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り婦人

スケッチブックに萎びたナスの絵を描いた。これが今の私の精神状態である、とは言えないから謎である。猫を描こうとしたのにナスになってしまった事が更なる謎を呼ぶ。それは何の意味もなく纏わりつく。むしろ纏わりつくからその意味を邪推してしまう、ナス。

「ナスねぇ…最近食べてないなぁ」

「どうかしたの?」

夫が心配そうに訊ねてくれる。

「あのね、こういう絵を描いたの」

「へぇ~結構上手いね。でもどうしてナスなの?」

「私に訊かれても分からないわ。何故か知らないけど、ナスを描いてたの…」

「う~ん。ナスだけに、かナスい、とか?」

私は無言のままジト目でねめつける。夫は、だんだん堪えられなくなって言った。

「あ!そうだ、『秋茄子は嫁に食わすな』っていう諺があるでしょ?だからじゃない?」

「じゃあどうして、萎びてるの?」

夫は首を捻ってしばし黙考する。

「分かった。これはきっと栄養が足りていないという身体からのシグナルなんだよ。身体は、栄養価の多い野菜を求めているけれど…」

「求めているけど?」

「今年は悪天候で育ちが良くない…とか?」

「そうすると、野菜の事について随分気にかけている事になるわね、私」

「違う?」

私は少し考えてみる。確かに夫の言うことにも一理ありそうだけれど、私はこうとも解釈できると思うのである。まず、猫を描こうとしたところからスタートしているという点がポイントだ。私はきっと無意識に猫を飼いたいと思っているのであろう。けれど、アパートでそれは現実的ではないから、せめて家庭菜園でもしたいなとどこかで思っているに違いない。だけど、この洗濯物も満足に乾かない日照の少ないアパートでは、育てた野菜も萎びてしまうに違いない。私は猛然と引っ越したい気分に囚われる。だけどそれも現実的ではない、何故なら…



「あーなんか、すごくイライラしてきたわ」

「え?どして?俺なんか悪い事言った?」

「どうしてって、猫が、ナスで、萎びちゃうの!そうならない為にどうしたらいいか分って!!」

「理不尽だ…」


だけどそれは理不尽じゃない。
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なすには栄養が無い

 猫も茄子も引っ越しも無理。正しい日本の日常風景ですな。普通に働いて普通に生きていたのでは東京で庭付き一戸建てに住むなんて不可能です。そうだ、田舎に行こう。そこには騒音も群衆も、日の光を遮るビルもない。勿論、仕事もないけどね。

Re: なすには栄養が無い

こんにちは。

仕事が無いのは確かですね(白目)。田舎特有の風習とかもあったりして、でも何というかネットが普及して以降は読解力と文章を読む気力、何でも鑑賞できる忍耐力あれば、それなりに活動っぽい事は出来ますね。静かな活動ですが。

でもやっぱり具体的に何かがあると嬉しいのは誰でもいっしょですね。
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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