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流行らないそう

客を待つ僕。流行らない店の番は案外退屈だ。でも一応仕事。けれどこの場に立ち尽くす事で、何かを打ち棄てているようにさえ思えてしまう。それは例えば、返らない時間とか。特に何をするでもなく、「流れる時間に身を任せ」…なんてどこかで聞いたような詩が思い浮かぶ。この店が駄目な点を挙げればキリがないけれど、何はなくとももうちょっとマシな内装にすればいいのにと思う。今ここがどういう内装なのかというと、丁寧に包装されたプレゼントを、ビリビリに破いた時に現れる、中心は綺麗だけれど周りは乱雑な光景。中心が比較的すっきりとしたカウンターだとすると、そこから外れるにつれて色遣いが滅茶苦茶になる。店主が何を考えたのか僕はいまいちよく分かっていない。せっかくだから訊いてみる事にしよう。

「おやっさん。この内装って誰が考えたんですか?」

それまで無表情に近かった店主に陰が出てきたように思えたのは気のせいだろうか?

「ふ…訊いてしまうかね?この店に隠された秘密を…」

と店主。これを聞いて僕が地雷を踏んでしまったのだろうかと不安になって、

「いや、いいです。ちょっと…」

と言いかけたが、店主はそれを制して続けた。

「それはね、家を出ていってしまった私の息子と娘が、店が繁盛するようにと願いを込めて…」

<うわ、これ訊いちゃいけないパターンだ>と思っている間もなく、店主は

「落書きしたものだよ」

と断言した。

「へ?落書きですか?」

「そうだよ。立派に成人して、今は家を出ていってしまった息子と娘が遺していった落書きだよ」

「ああ、確かに家を出ていったんですね。因みにいつ頃の話でしょうか?」

「たしか…娘が16歳で息子が17歳の頃かな…『店を継がないか?』と持ちかけた翌日に…」

「あの…御子さん達は、店が繁盛するようにと落書きをなさったんですよね」

「そうだよ。『店が繁盛するように落書きしておいたから』ってガン飛ばされながら言われたよ」

「あ…そういう意味ですか」

「御蔭様で、店もこんな具合に…」



「いいお子さんに恵まれましたね」


僕は二度と退屈だとは思わないようにしようと心に決めた。
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店は一等地で高値の引き合いがあったとか

 うーむ。後足で砂をかけていった気が。なんかさっさと潰れろみたいな置き土産ですなぁ。で、それを意地でも消さない頑固店主。おい、大丈夫かよ。

Re: 店は一等地で高値の引き合いがあったとか

こんにちは。

これは完全にギャグですね。流行ってないけど、バイト雇えるくらいには客がいるので大丈夫でしょう。店主の親心で、残しておきたいなという気持ちもあったのかも知れませんね。
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Author:なんとかさん
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