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ガララ対策委員会

ガララがこの町に出現して様々な影響が出たが、市の対策は若干立ち遅れの感がある。市のHPを覗いたところ先月末に市では「ガララ対策委員会」を設置したとあるが、具体的な事については現在も議論が交わされてる段階に留まっているようだ。


市内でも有数の名家である工藤家は地元の政治に大きな影響力を持っていて、市議会の中にも工藤家と交流のある人物が何名かいるようである。噂だと現市長もしばしば工藤家を訪れているという。その工藤家の長女で、社交界でかなり有名なお嬢様である智恵子さんはガララについてかなり興味を示したらしく、撮影に行った翌日からはガララについて個人的に調査し、市の方にも働きかけているそうである。


「なんか大事になってきちゃいましたね…」


そう呟くのは弟が智恵子さんに気に入られた模様の高良さん。


「まあ、元から大事だったんだけどね」


マリアさんはいつもよりもちょっとだけ真面目な顔をして言った。彼女の言う通り、ガララの出現自体は本来は非日常の出来事のはずで、ガララの穏やかさによってそういう印象は薄れていってしまうが、ガララについて今後のことを真剣に考えてゆくとそもそも僕等ではどうしようもない問題のはずだったのである。しかし、いつの間にか問題は僕らの見えないところで確かに動き始め、今となっては少し大きなものを巻き込むような形で展開し始めているのも事実だった。だが、その展開がなんというかまたしても僕らにとっては馴染みがなく、ちょっと日常から外れているような気がしなくもない。高良さんの何気ない感想はそういう事から来ている。僕もそれには概ね同意している。三人で軽くお酒を飲みながら話し合っているのとは違うところで、本当に真剣な議論が交わされていて…


「高良さんのアイディアって実現するんですかね?」


僕はマリアさんに訊ねてみた。


「いいアイディアだと思うわよ。ただ問題が、超人的ヒーローの中で誰に依頼するかとか、報酬がどれくらいになるのかってところかしら」


「超人的ヒーローって言っても事前に交渉しなければならないんですよね」


「超人的ヒーロー」について説明すると、超人的ヒーローはその強大な力ゆえどの国家にもどの組織にも属さないという国際的な条約があって基本的に全世界を飛び回っている彼らとの交渉にあたっては彼らがそれぞれ一人だけ立てている代理人を介して契約を結ぶというプロセスとなっている。契約を結ぶのは個人でも組織でも国家でも良いのだが、契約の内容に応じて報酬も異なるし、常に交渉が成立するというわけではない。ほとんど自らの価値観で独自に動いていると言っていい超人的ヒーローは、現在確認されているだけで5名ほどいるが、それぞれ微妙に異なる価値観を有しているようで、受ける仕事も報酬もまちまちだが、基本は怪獣を退治する為にこの星にやってきたらしい。


超人的ヒーローに依頼するにあたっての最初の困難は個人レベルではあまり知られていない代理人にたどり着くことである。運よく、工藤家のつてで二人の代理人の居場所は分かっているそうである。問題はこのうちのどちらに依頼するのかであるが、メジャーな方である「コードネーム『アルティメット』」は基本に忠実というか怪獣退治を請け負っている。強力な怪獣が害獣認定されると国が要請を出してまず最初に彼に依頼するというのが恒例になっている。この星にやってきたのも一番早い。もう一人は「コードネーム『7』」だが、こちらは見た目と技の派手さの割にかなり柔軟な対応を取ってくれると評判のヒーローである。この星に来たのは確か2番目だったと思う。


「『アルティメット』と『7』のどちらが良いですかね?」


高良さんは漠然と訊いてくる。この二人の中なら言うまでもなく『7』の方だと思うのだが、『7』はその対応が好まれてかなり多忙らしい。運よく他の超人的ヒーローの代理人に出会えればその方が確実なのだが…その時丁度携帯にメールが入った。執事の加藤さんからである。


『本日、お嬢様が市の「ガララ対策委員会」に「ガララ輸送計画」という書類を提出しました』


事態は僕らが考えている間にどんどん進んでいる。どうやら智恵子さんはかなり乗り気らしい。というのも、牧場に輸送することが出来れば、そこを「ガララの里」として観光地にすることが出来るというメリットがあったからである。そのアイディアを思いついたのが柔軟な発想ができる高校生の光太郎くん。その話を聞いたとたんに智恵子さんが喜んでしまい、

「早速取り掛かりましょう」


と言って、邸宅に戻るや否や関係各所に連絡を入れていったらしい。行動力のある人だと思ったが、工藤家というネームバリューもあってかそれまで停滞していた状況が問題解決に向けてここ最近一気に変化しようとしている。ただメールには気になることも書かれていて、


『どうやら法律に怪獣の所有権について書かれている条項があるらしく、ガララを個人的に所有することの可否がこの計画に関わってくるようです』


「あ、そうね。怪獣は本来天然記念物のようなものだから、国ごとに扱いが異なるのよね。わたしの国では国が一括して管理することになっているからあんまり問題は生じないけど…」


「そうですか…でもそこは必ずしも所有という形ではなく、地域としての「保護」という事にすれば何とかなるかも…」


まさに市としてアクションを起こせるかどうかが勝負の分かれ目になりそうである。
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