迷惑行為
どんなに私が頑張っても無理だろうなって話。うだうだ言って申し訳ないけどちょっと愚痴らせてほしい。だけど理不尽に感じるのってきっと私だけじゃないと思う。
その日私は久々に遠出していた。職場の人間関係とか、どうも有耶無耶なままにされている世の中の問題とかで地味にイラッとする事が多くなって、ちょっとした気晴らしのつもりで自分が知らないところに行きたくなった。晴れてて過ごしやすい日だったから気持ち良く家を出たんだけど、電車で目的地付近に近付くに連れて何というかイメージしていた雰囲気とは随分違ってたからちょっと戸惑ったんだよね。よくよく考えてみると県境のその場所って家の付近と比べると…なんというか湿度が高いような気がしたんだ。
まあなんていうかさこれは私の自論なんだけど『湿度』ってジメッとした感じじゃん。なるべくならカラっとして欲しいじゃん。多分だけど、ジメッとした雰囲気に呑まれちゃうと考え方までそうなっちゃうっていうか、そんな感じ。
でね私本当は地理に弱くて県境の町の名前は知ってたけど駅を降りたらさ、早速迷っちゃったの。というかその日は何処でも良かったからしっかり計画とか立ててなかった。でも一応その町に大きい神社があるのは知ってたからそこ行こうと思ってたの。とりあえず人に訊ねればいいかなって、テキトーに…って言ったら失礼なんだけど、なるべく『適切』に駅で誰かを待ってたらしかった「親切そうな」メガネを掛けた服装からしてキッチリしてそうなお兄さんを選んで近づいていったの。
「あの、すみません。〇〇神社に行きたいんですけど、何で移動したらいいですか?」
無難に訊ねたと思うんだけど、その時のお兄さんが無表情で変だなって思ったんだよね。そしたら、ちょっと間があって急に吃驚した顔で、
「え…?僕が見えるんですか?」
って言ったの。聞き間違いかなって思って、
「え、今何ておっしゃったんですか?」
て聞き直したらお兄さんが「本当に見えるみたいだな…」とか小声で言ってから、
「え…いや…その…何というか…」
って明らかに動揺してるの。そして何か上着のポケットからスマホみたいなものを取り出して「少々お待ちを…」って断ってから、
「あ、おい。これって大丈夫なのか?」
って誰かと話しているようだった。ちょっと違和感があったのは、明らかに通話ボタンとかタップしてたような動作とかしないで、すぐに話し始めたって事かな。その時は<ふうん、今そういう機能もあるのかな>って思ったんだけど、冷静に考えればおかしかったよね。まあ、お兄さんが見た目普通っぽい人だったからとりあえず様子を見守ってて「これも想定内…?」とか「次どうすればいい?」とか何やら慌ただしい様子で手間かけちゃ悪いかなって思って
、
「あの、お取込み中でしたら結構ですので…」
て他の人に聞こうかなって。そしたらお兄さんが手で制するジェスチャーをして「どうやらちょっと待ってて欲しい」って事だったようなの。言われるままにしてると通話が終わったようで今度はお兄さんがしっかりした声で、
「取り乱してすみませんでした。何分こういう事態を予期していなかったもので…」
って何か物々しい感じで言ったの。その時「うわ…」って思っちゃったんだけど、正直面倒くさい事がありそうな予感がしたのもその時だったよね。
「神社の方へは5分後のバスで移動してください」
急に言われて一瞬何の事か分んなかったんだけど、教えてくれたみたいなんだ。ただ、なんていうか言い方がちょっと不思議だったの。
「あ、ありがとうございます」
ってお礼を言ったら、
「私もそれに乗る事になりました」
って返ってきて、ちょっと不気味だって思った。<っていうか誰かを待ってたんじゃなかったのか>って思ったよね。まあ別に一緒にバスに乗るくらいなら変な事にはなんないよね、思って本当に5分後にきたバスに乗って神社の前まで移動したの。バスを降りたら、大きい神社だったからやっぱり観光客が結構居て、<お兄さんも観光なのかな>って思いつつ、私は境内に入って鳥居を潜って…あとは一通り見て回ったの。そして『良い世の中になりますように』ってちょっと念入りに願掛けしてきた。
<そういえばさっきのお兄さんの姿が見えないな…>
ってふと思った時、それらしい人が神社の隅っこの何もないところに無表情で突っ立ってるのを見つけたの。
<ああ…やっぱり変な人だったんだ…>
って何か最初は普通だと思ってたけど、その頃にはすっかり関わっちゃいけない人だなって感じになってた。
そしたら、驚かないでね…
そこにいた筈のお兄さんがいきなり消えたの。本当にふっと消えちゃったの。思わず「へっ?」って声が出ちゃって、慌ててお兄さんが居た場所に駆け寄ったんだけど、本当に跡形もなくて…。私は正直、オカルトとか信じないタイプだけど、その代わり自分で見たものは疑わない。そうなるともう混乱するよね。
