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てれびねこ

「違うチャンネルにして下さい」


夕食のとんこつラーメンを食べながらテレビのザッピングをしていると
男の子なのか女の子かよく分からない比較的高い声が聞こえる。声の主
は机の上で前足を組むようにちょこんと座っている。その小さな同居人
は最近テレビの事に口出しするようになっている。


「御主人。こんな教養の欠片もないような番組を見ていますと感性が麻痺
してきますよ」


その言葉は私に向けられているというよりは、テレビ番組を作っている側
に向けた批判のようにも思える。そうなると何の因果かよく分からないが
私はテレビ番組をフォローしなければならないと思ってしまう。


「マロ。これもみんな一生懸命作ってるんだから、そうやって切り捨てないで
良い処を探した方がいいぞ」


同居猫マロは2歳ながらズバズバものを言うのに定評がある。といっても、
どう大きく見積もっても『猫』のマロは自分で出来るわけではないから多少は
諌めておかないと、将来いろいろ面倒くさくなりそうだと私は思う。今見ている
テレビがあんまり面白くないのは事実である。実際視聴率もあんまり良くない
だろう。週替わりでゲストがトークをしているのだが、殆どが宣伝である。
肝心の内容はテレビではなくて、他の場所でないと味わえないような事を
言っているし、番組全体に教養の匂いがあるのかというとそういう感じはない。


そもそもマロは人間の活動を全て評価しているわけではない。どうやら歴史的、
文化的な事に対しては評価をしているようだが、単純な事、たんなる暇潰し
程度の事については、猫らしく「こんな事するくらいなら眠った方がいいんです
よ」と言う。そうはいうものの猫のように頻繁に眠れるかというと人間は
そうではない。マロはそういう人間の事を知っているのかいないのか、マロらしい
視点で物を言う。今もマロは文句を言いつつもその人間が多く登場する番組を
見ている。


「あ!!御主人、とめて下さい!!」


「なんだ?あ…」


それはちょうど「猫の為の番組」と言っても良かった。世界中の猫を撮り歩いて
いる有名な番組で、マロだけでなく各家庭の猫もこの番組の時だけはテレビに
噛り付いて猫が動き回る様を見ているという噂もある。


「この番組って、猫から見るとどんな感じに見える?」


「いいですね~。この人、ボクらの事をよく分かっているカメラワークですよ。つい
引き込まれちゃいますね」


「猫はどうだ?やっぱり日本の猫とは違うのか?」


「猫は世界共通ですね。ボクのような猫はいないけど、頭がよさそうな猫もいますね」



さりげなく自慢をしているが、マロはもう既に画面に映っている猫をじっくり見ている。
ある人から聞いた話で、ちょっとお馬鹿な猫だと本当にテレビの中に猫がいると思って
画面を追いかける事もあるそうである。マロは他の猫と同じような気分で見ているのか
それとも猫の気分になった人間が猫を追いかけている事によって独特の雰囲気ができて
いるという事を了解した上で見ているのか、でいうと、おそらく後者だろう。


「この人の解説も素晴らしいですね」


ちょうど猫を撮っている人が猫の生態について解説しながらそのシーンを回顧していた。
相当詳しくないと出来ない話だが、猫好きの人なら聞くと素直に「そうだ」と思える
内容である。私は先ほどのことを引き合いに出して、


「まあこれは教養のある番組といえばそうなのかもね」


と言う。マロは得意げに言う。


「やっぱり番組を作るにしても何にしても「愛」がなくちゃダメですね!!」


「愛ね…」


「猫は愛されるべき存在なのです」


と言うとマロは可愛らしい、というかあざとい表情で目を細めて「にゃ~ん」と鳴いてみせる。
これはマロが頭を撫でて欲しい時に(敢えてそう)する仕草である。私は無言でマロの
頭を撫でた。マロは再び「にゃ~ん」と鳴きまねをした。
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猫は総て正しい

 美しく、可愛く、気高く、気紛れ。ちょっと目を細めてごろごろするだけで今日も人間は食事の用意をしてくれるのであった。猫の生存戦略、恐るべし。

Re: 猫は総て正しい

そうだにゃん!ボクらは正しいんだにゃん!なので鰹節を要求します。これは正当な要求ですにゃん。
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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