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ここまで来た

逆に何かがある日の方が珍しいだろう。


平凡すぎると言っても、それさえ精一杯の結果だからこれよりも望む事の方が酷ではないのか?ぼんやりとだが満ち足りるという事を覚え始めている。諦めではなく、実に納得するように世の中というのは出来ているようで、誤魔化しの効かない現実に偉大さすら覚えてしまう。


それを確認したところで何にもならない、と思って別な事を考え始める。覚えているほどの事でもないような緩い発想に身を委ね、定刻通りの電車を待つ。風はないが冷たい待合室。老婆という程でもない齢の女性も縮こまって待っている。


『彼女にとって現実とはどんなものなのだろう』


漠然とした思考が一瞬言葉になる。内容からして深くは考えられない。自分には知りようのない事。けれどそんなに違わないのではないだろうかと思ってしまう。


それぞれの人生だから、自分とは違ったところで何か苦しいことがあって、そして喜びもある。



僕の喜びでない喜びがあって、僕の苦しみではない苦しみがある。それら全てに共感できるなど幻想でしかない。もっとも、似たような状況になればおのずと分ってくるだろう。それでも今目の前にいる人を見ていると、「そんなに悪くないぞ」と言いたげな様子だ。



結局、こんな風に待っていればいつかは電車がやって来て、多分良い事もやってくる。その間には今日みたいに何もない日だってあるだろう。時間の掛かる事が、今日もまたじっくり取り組まれているのだと思うとそんなに悪い気がしない。


『でも、電車みたいに定刻通りにはいかないからね』


と自分に言い聞かせた。


「電車来た」女性が呟いた。それは多分自分で確認する為に言ったのだろう。確かにゆっくりと電車が近づいてくるのが見えた。



何処にでもありそうな光景だから、なんだか安心した。自分のこの想いすら、どんな人にでもあり得るだろう。


「ここまでは来たんだもんな」


そう呟いた僕は電車に乗り込んだ。
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