「これは…人生最大のミステリーに遭遇したかも知れない…」
何でか怖いというより気分が高揚しちゃって。事実を知った今との落差が凄いんだけどさ。でもその時の私には情報が無くって、あの人が存在していたのは確かだとして、じゃあ何が起こったのかちょっと整理してみた。
駅前でお兄さんを見た、バスが来るのを教えてもらった。
これは私がここに来れた事を考えても確かでしょ。だから、じゃあお兄さんがどうやって消えたかって事。まあ色々考えたけどその情報だけでは何とも言えないって気付いて、運の悪い事に周囲にいた人もどうも誰もお兄さんがそこに居て一瞬にして消えたって分らなかったみたいで私だけ動揺してるのも変だから、一旦喫茶店にでも入って頭を落ち着けようと思ったの。
で、たまたま神社正面にあった「ハイヤーゲーム」っていう喫茶店に入って奥の席の方をちらっと見たら、
「あ!!!!」
店の人みんなに聞こえるくらいの声が出ちゃったんだけど、まあ話の展開的に予想できたかもしんないけど何か普通にお兄さんが居たの。駆け寄って、
「あの、駅で会っ!お兄さん、あの神社で、」
慌てて話始めようとしたら、「まあ」とまた手で制するようにしてもう一方の手でコーヒーカップを持って普通にコーヒーを飲んだの。
「そこにとりあえず座ってください」
言われるままにお兄さんの正面に座ってとりあえず私もコーヒーを注文したの。そして、
「何から説明するべきですかね…」
って物々しい感じでこんな説明をしたの。
「お姉さんはタイムトラベルというのを信じますか?信じるか信じないかはさておき、私はまさしくそのタイムトラベラーなのです」
「そ…そんな…」
「証拠は幾らでも見せる事が出来ますが、要するにアニメ作品の「ド〇えもん」であるような設定のタイムパトロール的な組織がちゃんと未来世界にはあるのです。なので、証拠は残さないようにしないと修正されてしまうのです。ここまでは良いですか?」
「わ…分らないけど、分った事にして進めて下さい」
「まあ、正直言って未来世界だからって大して凄いというわけではないんですが、未来世界でちょっとブームになってる『遊び』があるんです。それは要するにタイムパトロールの隙を付いて跡を残さないように過去の人に干渉して、『それも正統な歴史』になっているかどうかを調べるっていう遊びですね」
「ふぁい?」
変な声がでてしまったのも仕方ないよね。説明を聞いてもちんぷんかんぷんで、その後何回も質問を繰り返して凡そこういう事だって言うのが分ったの。
①お兄さんは未来人
②未来にはタイムマシーンがある。タイムパトロール的な組織もあって歴史を改変しないように監視されている。
③タイムパトロールが見逃している未来からの干渉はある。それはもともと未来からの干渉があって、証拠…特にタイムトラベルについての決定的な証拠が残ってないから歴史を改変する必要はないし、そもそもそういう干渉が当たり前にあってその未来世界に行くようになっている。
④どういう干渉が歴史的に正当だったかは実験してみて分かる。
⑤実験と称する未来人による『遊び』…悪戯が横行。
⑥お兄さんも実験をしに来た。
⑦その実験に私が巻き込まれた。
という事を理解した時、やるせなさと怒りがこみ上げてきて。
「たとえそれが本当だったとして、あんまりにも悪趣味じゃないですか?人の人生に混乱をもたらして!!」
と激昂してしまった私。するとお兄さんも、
「まああれなんですよ。チキンレース的なところがって、干渉し過ぎたり、干渉した誰かが鋭すぎたり、諸々の事情で未来人を確信させすぎるとその後の歴史というのか、世論的なものが動き過ぎて影響が…バタフライエフェクト…」
とか色々言ってて言わんとするところが何となく分ったけど、<結局私が何をしても歴史に大きな影響を与える事が出来ないって事じゃん>って事が分って、何だろうこの上ない理不尽さと、どうにもならなさを感じたよね。
でね…面倒くさくなってお兄さんとはそこで別れて、やっぱり本当に目の前からスッと消えて元の未来に戻ったらしいの。それから見てないし、それ以上の干渉は難しいんだろうね。結果何が残ったか…
そう『私の不満』。だってさ、もう歴史的にどう説明したって信じてもらえないし、こうやって愚痴って説明した事だって『なんかネットで壮大な作り話をしている変な女が居た』って事くらいで、本当に影響って何にも無いって事なのよ…。
愚痴くらい言わせてよ。っていうか未来人どもに私は静かに批判をする。悪趣味な遊びは迷惑だからやめなさい!
