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ATJ アナザー⑰

「それって付き合っているという事ではないの?」


数日後友人宅でその日の事を事細かに説明していたら、友人は突然話を遮るように予想外の
一言をぶつけてくる。


「え…?」


一瞬何の事か分らなくなって、というより曖昧な認識だったものがこの瞬間に一気にある輪郭を与えられたようになって、私ははっとさせられてしまった。私の認識では、松木さんとの行動は『ケロ子』について手伝いをする都合上全て必要な事であったといえばそうである。ただ冷静に第三者の視点を元に考えてみると、そう云う風に見えなくもないということはすぐに思い至った。何故それに気付かなかったのだろう。理由を考えてみると、多分松木さんと年齢が離れているという事もあって、あまり『恋愛』というものを浮かべずに普通に接しようとしていたからなのかも知れない。一旦意識し出すと、自分がやって来たことに対して不安に思う気持ちが出てきてしまう。自信は無くなったものの、


「多分、そうではないと思うよ。松木さんも…」


「まあ、その人に合った事がないから何とも言えないけど、君がそういう意識じゃなかったっていうのは分かった」


彼は的確である。私だって松木さんの気持ちがはっきりと分るというわけではない。ただ、これまでの付き合いの中で好印象を与えられているという事は確かである。そして私も松木さんに対して少なからず興味を持っているのは疑い得なかった。ただしその興味は、私に無いものを持っている一人の人間として、尊敬を込めて抱いているようなもので、そこから恋愛に発展してゆくかと訊かれれば甚だ疑問であるような気がした。友人は、冷静に言う。


「よくは知らないし無責任な事を言うかも知れないけど、そこは一般的な知識で考える事も必要じゃない?仮にも男女なんだから」


「まあ、そう言われればそうだ。確かに」


彼に言われたことも確かだし、それは分かっているのだが、一方で私はそれだけではない部分もあるのではないかという思いを捨てきれなかった。それこそ私は何より『ケロ子』として『ケロ子』に成りきってプロデューサーの松木さんの手伝いをしているという、その最初の認識が私をここまで駆り立てているのではないかという思いである。私は『ケロ子』としての活動に意味を感じつつある。その意味は他でもなく私が行動する事によって得たものに違いなかった。



「じゃあさ」


「何?」


「今度二人の様子を見させてもらう事にするよ。そろそろかなって思ってたんだよね色々と」


「そうか。じゃあ、次の連絡が来たら知らせるから」


友人は良くも悪くも見守ってくれるだけである。これまではそうだった。だが、彼は少しだけ意思を見せた。この時の私は、それがどんな結果を齎すのかをあまり考えずに了承していた。友人宅から帰宅して、私は何となく松木さんにメールを送っていた。


『今友人と話してきたんだけど、その友達が今度私達の様子を見て見たいんだって。OKしちゃったけどいいかな?』


少し時間が経って返ってきたメールにはこうあった。


『いいですよ。Nさんの友達って、どんな人なんですか?』


それに対してこう返信する。


『私とよく似ている。高校時代からの付き合いで、今も結構会うんだよね』


『そうですか。何か緊張してきたー!!(笑)』


『大丈夫だよ(笑)』


こうしてメールのやり取りをしていて気付いたのは、以前よりもお互いにフランクになっているという事である。距離を感じさせない良く知っている人とのやり取りのようにも思える。信頼のようなものが出来あがっているのかも知れない。他方、私は友人に言われたことが気になって、何かしら松木さんの気持ちを知りたいと思うようにもなっていた。曖昧な自分の気持ちに比べると、松木さんの方がはっきりしているようにも見える。訊いてみようと思ったが、精一杯悩んだ末


『何だか最近お互い打ち解けてきたみたいで嬉しいよ』


と送る。可も不可もない文面である。これで何かが確かめられるとは到底思えない。


『私も丁度そう思っていました!嬉しいです』


この文面から特別な何かを感じれるかというと、私にはまだまだ無理そうであった。少なくとも松木さんは文面通り喜んでいて、やっぱりいつも元気で私を勇気づけてくれる松木さんだった。
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