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徒然ファンタジー52

車から降りたった女性三人と再び人間に変身したジェシカ。遊園地というものがまだよく分かっていないジェシカにも楽しそうな場所であるという事は分ったらしく既に目を輝かせている。駐車場からは入場口の向こうに色鮮やかな建物やアトラクション並んでいるのが見える。面積自体はそれほど広くないもののコンパクトに詰まっているという感じである。一月なので暑い季節ほど混んではいないようだが、日曜なのでそれなりに人が入っているようである。


「ああ久しぶりだなぁ、こういうとこ」


「私はあんまり来た事がないのよね…実は」


リリアンとシェリーはそれぞれ違う印象のようである。シェリーと同じく望もそれほど来たことがないようだが、

「ジェットコースターとかは苦手で…」

と絶叫系の遊園地の印象が強いようである。


「あんまり派手なアトラクションは無いけど、室内のCGを使った『アドベンチャー体験なんちゃら』があって、結構凄いらしいわよ」


リリアンは先ほど調べた情報を伝えた。


「あ、そういうの好きです!」


望の喰い付きが良い。


「しかもね、今やってるやつが『不思議な国に迷いこんだ』という設定らしいよ」


「なんと!」


少し大げさにも見えるが望はとても興味深そうにしていた。リリアンが何気なく提案した遊園地だったが人の混んでいるところを避けるという意味ではこの時期の遊園地は絶好で、室内の施設も充実している遊園地を選んだようだったので問題なく楽しめそうだった。実際、入場してから殆ど並ばずに室内のアドベンチャーが体験できた。


「「うわ~!!!」」


まるで姉弟のように息の合った声を上げるリリアンとジェシカ。彼等は迫ってくる奇妙な生物に驚いていたのである。勿論それはCGで両者とも分っているのだが、迫力があったり造詣が巧緻である為どうしても反射的に声が出てしまうのである。


「カワイイ!!!」


「ちょっとグロテスクね…」


それぞれ違う反応をする望とシェリーもある意味気が合うのかも知れない。奇妙な生物に追い掛けられた後、絶壁から海にダイブして、ファンタジックな色合いの空を飛行するといった眩暈がしそうな展開についてゆくのが大変なくらいだった。


「あぁ…なんか頭がくらくらする…」


「俺も…」


先日から若干体力の無さを露呈し始めているリリアンと慣れていないもので疲れてしまうジェシカ。鍛えていたりする残りの二人は涼しい表情である。それから同じく室内のゲームセンターのような場所で筐体のゲームを地味に楽しむ一同。望も仕事の合間に少しばかりゲームを嗜んでいるようで、少し古めだがやり応えのある落ちものゲームで好プレイを見せる。


「みんなゲームが好きだっていう共通点があったのね」


リリアンはそんな何でもない事を嬉しく思った。この辺りになると当初の目的の事よりもいかにみんなで楽しむかの方が重要になってきていた。純粋に同じ事で楽しめる友達ができた事が嬉しいのである。ちなみにシェリーとジェシカは本格的なレーシングゲームや格闘ゲームで対戦していたのだが、ここでも相変わらずシェリーの意地の悪い妨害作戦やトラップが行われていた。


「シェリー、ズルいよ!!」


ジェシカは憤慨する。レース中、シェリーが突然ジェシカに関係のない話を振って集中力を途切れさせたり、格闘中ハメ業に近い攻撃でジェシカのキャラクターをいたぶる。この時ばかりは手加減なしで、やや「S」っぽいところを覗かせるシェリー。


「まだまだね。これを躱せるようになったら一人前よ」


それを聞いたジェシカはプレイに集中していたので深く考えず云う。


「一人前になったらどうなるの?」


「…一人前になったら…」


と何を考えたのかシェリーは一瞬ぼーっとしてしまい、ジェシカに隙を与えてしまう。気付いた時には既に遅し、鬱憤の溜まっていたジェシカにコンボを決められ、シェリーは一敗を喫した。


