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そらまちたび ⑨

湯に慣れていないのもあって30分程ですっかりのぼせてしまい最初の入浴を終る事にした。片山さんはもう少し浸かっていたいとの事だから一人で上がり、浴衣を着て『男湯』と書かれてある暖簾をくぐって廊下に出る。出て左にゆくと休憩室があったのでそこのマッサージチェアに腰を下ろす。チェアは二台あったのだが、隣に置かれたもう一つには顔に白いタオルを掛けた女性が座っていて、そこそこ振動を強くしてマッサージをしているようだった。こういう時にはあまり見てはいけないなとは思ったのだけれど、スイッチを入れ立すぐ後、隣から声がした。

「あら、どうも」


「あ、すみません。起こしちゃいました?」


緩慢な動作で彼女はタオルを取る。するとその顔立ちからその人が日本人ではないという事が分った。髪の毛こそ黒っぽいけれど、明らかにヨーロッパの方の国の人によく見る目鼻立ちである。最近では外国人は結構見るし話した事もあるのだけれど、相手が流暢な日本語だった事、この町があまり外国人がいるように思えなかった事、彼女が綺麗な青色の瞳をしているのもあり少しドキりとしてしまって慌てて、


「あ、外国の方ですか?」


と質問をしてしまった。


「ええ、出身はね。でもここに来て2年以上は経ってるから。ところで今日はお一人?」


「いえ、知り合い…というか知り合ったばかりの人に案内されて」


「へぇ、じゃもしかしてこの町は初めて?」


「はい、そうです。今日来たばかりなんですが、色々なところを廻りました」


「そうなのね。温泉気持ち良かった?」


「ええ、とても。結構熱いのでのぼせてしまいました!」


「そうよね。温泉にはまって時々来てるんだけど、のぼせちゃうからこういう所に来て涼んでいるのも好き
なの」


女性は楽しそうに言った。今日は平日だし、多分本当に温泉が好きなのだろう。外国人だけれど何となく気が合いそうだなと思った。しばらく二人でリラックスして雑談していると向こうの方から人が入ってくるのが見えた。それは今温泉から上がったばかりの片山さんだった。


「あっ、マリアさんじゃないですか!」


片山さんは隣の女性の方を見ていかにも驚いたという感じの大声で言った。「マリアさん」と呼ばれた女性の方もこれに対して、


「ああ、片山くんじゃない。奇遇ね」


と言った。どうやら知り合いらしく僕に紹介してくれる。


「君にも紹介するよ、こちらさっきこの町でラテン語塾を開いている外国人の女性がいるといったけど、彼女がそのマリアさんだよ」


「ああ、そういえば!」


確かに聞いたばかりだった。紹介されたのでさすがに名乗らないといけないと思ったので「『安斎翔』です」と自己紹介する。


「ショウ君ね。俳優みたいで格好良い名前ね」


『マリア』さんはそう言ってくれるが、自分では同世代の人であまりこういう名前が居なかったのと、よく名前と性格が一致しないと言われるようなどちらかというとおっとりしたタイプなので時々気になることがある。


「マリアさん今日はどうして温泉に?」


片山さんは多分平日のこの日にマリアさんにここで会うと思ってなかったのだろう。不思議そうである。


「『ガララ』の一件以降ね温泉にドはまりしちゃって、友達とここに来たらリピーターになっちゃったわけ」


「なるほど…。え、いま『ガララ』って言いましたか?」


「ええ、言ったわよ。私も一応関係者だったの。あれ、言ってなかったっけ?」


「いや、何かに関わったという噂は聞いてましたけど、まさか『ガララ』とは…」


『ガララ』という単語が気になって僕は思わず訊いていた。


「どんな風に関係者だったんですか?」


するとマリアさんは難しい顔になって、


「う~ん、この話をすると長くなりそうなのよね…でも話したいし…」


「じゃあこの後一緒の部屋で食事するというのはどうですか?女将さんに言って都合付けてもらえると思います」


「おお!さすが片山くん」


という事でマリアさんと三人で夕食を取る事にした僕等。
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