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そらまちたび ⑩

片山さんが女将に相談したところ、マリアさんと一緒に夕食を用意してもらえるようになった。6時頃から夕食という事だったので、30分程時間があったのでテレビを付けて地元のニュース番組を見ながら3人で会話をする。


「ショウ君はどういう仕事をしてる人?」


マリアさんが遠慮なく訊ねてくる。別に隠すつもりではなかったので、


「印刷関係と言えばいいんでしょうか。会社は小さいですけど」


「あ、そうなんだ。製本とかもしたりするの?」


「そんなに多くはないですけど、少数部の印刷なら」


すると片山さんが意外そうな顔をして言った。


「なんだ、そうだったのか。まあここからは遠いところなので仕事でお世話になるのも難しいと思うけれど…」


仕事で少しばかり編集の作業もあるのでライターの人と話をする事も無くはない。ただこの辺りの人になるとまずそういう話もないだろうと思う。マリアさんはちょっと声を潜めて、


「ちょっと聞きたいんだけど、写真集とか出版する場合には、そのどれくらい掛かるのかしら?」


「え、時間ですか?金額ですか?」


「これよ…」


と言って比較的若く見える女性がするととても違和感のある『お金』のマークを親指と人差し指で作って見せた。僕自身若干引き気味になったが、これまでの経験上で言える数字を伝えた。すると明らかに驚いた様子で、


「うわ…やっぱりそれくらい掛かるのね…。悩むわ…」


と呟いた。何について悩んでいるのか気になったので、


「何か作る予定なんですか?」


と訊いてしまう。


「実はこれも『ガララ』に関係する事なの」


マリアさんが言ったのでそこから先ほど彼女が説明してくれる予定になっていた話が自然と始まった。マリアさんは『ガララ』という怪獣がこの町に出現した時から起こった事を詳しく説明してくれた。彼女と飲み仲間の男性、「山田さん」と「高良さん」の二人が出てきたあたりからとても興味深い話になっていって、地元の工藤財閥の令嬢に出会った辺りからの話は既におじいさんから聞いていたのでそこで自分の中でも繋がっていって、大体のあらましが分ったところで僕は、


「へぇ~!!凄いじゃないですか!!」


と叫んでしまった。つまり僕は運良く『ガララ』の関係者に出会えたという訳である。ここに来るまでその話は不勉強故知らなかったけれど、当事者が一生懸命解決策を模索していったところは感動してしまう。それが一か月前の事だから、とても意外な感じがする。マリアさんによると彼等で数か月前に立ち上げた『ガララ応援隊』というブログでの活動が起点となって解決に持っていったそうだが、そのページが今でも閲覧可能らしい。一件落着した今、ガララは県内の牧場にいるらしくその写真を時々撮りに行って『公式サイト』という名目でブログに公開しているらしい。タブレットで確認してみると確かにその名前で見つかったし、コメントのやり取りもマリアさんが言った通りだった。


「それで写真集というわけなんですね!」


「そうなの。まあ撮っている人がタカラくんの弟でいま高校生なんだけど、うかうかしてるとパトロンに…」


「あぁ、噂の彼ですね」


片山さんは知っているようだった。


「どういうことですか?」


「お嬢様がその高校生に夢中…というかゾッコンだそうで、まあもしかするとパトロンになるかも知れないね」


「ああ、それもおじいさんに聞きました。ここらへんでは有名な話なんですね」


その辺りについてマリアさんが詳しく説明してくれたが、工藤家の令嬢はもともと高良さんの弟である「光太郎」くんという人の撮ったガララの写真を気に入って『ガララ応援隊』の支援を名乗り出たそうなのだが、今ではただ光太郎くんに興味があるという事が誰の目にも明らかなのだそうである。


「色々凄いですね…マリアさんの話も分かりました」


というかマリアさんの現金な性格も分かり易かった。そして色々訊いているうちに豪華な夕食が運ばれてきた。皆で美味しく頂いたのだがやはりメインは地酒で、もともと飲み屋で出会ったというマリアさんと片山さんは相当「ざる」なようで、少し自信のあった僕もその量にだいぶクラクラしてくるくらいだった。ただ、全国的にも賞を取っているという地酒はかなり美味で、様々なものを飲み比べしてみると本当に味が違うので全然飽きなかった。


9時ごろまで酒盛りは続いたのだが、折角の温泉という事でまた別の湯に浸かろうという事になった。三人とも大分飲んでいたのでさすがに湯上りはぼんやりしていて、またあの休憩室に行って今度は扇風機に当たっていたりした。部屋に戻ると既に布団が準備されていて、それを見たらもう眠くなってしまったのでそこで眠る事にした。


こうして僕のとっても密度の濃い旅の初日が終った。
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