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わらいばなし

顔が想像上の動物のようになっている夢を見た翌日、色んな意味で日本人離れしているハンサムな青年に、

「パン食う?アンパンだけど」

と唆される想像をした午前を何事もなくやり過ごし、歯を磨いて、午後、意味もなくあの人の道具箱に残っていた研磨剤を窓に塗りたくってみた。そんな様子を見た妹が、

「お姉ちゃん、しっかりしなよ…」

と私を励ましてくれた。あの人は何処に行ったのだろう?私の頭をあらゆる方法でかき乱してくれたあの人…


先週の休日のこと。珍しく恋人らしく振る舞ってくれたのは、あの人なりの美学だったのだろうか?あの人はハンサムではなかった。いわゆるイケメンでもなかった。ただ一つ、頭がおかしかった。付き合いだして間もなく、私が、特に何も考えずに言った「アメリカの大統領って誰だっけ?」という言葉に、何故か彼は塞ぎこんでしまった。後で彼に話を訊くと、


<「アメリカの大統領は誰だっけ?」という一見するととても普通の問いを何故ここで僕にするのだろう?つまりここには、現アメリカの大統領に対する政治批判か、あるいは大統領を引き合いに出して僕を間接的に非難しようとしているのではないだろうか?例えば、現アメリカの大統領にあって、僕には無いもの…例えば、「勢い」、「生命力」、その他諸々…>


というような思考が彼の頭の中でものすごい勢いで進んでいたそうである。なんという邪推!!私はこの邪推力が原因で数限りなくコミュニケーション上の苦労をしたけれど、それが何故かとても面白かった。この上なく面白かった。それは私には無いものだったからである。


「あんな頭の変な人から離れられて良かったじゃん、ね。今度は普通の人を、、、」


「駄目よ。私は普通なの。普通だから…」


そういえば、彼がしきりに「普通になりたい」と言っていたのを思い出す。普通になってしまったら私が困ると言ったら、


「でも僕は君のその普通のところが好きなんだ」


と、とても真剣な口調で言っていたのを思い出した。それを言われた時の私の眉間には少し皺が寄っていたかも知れないけれど、彼が純粋に好きだと言ってくれたのは私の自信になった。私も、


「私もあなたの変なところが好きよ」


と答えた。だけど、私はかねてから抱いていた普通というコンプレックスを彼を知ることで少しづつ解消していったのだ。彼の言葉の5割がおおよそ、分からないけど理解できるようになった頃だった、私は何気なく


「だんだん、あなたの事が分かるようになってきたの。」


と言ってしまった。きっと彼はあの邪推力で、


<と言うことは、彼女は僕を必要としないのだろうか?なら僕は更に狂わなければならないのだろうか。でも僕は僕だ…>


という思考をやったに違いない、彼は


「僕、もう狂えないよ!!」


と叫んだ。私は真剣な表情とは裏腹に、吹き出しそうなのを堪えていた。だって、「もう狂えないよ!!」って何よ。私はそのままの彼で良かったのだ。だから、


「え?狂わなくていいけど」


と言った。結果的にそれを「あなたは必要ない」と受け取ってしまった彼は、数日後、何も言わず失踪してしまった。私は少し遅れて、彼の言葉と行動を理解して、昨日からこんな感じだ。



「ねえ、何か面白い事言って。」


「お姉ちゃん、私は今のお姉ちゃん以上に面白いこと出来る自信ないよ…」



だよね。何故だろう、この…



「あれ?お姉ちゃん、何か紙が…」


「え?」


「あ…その言い難いんだけど、お姉ちゃんの背中に…何か紙が貼ってある」


そこには彼の字で


『いつか君に認めてもらえるような、変人になって帰ってきます』


とあった。やばい。嬉しくて泣きそうだけど、ムカついて笑いたい。この複雑な感情は何なのだろう。え~い面倒だ、笑っちゃえ!!
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いたってまとも

変人になるべく武者修行の旅に出た恋人さん。発想が常識人だ(笑い。じゃぁ、どうする?国会答弁をマスターすれば問題無し。

Re: いたってまとも

自分の狂い方に限界を感じたんでしょうね。本当の変人になれる頃には、きっと一角の人物になっているでしょうね。それこそ、日本を背負って立つ変人になっているはずで、そして日本はますます奇妙な国と噂される遠因になったりならなかったり・・・

かつてこの国には自称変人の総理大臣がいたとかいなかったとか・・・
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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