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隠れた王子

私はあるとき、「何故王子様は現れてくれないのだろう」と思った。子供のころの夢が美しいお城に住むお姫さま、だった事もある。夢は夢でしかないけれど、夢のような世界があってもいいじゃないと思う私は、ある時期を境に、「どうしたら自分のやりたいことが出来るようになるか?」という現実的な考えの方にシフトしていた。そしていつの間にか「女としての幸せは、結婚よ」という先輩の話に対しても、あんまり抵抗なく受け入れられる時期に来てしまっている。


いわゆる、『婚期』っていうやつだと自分で思う。


男性経験が皆無と言っていい私でもそれは何となくわかる。今このまま何もしなかったら、王子様どころか、男の人がいる生活からさえ遠ざかってしまいそうな気がする。だけど、テレビで騒がれているような『婚活』はあんまり乗り気がしない。古風と言われるかも知れないけれど、良い出会いがあって、ちゃんと恋愛して、将来の事を考えれる人と結ばれたい。そういう私は、ないものねだりをしているのだろうか?



自分は素直な方だと思う。だけど現実は、非情にも素直なままの自分を受け入れてくれるようには出来ていない。素直に思っている事を言うと場の空気を悪くしてしまって、印象も悪くする。だから、仕事の事以外ではなるべく口を開かないようにしているけれど、心許せる友人には、「あんたって性格悪い、っていうかはっきり言うよね」と笑いながら言われる。でも、本当はみんな心の中で思っている事だと私は思う。それに私は常識あるからオブラートに包んで言うくらいの事はする。

「でもそれが面倒臭いから、あんたには言うんだ」

とその子にいうと、

「ふーん、ありがとね」

と、なんだかよく分からない返しをされる。そんな友人は愛想がよくって異性からも好かれる。結構ズボラなところがあるのに異性の前では身綺麗にして、男性のツボを抑えているのか、私の前では言わないような聞いてて恥ずかしくなるような事を何のためらいもなく言うそうである。勿論、そんなんだから彼氏は当然いて、ある意味で色恋沙汰はその子から全てを得ているようなものである。私は羨ましいと思う反面、そこまで一生懸命身を飾って、何が楽しいのかときどき分らなくなる。


もちろんおしゃれ、というよりカワイイもの綺麗なものは自分も好きだから、着る物には拘るし、センスのいい人を街で見かけたら参考にする。でも、それはモテる為とかではない。でも、なんというかモヤモヤしたものが残る。



私はある日、書店に向かった。『理想の結婚』という、タイトルだけでもう中身が知れているような本を思わず手にとってしまった。自分でも「もう末期だな」と思うようになった。その本を一応購入して、読み終わっていない本として積み上げておいた。後日友人が訪れた際に、

「な~に、これぇー!!」

と目聡く見つけやがった。前々から相談していた事だったので、恥ずかしいけれど、正直に…

「結婚したぁ~い!!!」

と言ったら、

「っていうか、まず相手だよね」

って返されて、早速挫折しそうになった。そうしたら、何かいい案があるのかニヤニヤしだして、

「私にまかせなさい!」

と切り出した。

「実はそうなんじゃないかって思って、良さそうな人見つけておいたから」


なんて意外な事を言ってくる友人。


「何、それは本当か!!」

思わず、上司の口癖が出てしまう私。



そんなこんなで後日紹介されたのはいかにも真面目そうな、同い年くらいの男性。見た目は普通、格好も歳相応、背もまあまあ普通。第一印象は「良い人」。友人もなかなかやるじゃないかと思ったけど、私だって理想がないわけではない。ここから相手の良いところが見つかればポイントを加算する事にして、しばらくは…と思っていたら、


「あの…僕、白鳥と言います。今日はどうも…」

と見た目とは裏腹に気弱な声が届いた。

「あ…よろしくお願いします」

と私もそれに劣らず弱気な声で答えていた。自己紹介を済ませながら、近くにある喫茶店で話をしましょうという事になって、道を歩いている間にこんな会話のやりとりがあった。



「僕、あんまり異性の人と話すのって苦手なんですよね…」

私は率直に最初にそこから話すのは下手だし、逃げだと思った。

「あ…実は私もなんです」

…かくいう私も同じだった。そのすぐあと…

「あの、○○さんは、そのけ…結婚を考えていらっしゃるとか…」

結構、核心から話す人なんだなと思った。普通は、天気の話題とかからでしょと思った。

「え…?あ、あの…その、そうです」

すごく恥ずかしい事を言っているように思われたのは何故なのだろう。


「実は、僕はまだ全然考えてなくって…すみません」


いや、あのえっと…どういう伝え方したんだあの女…


「いや、あの今日は、まずそういうところではなくて、紹介してもらった
ばかりですし…」


「あ…そ、そうですよね。すみません」


この人、謝ってばかりだなと冷静に見ている私がいる。どういう人なんだろう?喫茶店での会話はカオスを極めた。


「僕は、実をいうと『隠れオタクで』、こう見えてアニメとかも好きなんです。」

いきなりそこから始めるなし…しかも隠してないじゃん…。減点10。私も漫画くらいは読むけど、好きと公言できるほどではない。

「へぇ…アニメ、私も漫画とかは読みますよ」

「例えばどんなのですか?」


喰い付いた!!っていうか、一つしか読んでないよ…。

「ワンピースとか…」

「あ…。ワンピースですか。メジャーすぎて読んでないです」

「メジャーだと読まないんですか?」

「なんか、表に出てくるような人達の物語ってあんまり得意じゃないんです」

「何となく解るような気がします」


自分も分ってしまうのが悲しかった。私は友人の勧めであの漫画をずっと読んでいるし、読んでいる人が多いから、読んでいるというところも多いのだ。でも、減点10。


「○○さんの趣味は?」

わりとオーソドックスな質問。

「読書ですね」

無難に答える。

「今読んでいる本ってどんなのですか?」

「猫が出てくる小説とかですね。『ねこタクシー』とか。私猫が好きなんです」

「猫ですか、僕飼ってますよ」


加点20。


「でも本とかはあんまり読まないかな…活字が得意でなくて…」

減点20。

それからしばらく、減点と加点と繰り返して、第一印象の点70点からマイナス10の60点になっていた。共通の趣味が、猫動画を見るくらいしかないのではないかと思われた。一応メアドを交換して、そこで話は終わった。そのまま友人宅を訪れて、愚痴をこぼす。


「なんか、よく分からなかった。」

「まあ、あれで結構みどころあるんだけどね。見えにくいっていうのか…」

「何それ。見えなきゃダメじゃん」

「だから駄目なんだよね、あいつは」

「あんたには悪いけど…やっぱり…」



とそこでメールが届いた。『白鳥』という文字が出て一瞬、誰だか分らなかったがあっと思い、開いてみた。


「もしよろしかったら、来週また会いませんか?『ねこタクシー』読んでみて感動しました。何か面白い本、紹介してください!!」


「あの男はね、好きな事になると決断が早くて、熱中するんだよね」

「でもさ…これって小説にハマっただけなんじゃ?」

「それは、本人にしか分からないけど…さてね」


75点…四捨五入して80点。私は返信した。


「なんて返信したの?何々…『じゃあ今度、私にも面白いアニメ紹介してくださいね!』だってぇ?ほぅ…」


「なによ、なんか文句ある?」

「いえ、まったくございません。うふふ…」


王子様はいないけれど、王子様のいないこの世界で、みんな何とかなっているという事が、ちょっとだけ分かった一日だった。案外、その辺に隠れているのかも知れない。
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