その日私は久々に遠出していた。職場の人間関係とか、どうも有耶無耶なままにされている世の中の問題とかで地味にイラッとする事が多くなって、ちょっとした気晴らしのつもりで自分が知らないところに行きたくなった。晴れてて過ごしやすい日だったから気持ち良く家を出たんだけど、電車で目的地付近に近付くに連れて何というかイメージしていた雰囲気とは随分違ってたからちょっと戸惑ったんだよね。よくよく考えてみると県境のその場所って家の付近と比べると…なんというか湿度が高いような気がしたんだ。
まあなんていうかさこれは私の自論なんだけど『湿度』ってジメッとした感じじゃん。なるべくならカラっとして欲しいじゃん。多分だけど、ジメッとした雰囲気に呑まれちゃうと考え方までそうなっちゃうっていうか、そんな感じ。
でね私本当は地理に弱くて県境の町の名前は知ってたけど駅を降りたらさ、早速迷っちゃったの。というかその日は何処でも良かったからしっかり計画とか立ててなかった。でも一応その町に大きい神社があるのは知ってたからそこ行こうと思ってたの。とりあえず人に訊ねればいいかなって、テキトーに…って言ったら失礼なんだけど、なるべく『適切』に駅で誰かを待ってたらしかった「親切そうな」メガネを掛けた服装からしてキッチリしてそうなお兄さんを選んで近づいていったの。
「あの、すみません。〇〇神社に行きたいんですけど、何で移動したらいいですか?」
無難に訊ねたと思うんだけど、その時のお兄さんが無表情で変だなって思ったんだよね。そしたら、ちょっと間があって急に吃驚した顔で、
「え…?僕が見えるんですか?」
って言ったの。聞き間違いかなって思って、
「え、今何ておっしゃったんですか?」
て聞き直したらお兄さんが「本当に見えるみたいだな…」とか小声で言ってから、
「え…いや…その…何というか…」
って明らかに動揺してるの。そして何か上着のポケットからスマホみたいなものを取り出して「少々お待ちを…」って断ってから、
「あ、おい。これって大丈夫なのか?」
って誰かと話しているようだった。ちょっと違和感があったのは、明らかに通話ボタンとかタップしてたような動作とかしないで、すぐに話し始めたって事かな。その時は<ふうん、今そういう機能もあるのかな>って思ったんだけど、冷静に考えればおかしかったよね。まあ、お兄さんが見た目普通っぽい人だったからとりあえず様子を見守ってて「これも想定内…?」とか「次どうすればいい?」とか何やら慌ただしい様子で手間かけちゃ悪いかなって思って
、
「あの、お取込み中でしたら結構ですので…」
て他の人に聞こうかなって。そしたらお兄さんが手で制するジェスチャーをして「どうやらちょっと待ってて欲しい」って事だったようなの。言われるままにしてると通話が終わったようで今度はお兄さんがしっかりした声で、
「取り乱してすみませんでした。何分こういう事態を予期していなかったもので…」
って何か物々しい感じで言ったの。その時「うわ…」って思っちゃったんだけど、正直面倒くさい事がありそうな予感がしたのもその時だったよね。
「神社の方へは5分後のバスで移動してください」
急に言われて一瞬何の事か分んなかったんだけど、教えてくれたみたいなんだ。ただ、なんていうか言い方がちょっと不思議だったの。
「あ、ありがとうございます」
ってお礼を言ったら、
「私もそれに乗る事になりました」
って返ってきて、ちょっと不気味だって思った。<っていうか誰かを待ってたんじゃなかったのか>って思ったよね。まあ別に一緒にバスに乗るくらいなら変な事にはなんないよね、思って本当に5分後にきたバスに乗って神社の前まで移動したの。バスを降りたら、大きい神社だったからやっぱり観光客が結構居て、<お兄さんも観光なのかな>って思いつつ、私は境内に入って鳥居を潜って…あとは一通り見て回ったの。そして『良い世の中になりますように』ってちょっと念入りに願掛けしてきた。
<そういえばさっきのお兄さんの姿が見えないな…>
ってふと思った時、それらしい人が神社の隅っこの何もないところに無表情で突っ立ってるのを見つけたの。
<ああ…やっぱり変な人だったんだ…>
って何か最初は普通だと思ってたけど、その頃にはすっかり関わっちゃいけない人だなって感じになってた。
そしたら、驚かないでね…
そこにいた筈のお兄さんがいきなり消えたの。本当にふっと消えちゃったの。思わず「へっ?」って声が出ちゃって、慌ててお兄さんが居た場所に駆け寄ったんだけど、本当に跡形もなくて…。私は正直、オカルトとか信じないタイプだけど、その代わり自分で見たものは疑わない。そうなるともう混乱するよね。
