものシェリーもこの展開には「うわっ…凄い」と呟いたくらいだった。後々の事を考えてとりあえずリリアンのアパートに先に戻ってから車でカラオケ店まで移動する事に決めた。
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