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徒然ファンタジー76

水曜日。その日の仕事終わりに書店などに向かうつもりだったのだが、昼に朝河氏から再びメールが届いた。なんでも朝河氏の方でも書籍を探すためにF県のK市の大型書店に行ってみたとの事で、探していた4冊のうちの2冊は見つかったとの事。残り2冊なら、数店寄れば多分見つかるだろうと思われた。というわけでその日の夕方に一店に寄り一冊を見つけ、もう一つの用事を別の所で済ませてきた。


「お帰りなさい」


ジェシカは嬉しそうに出迎えてくれた。読んだ本の感想を考えたいからという理由で今日も朝、人間の姿にさせていたのである。


「ただいま。どう?書けた?」


まるで小中学生に読書感想文が書けたか尋ねるようになってしまっていたが、そういうものが初めのジェシカはさぞ苦労したと思った。実際、400字詰めの原稿用紙を渡していたので同じ気分だろうと思われる。


「一応」


表情を窺うと少し自信があるようである。


「どれ、見せてみて」


リビングで見せてもらったのは400字詰めぴったりに平仮名多めで書かれた感想文である。確かに『魔女の宅急便』も思春期頃の人が対象らしく平仮名が多い作品なのでそれと似ているかも知れない。前は大人びているようにも見えたジェシカだが、こういう所はまだ幼いのかなとも思ったりしながら読んでみた。が意外や意外、


『キキとジジがおたがいの事を分りあっていて良い仲だなと思った』


とか、


『キキがいっしょうけんめいで、だんだん町の人もたよりにし始めて里帰りしても町の事が気になりはじめているのが魔女がその町にとけこむという事なのかなって思った』


など、しっかり読んで自分なりに考えなければ書けないような考察などがあって文章自体もしっかりしていた。よく見ていたアニメとは違う部分があるのでこの感想を読むと自分でも原作を読みたくなってくる。


「凄いわ良く書けているわよ、ジェシカ!」


「本当!?ありがとう」


「よし、そんなジェシカ君にはプレゼントをあげよう!!」


と言ってリリアンがまず紙の袋の中から取り出したのは『魔女の宅急便』の2巻と3巻であった。


「うわ~!!これって続きでしょ?嬉しいけど、大変だなぁ…」


流石に一生懸命読んだのでいきなり読む気にはならないという感じである。だが大切そうに手にとって表紙を眺めている。リリアンが用意したのはそれだけではなかった。紙の袋にはまだ何か入っている。


「こっちがメインよ!これ!!」


「え…?それってマイケルが持ってたもの?」


それは確かに朝河氏が持ってきてくれたものとカタチが同じである。しかも彼は現在、望からもそれと同じようなものを借りている。タブレットであった。


「通話はアプリでしかできないやつだけど、私がスマホとセット契約で結構安かったからネットは何処でも…って説明しても分らないか…」


リリアンはタブレットでインターネットは出来るような契約にしたのである。勿論名義は彼女自身のものだが、これならばアプリを使って特定の人となら通話できるしジェシカには丁度良い筈である。


「そろそろ必要かなって思ってね。望や京子、それに今なら朝河さんとかともメール出来るよ」


「そうなんだ!うわ~嬉しいな」


ジェシカも既にタブレットがどういうものか分っているし、スマホのアプリでゲームなどをさせてもらっている事もあったので使い方も大丈夫そうである。ただ気をつけなければならないのは猫の姿に戻った時に持てないのでちゃんと管理させる事である。ただ、そのタブレットを持っていればジェシカを少し遠くに外出させても位置が分るので安心でもある。


「ジェシカ、とりあえず、みんなにメールを送ってみて設定は大丈夫だから」


「うん。やってみる」


リリアンが既に数日前集まったメンバーのアドレスを登録していたので、それを選択させてメールを作成させる。


「なんて送ろうかな…っていうか…」


取り掛かろうとしたとき、ジェシカが一瞬何かを考えた。


「今日、ずっと文章を考えてたんだけど…」


確かに感想文を含めればずっと考えている事になる。リリアンは少し苦笑して、


「大丈夫よ、メールの方はそんなにしっかり考えなくてもいいんだから」


「そうなの?じゃあ、『こんばんは、ジェシカです』でいいかな?」


「じゃあそこに、『ご主人さまにタブレットを買ってもらいました』って付け加えて」


アドバイス通りに作成して一斉送信。数分後には一同からそれぞれ返信があった。


「うわー!一杯来た!!」


「どれどれ?先ずは京子か…次は望、朝河さん、大城さんね」


シェリーのは『本当!?じゃあ毎日メールするね!』とあり、望は『じゃあ私もメール送りますね(^o^)』という返信、朝河氏は『そうですか、メールありがとうございます』とそれっぽい。大城氏は『じゃあ「そら」の写真とか送りますね』と毛色が違う。


「毎日って何よ!私の方は三日に一遍くらいじゃない!!」


リリアンはシェリーに文句を言いたくなったが、猫とは言えジェシカ宛てのメールなのであんまり言い過ぎるのも良くないような気がする。ここでジェシカから要望があった。


「この名前のところ、『立華京子』ってシェリーだよね。直せないかな?」


「ああ、アドレスの編集で変えられるわよ」


リリアンは少し操作して「ここをこうして…」とジェシカに教える。これで『立華京子』は『シェリー』に変わった。ジェシカも同じように操作して『大宮望』を『望』、『朝河舞蹴』は『マイケル』に変えていった。問題は大城氏だがやはり通例通り『大城博』は『博』になった。


「そういえば、私のはどうする?」


リリアンは自分の名前の表示について訊ねた。ジェシカは迷いつつも、


「『ご主人さま』でいいのかな?」


と訊いてきた。まあリリアンにしても父や母は「父」、「母」だし、それでもいいような気がしたので頷いた。あとは通話の事を説明する。アプリは既に入れてあるのでリリアンのスマホの方にもインストールして試してみる。


「あーあー、聞こえますか?」


「はい、聞こえます。大丈夫だよ、ご主人さま」


「OKみたいね。じゃあ他の人にもアプリをインストールしてもらえば通話が出来るから私から連絡するわ」


「でも何か大きくて話すのは大変だね」


「そうねぇ。基本的にはメールとかの方を使うようなものだからね」


「あ、なんかさっきの事、ずっと前にも同じことしてたような気がするね」


「通話の事?いつだっけ?」


「俺が人間になれるようになってすぐの時だよ。俺がご主人さまの「すまほ」をもって外に出た」


「ああ、そういえば…」


リリアンもその時の事を思い出した。確かスマホが何なのかを質問してきたジェシカに説明する為にそうしたのだ。


「なんだか懐かしいね」


しみじみと言うリリアン。「そうだねぇ」と答えるジェシカ。ちなみにこの後、リリアンが通話アプリの事を教えたら、望、シェリーと立て続けにタブレットにコールがあった。N市にいる時に既に一杯話しているのでネタなど無い筈なのだが、とにかく他愛もない話で長時間通話するあたり二人とも強者だなと思うリリアンだった。
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