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徒然ファンタジー73

図書館に隣接している歴史資料館については評価が別れた。ジェシカのように歴史的資料自体見るのが初めてだと何であれ感動になるのだが、リリアンや望は同じようなものなら学生時代に授業の一環で見学していたりするので、あまり区別がつかない。対して朝河氏はばりばりの『N市民』と言って良いし、歴史的な事実を比較する上で現物の資料は特に重要だから、非常に興味深そうに見ている。


「う~ん。ここも違うなぁ…デザインが違うというのも面白いね」


眺めていたのは甲冑だがそういう物の配置も違うらしい。


「まるで間違い探しをしているようだよ」


朝河氏は言ったがリリアンはそういう世界だったら行ってみてもいいかなと思ったりする。ただ彼の話を聞く限りだと移動の際のリスクや無時に帰ってこれるかとかが非常に心配である。そう考えてみると、朝河氏と言うのは穏やかに見えるけれど相当大胆な人なのではないかと思ったりする。そんな事を考えながら朝河氏を見ていると、


「リリアンさんはこれについてどう思われます?」


と甲冑について突然感想を求められた。『古そう』という意外特に何も思っていなかったのもあって少し焦って、


「ええ、凄いものだと思います」


とやや誇張して言ってしまった。すると朝河氏は満足そうに言った。


「そうですよね、世界は違えど『歴史はロマンだ』というのは確かですよね!」


分らなくもないが歴史的な物については詳しくないので実感がないリリアン。彼女は密かにその後ろで小さく欠伸を噛み殺した望を見逃さなかった。目が合って、リリアンが見ていた事に気付いた望はお茶目にウインクをした。資料館の展示物については基本的に大城氏が紹介してくれたが、彼女たちにとって最も興味深いのは歴史的な展示物ではなく入館してすぐ目に留まる地元の大きな祭りである『ちょうちん祭り』の山車を再現したと思われるものであった。退館する際もそこで立ち止まって、


「京子に聞いたけど、お祭りは興味ありますね」


とリリアンが言った。大城氏と朝河氏は目配せし合いながら、


「「是非見に来て下さい!!」」


と声を合わせた。<世界が違っても、そこは同じなんだ>と妙な感心があった。その後、再び商店街を少し歩いて位置的に駅から坂を登った辺りにあるN市の神社に入ってみる。パワースポット巡りにハマっているリリアンとそれに同行していたジェシカのテンションが目に見えて上がる。


「うわ~ここにもあったんだね、神社!」


「前来たときは素通りしちゃったもんね!」


ジェシカとリリアンは以前N市に来たときにここを通り過ぎている。その時はまだ神社巡りをしてなかったので新たな発見だった。


「ここは『ちょうちん祭り』とも関係するんですが、地元の人にとってはやっぱり除夜の鐘がなる頃に集まるイメージですね」


大城氏は言った。


「神社の場所も同じだね。あっちの方ではしばらく行ってないから丁度良いかな」


「え…それじゃ駄目ですよ!」


意外にもリリアンが注意した。


「神社と言うのは祀られている場所に行くことに意味があるんですし、そちらの世界の神社とは祀られてる神さまが違うかも知れませんよ?」


「え…?そうかな…?」


そしてリリアンの指摘通り、神さまは同じではなかった。と言っても古事記に載っているような神話そのものの筋は同じらしく読みも殆ど同じようなのだが名前というか宛てられている漢字が微妙に違うとの事である。それに気付いたのが、そもそもこの神社に祭られている神さまの名を調べた時である。


「なんだろうね、この違和感は…でも親戚みたいなもので良いんじゃないかな?」


朝河氏の妥協にリリアンがしぶとく攻勢する。


「ダメですよ!そもそも『世界』とか日本を見守ってくれているのが神さまなんだから、異世界の事までは面倒見切れませんよ!」


その発言がツボだったのか堪えきれずに笑い出す一同。


「何がおかしいの!?」


望は解説する。


「いえ、神さまと異世界の関係を考える事って滅多にないと思ったので…でも確かにそうかも知れませんね、ふふふ」


続いて大城氏が、


「リリアンさんって結構ユーモアがある人なんですね!」


とリリアンを評した。彼女は不本意そうな顔で、


「いえ、真面目に言ってるんですけど」


と言って更なる笑いを誘っていた。結局、リリアンとジェシカの先導でしっかり拝礼を済ませ、朝河氏と望は記念におみくじを引いてゆく事にした。


「ああ、末吉ですね。悪くないけど、良くもないですね」


こちらは朝河氏。望は開いた瞬間嬉しそうな表情になって、


「縁起がいいですね!!大吉です!!」


と言った。年頃なのもあって『恋愛運』の方を口に出してじっくり読んでいた。彼女に


「リリアンさんは引かないんですか?」


と訊かれたので、


「いいの。私そういう引きは弱いから」


と返した。異世界の人に偶然引き当てられた事を考えるとやはりあまり参考にならない意見である。一応ここで見回りたいところは全て廻ったらしく店に戻る途中で、また和菓子屋に立ち寄ってちょっとしたお土産を購入する。そこでは若い女性の店員達が丁寧に接客してくれた。有名人もここを訪れているらしく望もその仲間入りをしたのだが、店員には気付かれなかった。というか今日一日で気付いた人は居ないようだった。店を出た時望が、


「う~んまだまだ頑張らないとですね…」


と呟いていたのは後で考えてみるとそういう事だったのかも知れないとリリアンは思った。店に戻ったのは15時半。扉には「OPEN」の文字盤が掛けてあったので店を開けていたらしかった。陳列をする為に屈んでいるシェリーは一同が戻ってきたのを確認して、


「お帰りなさい」


と言った。それに対してジェシカと望が、


「「ただいま」」


と声を合わせた。予定だと望は17時にはF市に戻っていなければならないらしい。電車でも良かったが色々考えた末大城氏が、


「じゃあ、私が送ってゆくというのはどうでしょうか?」


と名乗り出たので任せる事にした。


「よろしくお願いしますね!大城さん!」


望の爽やかな笑顔を見て大城氏が、


「自分の車に乗ってもらうのもなんかちょっと気恥ずかしいですね…」


と照れくさそうに言った。こういう事ができるのも今日の案内で大分打ち解けてきたからこそであった。シェリーが少しイジワルをして、


「あら、良かったじゃないの!朝、残念そうにしてたもんね!」


と言うと彼は、


「立華さん、勘弁してくださいよ~」


と少し情けない声を出したが、微笑ましくなるやり取りであった。
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