「これは…人生最大のミステリーに遭遇したかも知れない…」
何でか怖いというより気分が高揚しちゃって。事実を知った今との落差が凄いんだけどさ。でもその時の私には情報が無くって、あの人が存在していたのは確かだとして、じゃあ何が起こったのかちょっと整理してみた。
駅前でお兄さんを見た、バスが来るのを教えてもらった。
これは私がここに来れた事を考えても確かでしょ。だから、じゃあお兄さんがどうやって消えたかって事。まあ色々考えたけどその情報だけでは何とも言えないって気付いて、運の悪い事に周囲にいた人もどうも誰もお兄さんがそこに居て一瞬にして消えたって分らなかったみたいで私だけ動揺してるのも変だから、一旦喫茶店にでも入って頭を落ち着けようと思ったの。
で、たまたま神社正面にあった「ハイヤーゲーム」っていう喫茶店に入って奥の席の方をちらっと見たら、
「あ!!!!」
店の人みんなに聞こえるくらいの声が出ちゃったんだけど、まあ話の展開的に予想できたかもしんないけど何か普通にお兄さんが居たの。駆け寄って、
「あの、駅で会っ!お兄さん、あの神社で、」
慌てて話始めようとしたら、「まあ」とまた手で制するようにしてもう一方の手でコーヒーカップを持って普通にコーヒーを飲んだの。
「そこにとりあえず座ってください」
言われるままにお兄さんの正面に座ってとりあえず私もコーヒーを注文したの。そして、
「何から説明するべきですかね…」
って物々しい感じでこんな説明をしたの。
「お姉さんはタイムトラベルというのを信じますか?信じるか信じないかはさておき、私はまさしくそのタイムトラベラーなのです」
「そ…そんな…」
「証拠は幾らでも見せる事が出来ますが、要するにアニメ作品の「ド〇えもん」であるような設定のタイムパトロール的な組織がちゃんと未来世界にはあるのです。なので、証拠は残さないようにしないと修正されてしまうのです。ここまでは良いですか?」
「わ…分らないけど、分った事にして進めて下さい」
「まあ、正直言って未来世界だからって大して凄いというわけではないんですが、未来世界でちょっとブームになってる『遊び』があるんです。それは要するにタイムパトロールの隙を付いて跡を残さないように過去の人に干渉して、『それも正統な歴史』になっているかどうかを調べるっていう遊びですね」
「ふぁい?」
変な声がでてしまったのも仕方ないよね。説明を聞いてもちんぷんかんぷんで、その後何回も質問を繰り返して凡そこういう事だって言うのが分ったの。
①お兄さんは未来人
②未来にはタイムマシーンがある。タイムパトロール的な組織もあって歴史を改変しないように監視されている。
③タイムパトロールが見逃している未来からの干渉はある。それはもともと未来からの干渉があって、証拠…特にタイムトラベルについての決定的な証拠が残ってないから歴史を改変する必要はないし、そもそもそういう干渉が当たり前にあってその未来世界に行くようになっている。
④どういう干渉が歴史的に正当だったかは実験してみて分かる。
⑤実験と称する未来人による『遊び』…悪戯が横行。
⑥お兄さんも実験をしに来た。
⑦その実験に私が巻き込まれた。
という事を理解した時、やるせなさと怒りがこみ上げてきて。
「たとえそれが本当だったとして、あんまりにも悪趣味じゃないですか?人の人生に混乱をもたらして!!」
と激昂してしまった私。するとお兄さんも、
「まああれなんですよ。チキンレース的なところがって、干渉し過ぎたり、干渉した誰かが鋭すぎたり、諸々の事情で未来人を確信させすぎるとその後の歴史というのか、世論的なものが動き過ぎて影響が…バタフライエフェクト…」
とか色々言ってて言わんとするところが何となく分ったけど、<結局私が何をしても歴史に大きな影響を与える事が出来ないって事じゃん>って事が分って、何だろうこの上ない理不尽さと、どうにもならなさを感じたよね。
でね…面倒くさくなってお兄さんとはそこで別れて、やっぱり本当に目の前からスッと消えて元の未来に戻ったらしいの。それから見てないし、それ以上の干渉は難しいんだろうね。結果何が残ったか…
そう『私の不満』。だってさ、もう歴史的にどう説明したって信じてもらえないし、こうやって愚痴って説明した事だって『なんかネットで壮大な作り話をしている変な女が居た』って事くらいで、本当に影響って何にも無いって事なのよ…。
愚痴くらい言わせてよ。っていうか未来人どもに私は静かに批判をする。悪趣味な遊びは迷惑だからやめなさい!
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