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ATJ アナザー④

『愛』についてろくに知らない私が『愛』について語る。これだけでも軽い冗談になるのに、何故か冗談みたいな展開は続いていた。私はこの「キャラクター祭り」の第二部、「キャラクターによるクイズ大会」の行方を会場の最前列に座って見守っている。私は乙女に、

「私の(キャラクターへの)愛を見ていてください!!」

とせがまれ、成り行き上、待機室から会場に移動することになった。クイズは順調に進んでいた。ところで、基本的に諸事情により無口であらねばならないキャラクターが人の声を発しなければならないのか私にはよく分からない。救いは変調器つきマイクが、明らかにオッサンの声をカムフラージュしているという事だろうか(前に居ると小さく低い声が聞こえるけれど、そこは聞こえない事にする)。更につっこみどころは満載で、クイズがこの商店街についてのマニアックな知識が微妙に織り交ぜられてはいるが、結局のところ問題は一般常識しかないというのは許せるにしても、どうして30問もやらなければならないのだろう?


壇上には、折り畳みの椅子が8個並んでいる。参加したキャラクターは8体ということになるが、参加しないキャラクターを含めると一体何体になるのかよく把握できていない。頭頂部が特徴的な出題者(酒屋の鈴木さん)は、良く通る声で所々詰まりながら問題を読む。

「えーと、ではこの商店街は50年前に出来ましたが、その50年前の19○○年の○○という人の書いたベストセラーは?」

こんな感じで漸く20問目である。ベストセラーがギリギリ誰でも知っているレベルだから良かったものの、あの乙女にとっては多少難しい問題だと思った矢先、乙女は物凄い勢いで挙手する。

「はい!「モルヒネ中毒」です!!ケロ!!」


乙女と言っているけれど、彼女は今『ケロ子』ちゃんになり切っている。そして彼女だけは変調器を使用せず、声を作って発言している。語尾に「ケロ」とつけるのは名前を考えるとベタなのだが、野菜のような顔だから会場に集まった客の半分はおそらく「どうしてケロをつける必要があるのだろう?」と疑問に感じている。


「はい、7番さん、大正解!!これで、、、12ポイントです」


言い忘れたが、キャラクターはネームプレート代わりに数字のプレートを割り当てられている。7番が半分以上点を獲得しているのは他のキャラクターが恥ずかしさがあって遠慮気味なのと、商品が地味なのと、あと彼女に圧倒されているからだろうと思われる。

「やった~!!ケロ!」


正解すると一瞬だけこちらを見るのは、きっと私に「愛」を見せつけるためなのだろう。何も言わないけれど、


<どうですか?私、キャラクターになり切れていますよね!!>


という声が聞こえてくるようである。私は、色んな事が重なった為か唖然として口が開き気味になってしまっている。それを見て何を思ったのか、『ケロ子』は暴走し始める。


「ケロケロケロケロ~」


明らかに奇声なのだが、これは問題を読み上げている途中で聞こえてくるのである。酒屋の鈴木さんもこれにはちょっと困り顔である。だが、一番やる気なのには違いないから、それをスルーして出題を続ける。こんな感じで、最後の問題になった時には、圧倒的な差で7番がリードしていた。



ここで嫌な予感がするのは誰もが同じである。


「では、最後の問題は何と20点のボーナス問題です!!」


そう、出題者は一番やってはいけない、点数の引き上げを宣言したのである。しかもギリギリで他の誰でも逆転可能になってしまった。<じゃあ、最初から一問だけやればいいじゃねーか>という声が会場全体から聞こえてくるような気がしたが、もうそれもお馴染みになってしまっていて観客は黙ってそれを受け入れていた。憤慨しているのは、乙女だけ。


「え~そんなぁ。一生懸命答えたのに!!ケロ!」


会場の空気は、乙女に同情を向けているけれど、殆どの人はどうせ最初からこうするつもりだったんだろうということはあるところから予想が出来ていたような気がする。あるところからは、というのは17ポイントになったあたりに、酒屋の鈴木さんが八百屋の高田さん(商店街の会長)から耳打ちを受けている様子が目撃されているからだった。


「でも、最後の問題も私が答えちゃうケロ!!」


「頑張れケロ~!!」


会場に居た純粋な子供が応援した。一生懸命なのが好きなのは誰だって同じだ。行き過ぎてなければ…。でもこういう時に限って、


「では問題です。この商店街の名前はなんでしょう?」

という超簡単で、早押し問題が出てしまうのである。しかも7番は手を挙げない。他のキャラクター達は最初戸惑っていたが、乙女が手を挙げない為に会場の空気が澱んでしまうのを嫌って、遠慮しがちに手を挙げる。


「はい、では6番さん」


「えっと…鍵山商店街…」


「正解!!なんとこれで6番が大逆転。優勝です!!」


会場はその白々しいやり取りに、なんというか絶望した。『ケロ子』はどうして手を挙げなかったのだろう。乙女はしょげているように見える。
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