「やったぁ!!」


「く…妨害とはやるわね、ジェシカ!!」


この試合を眺めていたリリアンは、


「いや、どこが妨害なのよ…」


と冷静につっこんでいた。その後定番だがあまり乗り気でないシェリーを引っ張って全員でプリクラを撮ったりした。


「こういうのは本当に苦手なのよ…」


シェリーは愚痴をこぼす。だが僅かにニヤついているのを見ると内心は有名人とかジェシカと一緒に撮影できて嬉しいのではないだろうか。室内はそれくらいにして、後は一通り面白そうな乗り物に乗ってみようという事になった。ここではジェシカが本領発揮なのか迸る好奇心に任せて、次から次にチャレンジしてゆく。数少ない絶叫系であるジェットコースターも全く怯まず、お気に召したのか一度目はリリアンと二度目はシェリーと一緒に乗った。


「よく乗れますね、あんなの…」


望は信じられなそうな顔をしていた。そんな望もメリーゴーランドを見てうっとりしている。


「ああ、ああいうメロディーはいいですよねぇ…」


「なんか不思議な感じ…」


ジェシカは木馬が廻るその光景時代を何といったらいいか分らない様子だったが、望のいう事も分るような気がするのだった。結局ジェシカは望と一緒にそれにも挑戦してみたのだが、


「なんか不思議な感じ…」


と乗る前とまったく同じ感想だった。そして日の入りも早い夕方近くになって、女性陣がそれとなく最後に取って置いた乗り物がある。観覧車だ。駐車場からも既に遊園地のシンボルとも言える大きくカラフルな観覧車は見えていたのだが、近づいてみるとやはり大きい。


「これ、いちばん上まで行くんだね」


初めて見るジェシカも仕組みはすぐ分った。


「じゃあジェシカ、一緒に乗りましょう」


ここで抜け駆けをしたのはシェリーこと立華京子だった。ジェシカの手を引いてさっさと観覧車に乗り込むと、呆気に取られるリリアンと望をよそに二人っきりになってしまった。後にリリアンがシェリーに話を訊いたところによると、


『望がデートしたんだったらあれくらいは許されるべきだわ』


と答えた。取り残された二人はお互いに見つめ合って微妙な表情ではあるが流れで二人で観覧車に乗る事にした。


「なんか、リリアンさんと二人っきりっていうのもちょっと緊張しちゃいますね」


「なんとなくね。照れくさいかな…」


そしてどちらからともなく「ふふふ」と笑いあう。すると遠くの情景を眺めながら静かに話が始まった。


「あの時」


「え?」


「ジェシカが唄ってた時にさ望さん何かを言いかけたような気がするけど、ジェシカがまるで…」


何かを察するように望はその先を言った。


「まるで、『あの人みたいだな』って言おうとしたんです」


「ボーカルのね…」


「ええ。リリアンさんもそう思いました?」


「なんとなく唄ってるときは、声が似てるって言うのもあるのかしら」


望は頷いた。今は多分この空の向こうにいるであろうその人は、この夕焼けを見て『茜色だな』と思ったのだろうか。そんな事をリリアンは考えていた。一番高い所に来たとき、ふとぼんやりと夕陽を見ている望を見る。彼女は赤く照らされている。それがまるで絵画のようで<同性だけど凄く素敵な人だな>と思った。するとこちらを見て、何か凄いものを発見したような表情になった望はこう言った。


「私『カワイイ』を目指してたんですけど、ちょっと今揺らぎました。『大人で、素敵な女性もいいな』って…」


「え、なんで?」


すると意地悪をするような笑顔で言う。


「ヒミツです!!」


<その表情がまさに『カワイイ』んだけどなぁ>と思うリリアンだった。観覧車は周りながら下降し、二人が降りるとジェシカとシェリーが待っていた。


「二人で何話してたの?」


リリアンがシェリーに訊ねた。


「秘密よ!」


<その表情がまさにかわいくないんだよなぁ>とリリアンは思った。
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