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徒然ファンタジー51

その後は実質カラオケ大会となり学生時代からそれほど唄わなかったシェリーが場のノリで歌わされたりリリアンと古めの曲でデュエットをしたり、ジェシカがあやふやな曲を望が援護したりといった場面があった。笑顔があふれ、すっかり打ち解けた様子で時間はあっという間に過ぎてゆく。残り僅かとなったところで望が締めに自分のデビュー曲を唄ってお開きとなったが、それまでに一番唄った人物はやはりというか『カラオケの女王』、リリアンであった。


「今日は楽しかったですね!!」


店を出て望が本心で嬉しそうに言う。リリアンとジェシカは同意する。シェリーは少し複雑そうな表情で、


「私がイメージしていたのとは少し違った雰囲気になったような…」


と小さく呟いた。それでも笑顔な事には変わりなく、彼女としてもこの日はかなりはしゃいだ方に入るだろう。そのまま駐車場に向かい車に乗り込む。


「さて、どうしましょうか?今1時半だけど」


昼食は室内で少し胃もたれしそうなメニューを注文して食べていたのでその後もすぐ出かけられる感じではあった。

「私達は大丈夫だし京子は今日は家に泊まるらしいから、望さんよね」


望は「う~ん」と首を捻って悩んでいるようだった。


「悩ましいですね…折角みなさんに会えたのでもう少し色んな話をしたいのですが、行きたいところが浮かばなくって」


「そうね…私もベタなところしか思いつかない」


「ベタって?」


リリアンの発言に対してシェリーが訊ねる。


「え…そりゃあ遊園地とか」


シェリーは呆れた表情で親友を見た。


「ベタだけど、私達の歳くらいになるとそれはなんというか…」


「え…?友達で『夢の国』に行く人も居るけど?」


「そういえばジェシカ君は『夢の国』に行った事あるんですか?」


望が訊いたことに対してジェシカは『夢の国』という言葉が指すものが分ってないので文字通りに受け取った為「?」マークを浮かべている。

「あ、ジェシカ『夢の国』っていうのはテレビでも良く出てくるディズニーランドの事よ」


リリアンの説明で得心がいったのか一度頷いたが、


「ううん、行ったことない」


と言った。勿論リリアンもいつか連れて行きたいと思っているのだが、ジェシカの事を考えると人が多過ぎて迷子になると困るという理由があって行けないでいた。


「まあ、人が多いからね」


リリアンのその一言で大体の事は了解したらしい二人。


「でも、普通の遊園地だったら大丈夫だと思いますよ」


望が言ったのだが、彼女自身行きたそうな雰囲気である。


「よし、行きましょう!」


言うが早いかエンジンを掛けて車を動かし始めるシェリー。


「目的地は、ここから一番近い遊園地よ。リリアン、スマホで探してみて」


「分った。本当に京子って決断すると行動が早いわよね」


「時間が限られてくると有効に活かそうと思うものよ」


確かにシェリーはそう頻繁にこちらに来れるわけでもないのだから、それも頷ける話であった。


「まあ、それもそうね」


納得したリリアンは助手席でスマホを操作する。マップで検索してみると目的地はそこから車だと20分程で行ける場所にあった。それほど有名な遊園地でもないし規模も大きくはないが、ネット上の評価は悪くなかった。向かっている間に、


「そういえば少しの間試したい事がありまして、リリアンさんにお願いしたいんですが」


と望が切り出した。


「え、なに?」


リリアンが答えた。


「到着するまでジェシカ君を猫の姿にしてもらいたいんです」


「どうして?スキンシップ?」


すると望は意外な事を口にした。


「私も一緒に猫になってみて、ジェシカ君とスキンシップしてみたいんです」


「なにそれうらやましい」


前に集中したままのシェリーが即座に言った。


「あぁ…それは面白いかも。やっぱり猫同士だと違うのかな?ジェシカどうする?」


「うん、いいよ。でも変わらないと思うよ」


とりあえずバッグから道具を取り出してジェシカを猫にする。続いて望も自分の腕輪を数回鳴らして猫の姿になる。


「にゃ~」


ジェシカが望を見て一鳴きする。


「みゃ~」


それに対して白に黒ぶちの望も可愛らしい鳴き方で応える。


「大分シュールな光景よね」


バックミラーで後部座席を確認したシェリーが言う。最初はリリアンもそう思ったけれど次第に意見が変わる。望がジェシカに自分の顔を擦り付け始めると、ジェシカは本能的になのか望の毛繕いを始める。


「何か見方次第ではすっごく恥ずかしい気がするんだけど…」


「リリアン、純粋な気持ちで眺めなさい。決して人間に置き換えたりしないで…」


とシェリーは言うけれどその発言自体、彼女もリリアンの気持ちが分るということでもあった。ただよく考えてみると、会ったばかりの猫がこのようにお互いを警戒しないで接する事が出来るという事実は猫になってもあまり変わらないという事を意味していた。


「みゃ~みゃ~」


気持ちよさそうに望が鳴く。その様子を見ているうちに段々リリアンは羨ましくなってくる。


「う~ん。なった事はないけど猫になるというのはなかなか良い事なのかも知れない…」


「私も「M・A」さんに会ったら変身させてもらおうかしら」


10分程その姿のままでいたのだが、何を思ったか望の方が前足で首輪を鳴らして人間の姿に戻った。


「あれ、どうしたの?」


すると望がやや残念そうな表情で、


「ジェシカ君が言った通り、あんまり変わりませんでした…。」


「え、でも気持ちよさそうだったわよ」


「こっちの方が気持ちいいです!!」


と言って、猫のままのジェシカを抱きかかえて顔を擦り付ける望。


「あ!!ズルいわよ、望!!」


少し激しいアクションで振り向いたシェリー。危く前方不注意になるところである。


「あの…そろそろ着くんですけど」


リリアンは一人落ち着いて言った。
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