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徒然ファンタジー59

三月の末頃から各地で桜の花が見られるようになった。地域によって平年よりも少し早いか遅いかはあるけれどリリアンが見慣れている光景である事には変わりなかった。ジェシカに見せたいのと写真の練習も兼ねて満開の場所を狙って数ヶ所巡ったのだが、ジェシカもピンク色の花が一面に咲き誇る光景を見てとても驚いているようだった。花見についてはちょっとした女子会のものがあったのでリリアンは参加したが、当然ジェシカはお留守番という事になり、あとで「俺も行きたかったなぁ…」と残念そうに言われた。テレビのニュースを始め、様々な番組で花見について取り上げられているのを見て大体の事は分ったらしい。生憎、次の週末には早くも散り始めていたので、


「じゃあ来年行きましょう」


と約束をした。その時ジェシカが


「来年も咲くかなぁ?」


と言ったのが印象的だった。四月の中旬になるとシェリーから「こっちは今満開よ」とメールで桜の写真が送られて来た。シェリーの住んでいるN市の方は東北なので時間差があるというのも面白かったが、そこは桜の名所が多いらしく、少し自慢しているような具合に沢山の場所の色んな種類の桜の写真が一遍に送られてきたのでリリアンとしても対抗してみたくて、自分の撮った自信の一枚をシェリーに送り返した。


『これはズルいわよ!』


というシェリーの反応。実はその写真にはジェシカが桜の木の下で手を広げて小さな花弁が落ちてくるシーンを映したものである。まるで映画のワンシーンのような構図だったのと、ジェシカのうっとりしている表情もあって幻想的な雰囲気が漂っている。


「ふふふ…」


なんとなく褒められたような気分になる。折角なのでA4サイズ位にプリントアウトして額に入れて部屋に飾ってみた。それを見たジェシカが、


「この前みんなで撮った写真も飾ってみようよ」


と提案した。それはシェリーや望と遊園地で記念に撮ったものだろう。ついでなのでシェリーの「店」の前で撮ったものも同じように飾ってみる。何となく部屋が華やかな感じになった。その数日後、今度は望から写真が送られてきた。その文面は、


『今、M県のS市に来ています。ここは桜が満開ですよ!!』


であり、桜の木が映っているのはシェリーと似たようなものだったが場所がF県よりも少し北のその場所の雰囲気はそことは少し違うように感じた。主に人の多さだが、ちょっと都会とでも言うのだろうか。<いいな~>と思って見ているとすぐ後に望から別のメールが来て、


『実は仕事先で猫成分とジェシカ君成分が欠乏していて、もしよろしければ猫ヴァージョンと人間ヴァージョンのジェシカ君の写真を送って欲しいのですが(-人-)』


とあった。<そこまで京子と同じじゃなくてもいいのに>と思ったが、自分の写真を人に見せるのも悪くないと思い始めていたので快諾し、先程の幻想的な一枚と、いま春の心地よい温かさのためうとうとしているジェシカを猫に戻して一枚撮ったものを送る。瞬時に反応があって、


『うわぁ~最高です!!どっちも良いですね!!』


と上々の反応だった。寝ている『我が家の猫』の背を撫でながら、今はただの机になっているコタツ付きのテーブルでネット上にあるよその家の猫の写真を見てニヤニヤする。久しく忘れていたけれど、猫好きの自分としてはこういう写真で癒されるんだよなと思う。


次の日は日曜でお昼ごろジェシカと公園に行った。少し前までそこにも桜が咲いていたけれど今はもうその木が緑になっている。


「季節の移り変わりよね…」


とリリアンがつぶやくと、「ああっ」とジェシカが何かに気付いたように声を上げた。


「どうしたの?」


「分った!『桜が枯れた頃』って、今頃なんだね」


「うん?桜が枯れた頃だけど…あ…もしかして」


「そう、あの曲」


リリアンはジェシカが言わんとしているのはこれまでずっと聴いてきたフジファブリックの『桜の季節』という曲だった。


「『桜の季節過ぎたら』…」


気が付くとリリアンは最初のフレーズを口ずさんでいた。


「『遠くの場所に行くのかい』」


それに続けてジェシカが小さく唄う。


「こうなったらカラオケ行くしかないよわよね!」


「うん!!」


そのままカラオケに行って、2人で3時間熱唱していた。ジェシカもキーボードの練習の甲斐あってかレパートリーも増えていて、無理だとは思ったけれど『大宮望』の曲にもチャレンジしていた。盛り上がってきた絶妙のタイミングで『桜の季節』を入力した。演奏と一緒に始まったPVを見て何となく切なくなって泣きそうになったけれど、彼等は今も頑張っているんだという事を思い出して堪えた。そして、ジェシカは知らなかったけれど同じく英語で4月という意味でぴったりな『エイプリル』という曲をリリアンは歌ってみた。


『その時僕は泣きそうになってしまったよ』


のところで声が詰まってしまったけれど、やっぱりいい曲だなと思った。ジェシカは曲の歌詞を見て「これも春の曲だったのか」と感動していた。家に帰ってからフジファブリックの最近の活動を検索してみると最近ライブDVDが発売していたようなので思い切って購入する事にした。見てみて<新体制になってからも変わらずフジファブリックしているな>とちょっと自分でもよく分からない事を考えたりしたが、ある意味でこういう所に言った事がないリリアンとジェシカにとって望のコンサートの予習にもなったようである。



そんなこんなで四月は流れるように過ぎ去り初夏の匂いもする季節になった。世間的には中だるみしてしまう時期だけれどリリアン達にとっては大切なイベントが控えている。
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