FC2ブログ

何でもない日

街には肌を突くような冷たい風が吹いている。空は案外晴れていて、光は届くから若干温かく感じる。何となく、クリスマスの情景が浮かんだ。自分には特に何かがあるというわけではないけれど、人が何かを確かめあうような素敵な一日だ。時間は戻りもしないし止まりもしない。子供の頃感じていた事の向こう側ではなくて、ありのままの世界を肯定できるような今の自分を心強く思う今日この頃。


「だけど、何か特別な事が起こっても別に良いと思うんだけど」


ありのままを肯定している。でも何気ない光景に対して、光の温かさや照らし出されたものたちの調和を感じて、なんとなくいい感じになるだけではなく、このいい感じのまま本当に良い事が起こったりしそうだと思えたら、もっと素敵な日だろうし、実際に良い事が起こったら最高の一日だろう。


コンビニに立ち寄って、ちょっと気分は早いけど「おでん」を買ってみようと思った。ドアが開くと「いらっしゃいませ」という元気な声が響き渡る。


「あの、おでんを」


「はい!何にします?」


「おでん」では「たまご」が一番好きで、次は「餅巾着」、そして「ちくわ」、「大根」と続く。「たまご」と「餅巾着」で子供っぽいような気もするが、何気なく好きな「ちくわ」と「大根」という定番を外さないようにしているので、バランスは取れているだろう…栄養学的にも。生憎「餅巾着」は無かったので三種類になってしまったが、それならばと「ちくわ」を二本入れてもらった。


「今日、寒いですよね~」

このコンビニには良く立ち寄るのでおばさんも笑顔で話してくれる。


「ええ、もう冬ですね。あ…つゆ少なめで」


店の中は暖房が効いていて暖かい。外に出た瞬間、寒暖差で余計に肌に突き刺さるような寒さに感じられた。先ずは「ちくわ」の出番だなと思った。弾力性のある筒状の物体を食い千切ると汁が溢れ出してきて美味い。プリッとした触感がなんとも言えない。因みに「おでん」でなくてもそのまま食べたりする。「竹輪」と漢字を見ると竹という漢字から緑っぽい色を連想してしまうが、汁が浸みこんでいてやや茶色い。グルメレポーターでもないから、他のものは一気に食べてしまう。最後に残しておいた「たまご」は、熱くて火傷しそうになった。店の前で食べていたのだが、



「あの…」


気付いてはいたが、さっきから高校生くらいの男の子がこちらを見て何か言いたげである。


「ん、何?」


「「おでん」美味いっすか?」


「美味しいよ」


「うわー、どうしよ。金欠なんだけどなぁ…何が美味しかったですか?」


「たまごかな」


「あ、いいっすねぇ・・・うわ、どうしよう」


男の子は頭を抱えて結構本気で悩んでいる。背中を押して、この店の売り上げに貢献させたい気持ちと、男の子の財布の中身を心配する両方の気持ちが混ざり合って、後で考えると何故か分らないけど、何故かその時は言った。



「じゃあ、たまごだけ奢ってあげるよ」


「マジっすか!!いや、でも良いですよ…」


と言いつつ、顔が喜んでいる。正直な奴めと思った。


「ほれ。120円」


「あ…ありがとうございます」


「あ…それと、」


「何ですか?」


「食べる時は火傷に気をつけな」


「はっ、はい!!じゃ行ってきます」



自分でもよく分からない行動は、多分一種の気紛れである。格好をつけるためそそくさと立ち去った。歩いているうちに、ある情景が浮かんでくるのを感じた。


「あ…思い出した」



そういえば昔、知らないおじさんに「餅巾着」を貰ったのを思い出した。その時はまだ子供で、「おでん」の良さもあんまり分っていなかったような気がするが、「餅巾着」だけはお餅が入っていて美味しいと素直に思ったものである。あの時の味と、良い気分を思い出すから「おでん」が好きなんだなと自分で分析した。「たまご」が一番好きなのは、ある意味で自分の「味」が出てきたという事かなと思う。


「クリスマスも良いけど、何でもない日に奢ってもらう「おでん」も格別だったな…」


ちょっとだけ心もあったかくなった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

なんとかさん

Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
普通のカウンター
投票
無料アクセス解析
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR