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ようせい

ある日の事、私は甥にむかし話をせがまれた。だが困ったことにむかし話はあまり知らないし、記憶力、再現力ともに衰えが始まっている私は、誰もがよく知っている話でも出来るかどうか自信がなかった。とはいえ、叔父としての威厳を見せつけなければ、あとあと…といっても遠い将来だけれど、彼になめられてしまうのではないかと思い、苦渋の末、むかし話を即興で捏造する事にした。

「『バナナの妖精』」

「えぇ~『ばななのようせい』?なにそれぇ」

「昔々、ある南国の島に、具体的にはフィリピンとか…にたいそうバナナ好きの男がおって、名を『ナババ』と言った」

「なばばぁ?」

「ナババは、あんまりにもバナナが好きだったから、バナナの木を家の庭に植える事にした」

「うん…」

ここまで話すと結構食いつきが良かったので、私は調子に乗ってあんまり要らない設定を付け加えてみる事にした。

「でもナババは年老いたおじいちゃんから、『庭にはバナナを植えてはいけない、バナナの妖精がやってきてしまう』と堅く禁止されていたのだ。それでもナババは信じようとはせず、あろうことか庭に20本もバナナの木を植えてしまった」

自分で適当に話を作っていると、この辺で、庭の管理が大変そうだなとか、どうやって育てるんだろうとか悩み始めたが昔話の都合の良い展開というものに任せて、勢いで乗り切ってしまう事にした。

「それでそれでぇ」

甥も初めて聞く話だろうし、全世界で初めての昔話だから興奮し始めている。

「バナナが立派に実をつけた頃、ある朝、ナババはバナナを一房もぎ取った。ナババが味見をしようとしたその瞬間」

「そのしゅんかん?」

「ナババは一本のバナナが青白く光り出したのに驚いた。こんなバナナは見たことがないナババは、それを家に持ち帰ろうした。すると、そのバナナから小さな声が聞こえるではないか。声はこう言っている。

「ワタシバナナノヨウセイデス。バナナノヨウセイガアリマス。」

ナババはおじいちゃんの『バナナの妖精』という言葉を思い出したが、バナナの妖精がそれしか言わないので何の事がよく分からなかった。



「??」

「ナババがおじいちゃんのところに光るバナナを持っていった時、おじいちゃんは興奮しだして若干血圧がやばくなりながらもこう言った。

「あぁ、やっぱり。またバナナ取られちゃう」

ナババはまたしても何の事か分からないからおじいちゃんに訊いてみた。

「あのな。この家に伝わる伝説で、庭にバナナを植えると、バナナの国の王様がバナナの妖精を遣わせて、うちのバナナの木ごともってかれちゃうんだわ」

「『バナナノヨウセイガアリマス』は?」

「それな、バナナの要請がありますだそうだ。だからバナナが王様から要請されているんだわ」




「ヨウセイ?」

「そう。妖精だけに要請…」

と言うところで話を終わらせようとしたとき、物凄い勢いで兄に睨まれたので、一応その後も考える事にした。


「というのは冗談で、ナババは自分の大切なバナナが王様だか誰だか知らないが、もっていかれてしまう事に怒った。


だがここでナババは物凄い事を考えた。


数日後、ナババの家の庭に植えてある木々が一変に青白く光り出し、一瞬にして何処かに飛んで行ってしまった。木が無事バナナの王国に届いたと思って王様が喜んでいると、なんとそこにはナババがいるではないか。ナババはバナナの木に自分を括りつけて、バナナと一緒にバナナの国にやって来てしまったのである。



「うわーすごい!!」


兄夫婦もこれには少し感心したようで、私が語り出す結末を見守っている。


「ナババは王様にこう言いました。

「バナナ農家なめんなよ」

王様はこの勢いに圧倒されて、ナババをバナナ王国のバナナ大臣に任命したそうです。ナババの作るバナナはみんなに愛されたそうです。


めでたしめでたし」


「わー、おじちゃん凄い!!」


その後、兄の機転で、私も甥に自作の物語を作る、「お話大臣」に要請…もとい任命されたとさ。ちゃんちゃん。
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