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ガララ輸送計画

智恵子さんが提出した「ガララ輸送計画」が地元の人々の口に上るようになった頃、僕が運営していたブログの方にも少しだけ変化が見られるようになった。まずはアクセス数の増加である。それまでは日に10件ほどだったアクセスが5倍程になり、記事に対するコメント、主に応援メッセージも結構目につくようになった。ネットで知ったというよりも地元の人の噂で「ガララ応援隊」を知ったという人が多いらしく、コメントした人の中には「○○市に住んでいる者です」と告げてくれる人もいた。ブログの盛況を受けて始めたtwitterのフォロワーも地元住民のアカウントを始めとして、関心のある人にフォローされるようになった。


そんな折、個人的な連絡用にとブログなどに載せておいたメールアドレスに「TARO」とという差出人から謎のメールが届いた。ローマ字読みで僕の名前「太郎」とも読めたので一瞬どっきりしたのだが、文面を見ると僕のことは知らないようだった。

『ある筋から「ガララ輸送計画」なるものの中心的役割を担っている方だとお聞きしました。興味深い話でしたので、詳しく話を聞かせていただくとありがたいのですが…』


表面的には智恵子さんの発案となっている「ガララ輸送計画」について知っているのはまだ地元の人くらいで、「ガララ応援隊」がそれに絡んでいるという記事を載せたことがないので、かなり事情を知っている智恵子さんの関係者かなと推理した。ただこの推理には穴があって、その場合僕ではなく智恵子さんに直接話を通せばいいのである。怪しさがあったが、僕の知らないネットワークもあるのかなと思い、取りあえずメールでやり取りしてみる事にした。念には念を入れて、そういうのに詳しそうな高良さんとかにも連絡してみると、

『実はボクのところにも同じメールが届いたんです…どういう事でしょうか?』


と報告されたのでこれにはかなり驚かされた。更に驚いたことに同じ日にマリアさんから急に電話があって、

「タロウくん、なんか私のところに変なメールが届いてるの、英文で…」


詳しく話をしてみると、どうやら差出人は「TARO」で、文面も英訳されてはいるが同じ内容だった。まるで見えないところで僕らのことを調べているようで不気味ではあったが、こんな話を僕はどこかで聞いたことがある気がした。とにかく三人のことについて相手が知っているのは間違いないから、いっそのこと三人で直接会ってみた方がはっきりするのではないだろうかと思った。高良さんとマリアさんは了承してくれた。「TARO」氏に『直接会いませんか?』というメールを送るとすぐに返事が届いた。


『では、今週の土曜に飲み屋の「おにそと」で夜の8時にお集まりください』


ここで注意しなければいけないのは、僕等がいつも集まるのは市内の飲み屋である「おにそと」で集まる時間も夜の8時なのである。これは一体どういうことなのだろう。




土曜。三人でいつものように集まると、飲み屋のマスターが「あの人って君たちの知り合いなの?」と訊いて、僕等がいつも座っている座席を指さした。そこには灰色のジャケットを着た男性と思われる人が既に座っていて、サングラス越しにこちらを見て僕等を確認すると会釈してきた。身なりからしてかなり怪しくはあったが、恐らくこの人が「TARO」氏であろう。


「こんばんは。初めまして、僕は山田太郎で、こちらが高良さん、女の人がマリアさんです」


と僕が男性に言うと、


「初めまして。ですが、私は貴方がたのことを存じ上げております」


男性は静かに言った。


「あの、失礼ですがどこでお知りになったんですか?」


マリアさんが問う。それに対して、


「実は以前貴方がたがここに集まった時にちょっと話を聞かせていただいていたのです。そこから個人的に調べさせて頂きました」


「盗み聞きとは褒められたものではありませんね」


手厳しいマリアさん。だが、僕もこれには同意見だった。


「一体何が目的なんです?」


僕は率直に訊いてみた。相手は「ふぅ…」と息を吐いて、

「まあまあ、そう焦らず」

と言って「立ち話もなんですからおかけ下さい」と僕等を席に誘導した。彼は続けて、


「ガララやガララのような怪獣について、あなた方はどう思われていますか?」

という質問をする。相手のペースになってしまいそうだったが、


「一概には答えられませんね。ガララは悪い怪獣ではないと思っていますが」

「わたしは基本的に怪獣は、人類と共存すべきだと思っています」

「迷惑なこともありますけど、ボクは嫌いじゃないですよ」

とそれぞれが答える。それに対して男性は何を思ったのか、「ふふふ…」と笑った。


「何が可笑しいんです?」

「いや、可笑しくはないですよ。お手伝いをしても良いかなと思ったのです」

「お手伝い?」

「ええ、「ガララ輸送計画」へのお手伝いをしたいと申し上げたのです」


「どういう事ですか?あなたは何者なんですか?」


「貴方がたの計画ではガララの輸送の手段が「超人的ヒーロー」に任せるという事でしたね」


「ええ、よくご存じで」


「しかしながら、代理人との交渉が常に上手くゆくとは限りません。ところで、あまり知られてはいない6番目のヒーロー『TARO』をご存知ですか?」


「え…もしかしてあの『TARO』ですか?」


僕と男性とのやり取りに反射的に答えたのは高良さんだった。


「太郎さん。実は5人と言われている超人的ヒーローですが、最近地球にやってきたという6人目のヒーローがいるそうなんです。そのコードネームが『TARO』で…そうか、それで『TARO』って、ってもしかすると…」


高良さんは何かを納得したようだが、同じこの人が「TARO」氏だとすると『TARO』と何か関係があるのだろうか?


「お察しの通りです。巷では『独自のネットワークを持っていて、密かに活動をしている』という噂が流れている『TARO』ですが、実は超人的ヒーローの中でも『TARO』は最近来たばかりなのでその存在もまだあまり知られていないのですよ。まあ売り出し中っていう事ですね」


「もしかして、あなたが代理人なんですか?」


そう訊ねると、「TARO」氏は再び「ふふふ」と笑った。


「確かに、今のところ僕らが接触できそうなのは『アルティメット』と『7』ですが」


「その二人では条件が合わないと思うし、私なら今すぐにでも依頼を受けることが出来ます」


「ですが…いきなりとなると…」


その時、僕の携帯がなった。加藤さんからのメールである。それには、


『申し上げにくいのですが、超人的ヒーローのスケジュールの都合で、代理人と話が出来るのが数か月先になりそうです…』


とあった。『TARO』の代理人はまるでこのことを予期していたかのようである。僕はマリアさんと高良さんと相談した結果、未知数ではあるが『TARO』に依頼してみるのも良いのではないかという事になった。だが、本当に来てくれるのか不安はある。


「もしよろしければ何か証拠を見せてもらえないでしょうか?」


僕が言うと『TARO』の代理人はタブレットを取り出した。そして一つの動画を再生してみせる。


「こ…これは!!!」


そこには今まで見たこともない超人的ヒーローが空を飛行しているシーンが映し出されていた。


「この動画はどこを探しても見つからないでしょうね」


高良さんも頷いた。明らかにCGではないようである。それだけで信じるのも甘いのかも知れないが、この状況がいつか聞いた噂と酷似しているので、信じてみてもいいのかなと思うようになった。


「分かりました。では、お願いできますか?」


すると代理人は最後に「ふふふ」と笑い、


「喜んで」


と言った。
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