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大掃除

日曜日、立華さんがリリアンさんの家を早めに出たという事で、10時頃『店』を訪れてみるとしっかり『OPEN』が掛けてあった。入店すると笑顔で迎えてくれる。

「いらっしゃい。慌ただしかったけど、今日からは通常営業になるから」


「そうですね。あ、そういえば車の中に絵と『猫の置物』を積んでありますので今持ってきますよ」


そう言って車から荷物を取り出す。立華さんはさっそく絵を元の位置に掛けたが、やはりここにあるのが相応しいような気がする。絵の事で息子さんに訊いた話を立華さんに伝える。


「そうなの。『夢の中』でね…一般的な言い方をすれば想像力豊かな人だったんでしょうけど、独学で描いたような絵には見えなかったわね」


そう言いながら立華さんは『白猫の置物』を同じくカウンターに置いてある『黒猫の置物』の隣に置く。こちらもあるべき所に戻ったという感じだろうか。すると立華さんが私に確認するように、


「じゃあ本当に『返却』でいいのね?」


と訊いた。もし所有には意思が関係するとすれば、しっかり「返却する」と言った方が良いだろう。


「はい。返却で」


「分ったわ。まあこの後に何かが起るとは思えないけど、もしかしたら猫に変身するところとか人間に変身するところとかはこれでしっかり見れるかもよ?」


「そうだと良いですね。でも確かにその置物には幸せにしてもらったような気がします。所有しているだけでしたがこうして色んな出会いもあったし経験も出来ました」


「そういえばそろそろ一年になるのよね。貴方が最初に来た日もそうだけど、店をオープンした日が実は来週でね」


「ああ、そうですね!どうですか、商売の方は?」


それについては立華さんは少し苦笑いである。


「現実を突きつけられたって感じ。だからこそ今日もこうして店を開けて挽回しようとしてるんだけどね」


「思うんですが」


私はちょっと思いついたことを述べる事にした。


「ここで飲むコーヒーが結構好きなんですが、店と同時にそういう場所にする事って大変なんですかね?」


「う~ん…」


立華さんはかなり悩んでいる。


「実はそういう事を考えた事もあるんだけど…確かに悪くないわね」


「他にも何か手伝えることがあれば協力しますよ。何しろ『関係者』ですからね」


関係者という言葉は望さんの表現だが結構気に入っている。立華さんも目を細めにこやかにほほ笑んでいる。


「あ、そうだった!」


すると表情が一変した。何かを思いだしたようである。


「この前絵…と言ってもここに飾ってある別な絵を描いた絵描きさんに会った時に、大城さんの希望する絵のイメージを伝えたら『描いてもいい』と言っていたわ」


「え、本当ですか!?嬉しいなぁ」


「それでモデルになる猫の写真でも良いけれど、『実物を見たい』との事よ」


「そうですか。じゃあ私が行った方がいいのか来てもらった方が良いのか?」


すると立華さんは小さな紙片を取り出して、その絵描きさんの住所と電話番号をメモして渡してくれた。


「直接話してみるといいわよ。いい人だし、アトリエも見せてくれるかも」


「分りました。あとで連絡してみます」


その後、立華さんと朝河さんが「今何をしているのだろうか」とか「いつかまた会いたいですね」というような事を話しながら少し『店』の商品を物色する。初めて会う絵描きさんに会うときに折角なので何かプレゼントできないかどうか考えていたのである。それを立華さんに言うと、


「お勧めはこの『瓶』ね。実は絵の題材に良いってその絵描きさんがちょっと欲しそうにしてたから」


それはごく普通の瓶なのだが確かに静物画でこういうものが描かれているのをよく見る。


「じゃあ、それを」


「毎度ありがとうございます!」


しっかり商売人の顔になる立華さん。家に戻って早速絵描きさんに電話してみると立華さんから話が行っているのか会話がスムーズで『出来れば猫を連れて家に来てくれると嬉しいです』と言われた。先方は都合のいい日を教えてくれたが基本的に平日作業をしている時の方が対応しやすいとの事である。実は小さなお子さんがいるらしく、土日は地味に家族サービスをしなければならないらしい。例の絵を描いた人とは正反対なのでちょっと面白かった。その人も市内で、水曜日が野暮用で休みを取っていたので用事を済ませてから向かう事にした。


それからは「そら」と目一杯じゃれ合った。色々な予定があるのもそれはそれで良いのだが、「そら」と思う存分スキンシップを取る事は一種の癒しであると思うのである。夏を前にどんどん活発になる「そら」。ただ、「そら」と一緒に和室の床で寝っころがってみると白い毛がかなり抜けているのが分った。こういうのも猫飼いの悩みだが、それと同時に朝河さんが帰った後に掃除をしていなかったので思い切って大掃除をする事にした。


これがなかなかハードで、ちらっと和室の押入れを開けた時にガラクタなどで処分に困るものが見えて分別しているうちに日曜が終わってしまったという感じである。
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