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猫のような人

部活で陣頭指揮を執って、なんたら賞を目指して努力したけど前衛的過ぎると言われ認められず、肩を落としていた帰り道に目が合った猫には逃げられ、余計凹んだ。気持ちを切り替えようとして果樹園に出掛けた僕は、ただぼんやりとみかんを眺めていた。どうして「王様は過剰装飾」という創作劇は受けなかったのだろう?考えていても何も浮かばない。

次の日僕はコタツの中にいた。厳密な意味でコタツの中に居た。丸まって。やけに、疲れていたので自分に「お疲れ」って言いたかった。コタツの上には買ってきたみかんが置かれている。そのみかんはきっと美味しい。


「そうだ、僕には才能が無いんだ」


いつになく僕はネガネガしていた。だけど的確過ぎて、それ以上の言葉が浮かばない。


「うわ、何だこれ!!」


その時、こたつの中の僕の存在に気付いたのは、おじいちゃんだった。ひんやりした足が僕の身体にあたっている。


「あー、じいちゃん…」


僕はこたつの中から答えた。


「なんだお前、猫にでもなっちまったのか?」


「猫になれるもんならなりたいよ」


「ほうか。そういえば俺も昔猫になったことあったなぁ…」


「じいちゃんもか。何があったの?」


「おう。それがな、こんな事いうのも恥ずかしいんだけど、その時好きな子がいて、思い切って告白したんだ。そしたら」


「そしたら?」


「『ごめんなさい、私猫のような人が好きなんです』って言われて、ポカーンだな」


「何それ」


「だろ!!それでも諦めきれなくて、一応猫のような人を目指してみる事にしたんだ」


「へぇ…で、例えばどんな風に努力したの?」


「先ずは猫を観察するところから始まったな…その辺にいる猫をじっと見つめて逃げられたり、猫の気持ちになろうと今のお前みたいな格好で一晩過ごしてみたりしてな。鳴き真似とかもしてみたし、そのうち猫についての本を読んでみるようになったりな」


「すげぇ。それで結局どうなったの?」


僕はいつの間にかこたつの中から顔を出していた。


「そしたら、いつの間にか俺も猫が好きになってしまっていてな、当初の目的を忘れちまってな」


「え…じゃあその好きな人とはどうなったの?」


「忘れているうちに、他の学校に転校しちまってたな…」


「じゃあ…」


「だけど不思議と寂しくなくてな、その頃には俺も猫のような「気紛れな人」になっちまってたって事さ」


「猫のような人になったのに、いざ猫のような人になると気にならなくなる不思議」


僕は難しい顔をして考え始めていた。


「じゃあ、みかんご馳走さん」


「あ、それおばあちゃんにあげようと思ったのに」


「いいんだよ。おばあちゃんは、猫みたいに柑橘系の香りが苦手だから」


そう言って、おじいちゃんは仏壇の方をちらっと見た。相変わらずおばあちゃんは不思議な笑顔だ。


「さあて、今日も猫と戯れようかね」


「まあ、猫は癒しだよね」


何となく僕も、猫のような人なのかも知れないと思っている。
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猫になる

 猫の様に丸まる。コタツに潜る。一日中ごろごろ。寝返りうって大あくびする。お腹が空けば適当に食べる。道行く人を観察する。私は猫だ。名前は・・・ない事にしておこう。ただ、誰も可愛いとは言ってくれない。

Re: 猫になる

こんにちは。

猫だから許される事もあります。可愛いと思うのは、何をしようかあんまり決まらないままその辺をウロウロして疲れたらゴロンとなる様子とかですね。猫も人間を観察しているし、人間も猫を観察しています。

かの文豪が猫に目をつけたのは大変すばらしい事だったんだろうなと感じますね。
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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