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ATJ あなざー③

何故か知らないが、私は『ケロ子ちゃん』の生みの親であり、自身もそれに扮している(と言うべきなのか?)乙女に招かれて、他の見栄えのしないキャラクターの吹き溜まりというか異界と化している空間、商店街が用意したと思われる待機室で聞きたくもない愚痴を聞いている。


「どうせ、こんなこったろうと思いました。何がキャラクター祭りだ、ただの見せしめじゃないか」

「アンタの方はマシだよ。俺なんて、自治体の予算がなくて、遠くからわざわざ鈍行でやって来てこの仕打ちだぜ」

「ボクなんて、子供にキモチワルイって言われちゃいましたよ」


待機室と言ったけれど、キャラクターの体積で圧迫されていて、まるでサウナ室である。各々折り畳みの椅子にあしたのジョーが燃え尽きた後のような体勢で座っているのは、燃え尽きたというより、ずっと相手にされなくていじけてしまっているところが多いだろう。私が入ってきても、彼等の様子は変わらなかった。何でもいいけど、全員生首をその辺に転がして、頭だけ小さくなっている姿で会話するのは異様な感じがするから、半人半獣は辞めてもらいたい…。だが同じく半人半獣の乙女は、とても満足そうに語る。


「わたし、このお祭りに相当気合入れてきたんです。でもキャラクターの細かい設定を考えてこなかったから、動き方が中途半端になっちゃうんですよ」

「え、、、ええ」

「だからとりあえず、他のキャラクターの真似をしていたんですけど、それだと『愛』がありません!!」

「『愛』ですか…」

「はい!『愛』です!!」


私はこの人がキャラクターに対する熱意のようなものが、『愛』であることに気付いた。そうか、『愛』ってそういうものなのかぁ、と若干引き気味に感心していると、隣からかなり渋い声で、


「お嬢ちゃん。『愛』だけじゃ、キャラクターは『生きて』こないぜ」


とキメ台詞を言うのが聞こえた。何この人、格好いいとか少し思っていると、


「キャラクターがもっとも活き活きするのは、我々が活き活きすること、すなわちギャ…」

「ギャ?」

乙女のキラキラした目に見つめられて、半分だけタヌキの普通のおじさんは

「ギャ…ラ…いや、お嬢ちゃん、やっぱり『愛』だ。『愛』がなきゃだめさ。」


とヘタれた。勿論、ギャランティーと言い切るのもどうかと思うが、ヘタれてしまうのはこの後の展開にあまり良い影響を与えないなと想像された。友人だったら、「ギャラ」と即答しているところだが…。


「ですよね!!やっぱり『愛』なんだ!!」


案の定、彼女は自説を強化し始めた。そしてまたどういう事なのかよく分からないけど、私はとんでもない質問を受けてしまう。


「あの、『愛』って何だと思いますか?」

「あ、『愛』っていうのは…」


遠くで『ためらわないこと』という言葉が聞こえたので、その辺の年代の人が多いのかと思ってしまった。因みに、私は少し外れていて、『ジバン』の方だった。分る人には分る。しかし私は真面目に考え出してしまった。『愛』と言ってもこの場合はキャラクターに対する『愛』だから、子供を見守る親の心境に近く、その心境とは、つまり「その対象がその対象が元気であって欲しいなと願う気持ちとか」。しかしそれでは、十分でないようにも感じられる。彼女が『愛』と呼ぶものは、命を吹き込み、活き活きさせてあげたい、ただそれだけではなく、そのキャラクターが彼女の全てであるように全てを与えたいと、(たとえ一瞬でも)思える事ではないだろうか?それを拙い言葉で説明すると彼女は。


「そうかー!今ので確信しました、わたしには『愛』が足りない。いえ、『愛』を十分に知っていません」

「え?そうかな。十分情熱的だと思うけど…」

「違います。わたしにはまだ恥じらいがありました。それはこの子を『愛』する妨げになっているんです」



恥じらい、というか実際恥ずかしいでしょ…と思ったが口には出さない事にした。彼女はそれを『愛』で乗り越えようとしている。悪気はないのだが考えている私の方が何だか、恥ずかしくなってきた。それと共に、嫌な予感が。
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