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別の世界で

ある日、少年は不思議な本屋を見つける。その店に置いてある本は他の何処にも売っていないし、誰が書いたのかも分らない。少年には書いてある事はよく分からないけれど、古ぼけた帽子を被った店のおじいさんはその本について紹介してくれる。そのおじいさんが言うには、その本はこの世界ではない別の世界の事について書かれてあるというのである。


「『おはなし』じゃなくて?」


少年は不思議そうにたずねた。お伽噺が好きな少年の中ではそういうものは『おはなし』、つまりフィクションだと思っていたのである。現実ではない、でも心を豊かにしてくれる『おはなし』は少年にとって当たり前のものだった。でもおじいさんは『おはなし』とは言わなかった。


「ここに書かれてあるのは本当の事だよ。この世界ではない世界で本当に起っている事。その記録なのさ」


「その世界は何処にあるの?」


おじいさんは一冊の本を大切そうに取り出し、微笑みながら言った。


「僕も行った事はないんだよ。でも、この店にある本が教えてくれたんだよ」


「行った事ないのに、どうしてあるって分るの?」


素朴な質問だったがおじいさんは「そうだね、なんといったものか…」と言って顎鬚をいじり出した。少し経って、


「そうだね、説明するより実際に読んでみた方が早いかも知れない。こんな話はどうかな?」


そう言っておじいさんが開いたページには何やら猫と人が喋っているような挿絵と、ちょっとした文章が綴ってあった。


「『てつがくねこ』」


「てつがくねこ?」


少年が聞かせてもらったのは「喋る猫」とその飼主の話で、その飼主が「喋る猫」との日常を書いているものだった。


「これはね、『ブログ』と言ってその世界にある情報を発信したり受信したりする機械で行われている一つの文化の中で続けられている皆に見てもらう日記のようなものなのだよ」


「これって日記なの?」


おじいさんの言葉に少年はビックリした。少年はその話を『おはなし』だと思っていたからである。


「じゃあ本当に喋る猫はいるの?」


「この日記を見る限り、どうやら珍しい事だけどいるみたいだね」


おじいさんは続けて言った。


「実をいえば、この店にある本はその世界の『ブログ』の文章を受信して記録したものなのだよ」


『ブログ』というものが何だかイメージできなかったが少年は自分の中に新しい世界が広がるのを感じた。ただ少年には気になる事があった。


「でも、このお兄さんが作り話をしているってことは無いの?」


「それも考えられるけどね、別な世界の情報を受信しているのは間違いないし、そこがどういう世界か分らないんだから自由に考えてもいいんじゃないかな?」


少年はなんだか騙されたような気分になったが、何となくそれでもいいと思った。その話がずっと続いてゆくような気がしたからだ。別な世界が本当に続いていると思えるほどの「らしさ」があったら世界はその人の中で続いているのである。
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