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魅惑のガララ

空理空論、空間理論、食うか食わず。難しいことを考えようとしてもあんまり意味のない発想にしかならない僕がどうして凝った文章作成などしなければならないのだろう。


マリアさんに半分命令される感じで始めた「ガララ応援隊」というブログ。最初の3日こそ町を踏み荒す怪獣ガララについてちょっとだけ恨みがましく紹介して、読者にガララの事を知ってもらうというモチベーションがあったが、金のことになると一癖あるマリアさんからの「もっとガララの良さを語って読者を引き込むのよ!」というメールで、ガララの美点をやや誇張気味に書いている僕。ガララは嫌いではないが好きというほどでもない僕にとっては無理やり褒めている感じがして何となくモヤモヤする行為である。それでもガララにとっても町にとっても僕にとってもガララについて関心を持ってもらうことは良いことだから、細々としたことをなるべく詳細に語る。こんな感じに…


『ガララのような存在は一般的に害獣とされますが、ガララ自体は非常に穏やかな性格で、人間に対して危害を加えようとする気がないどころか、事故になるのを事前に避けているようなところが見受けられます。ただ、ここで問題になるのはガララもきっとそう望んでいるわけでもないけれど、どうしても町の中で移動するたびに道路が荒れてしまったり、住民に少し迷惑になってしまっているという事は否めません。市も対策をしていますが、なにぶん予算の少ない場所ですし、市の方も対応が遅れがちで、ガララに対してはその穏やかで優しい性格とは裏腹にあまり良い印象を持たれていません…』



以前遭遇した時に撮っておいた写真を一緒に乗せ、それらしくなった『ガララ応援隊』のページであるが、ネット上で検索するとガララの写真は結構見つかる。Twitterでも他所からこの町に訪れた人が「ガララに出会った」と呟く人もいたりして、反応も上々なのだがそこから中々何かに繋がるという事がない。というのも、隣県にはカリスマ的怪獣、『ギャララ』がすでに圧倒的な知名度と地位を獲得していて、企業がスポンサーについて支援を行っていたり、行政の方のバックアップのお蔭もあって、CM、映画、ドラマ、アニメ、小説などの題材にたびたび登場するほどのフィーバーとなっているという先例があるからである。その印象が強すぎて他の怪獣はよっぽどのことがない限り目立つことはないし、一番熱狂的なはずの中高生からも「なんだモブ怪獣じゃん」と一瞥されて終わりになってしまいがちなのである。


「ギャララ」の圧倒的な迫力と、プロデューサー、仕掛け人のの圧倒的な演出に虜になってしまった人は多い。それと比べると後発でそれほど目立たない場所に現れたガララは不運といえば不運だし、今の時代「憂い」とか「流離い」とかいう形容詞はあまりはやらない。そういう属性を持っているガララを応援する人は物好きだと思われてしまうようである。


ネット上に立ち上げたブログのアクセス数は伸び悩んでいる。最初の日こそ、応援のコメントがあったりしたが、マリアさんのアイディアの「ガララ基金」を募ったところ、一気に反応が鈍りだして、別な場所で「偽善だ」と噂されているのではないかと心配になる。心配はあるが、だが実際のところはすでにアクションの少ないガララに対して興味を持つ人が減って、静観されているというのが実情だろう。




2週間が経ったころになってまた3人で飲み屋に集まった。マリアさんは近況についてうきうきしながら訪ねてくる。

「どう?集まった?」

「いえ…なかなかアクセス数は伸びません」

「違うわよ。基金のほうよ」


まあそれが目的なのだという事は僕も分かっていたから、何も言わず首を横に振る。


「そう…やっぱり大変なのね」

そういう割にはあんまりガッカリした感じがないのは、多分集まればラッキーというくらいの気持ちで提案したからだろう。マリアさんはすぐ切り替えて、

「じゃあこういうのはどう?ガララを題材に小説を書くの!!それでヒットさせて…」

「誰が書くんですか?」

「ラテン語で書いたって、読めないでしょ?」

「ボクはSS形式なら少し書けますけど、本格的なやつはダメですね」


さりげなく高良さんも断ってしまう。結局のところ損な役回りを押し付けられそうになる僕だが、僕とて小説を書けるほどの力量はない。第一ブログでひいひい言っているのだ。

「現実的な提案ではないですね」


僕がいうとマリアさんはちょっとだけガッカリしたような素振りをした。というか、この人は分かっていてもわざとそういう大げさなジェスチャーをするから気にしない方がいい。


「太郎さん。そういえばボク、チャットでちょっと会話してみたんですけどガララの評判そんなに悪くないですよ」


高良さんが意外なことを言った。ただよくよく考えてみたら、ガララを害獣扱いする人に出会ったためしはなかったし、初日にブログに書き込んでくれた応援のメッセージは確かにそれを物語っているのかも知れない。


「その人ってガララについて詳しいの?」

「はい。何でもその人って怪獣オタクだそうで、その人がいうには「ガララはフォトジェニック」だそうですよ」


ガララの写真が好きだという人は実は珍しくない。基金を募った後にコメントは減ったが、ガララの写真をブログに載せると、一定の「いいね」が付く。固定ファンがいるのだ。そういう人たちからすれば、なんであれガララの姿が見れるというだけでもブログは見る価値があるのだろう。実を言えば僕もそれが嬉しくて基金のことなんかほとんど気にしないで最近では頻繁にガララを撮りに行ったりしているのだ。


「あ!!!そうよ!!!」


とても嫌な予感がするマリアさんの声。思ったことを訊いてみる。


「もしかしてマリアさん、ガララの写真集を作ろうとか言わないですよね?」


「え?どうして分かったの?テレパシー?」


「マリアさん金のことになると分かり易すぎですよ」


高良さんもさすがに呆れている。ただ、僕自身この提案については悪くはないと思っている。売れるか売れないかは別にしても、ガララの写真を載せて喜んでくれる人がいるならブログを続けてもいいと思っていたりする。


「じゃあ今度、みんなでガララを見に行きませんか?写真を撮るんですよ」


珍しく僕の提案。


「あ…その…ボクは写真の編集しますけど外に出るのはパスで…」

高良さんらしい答え。まあそんなに期待していなかった。多分僕一人でゆく事になるだろうけど、それも仕方ないと思ったときだった、


「あたしは行くわよ!!こう見えて写真には自信があるの」


マリアさんは結構乗り気だった。


「私がカメラマンってことにすれば、印税が入ってくるわよ!!」


そうだろうなと思った。
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