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そらまちたび ①

それは空中分解しそうなほど不安定で脆いのだ。だが脆いなりに何とか繋がっていて、繋がっていると判断する者の目からは、確かにまだ何がしかのものである。

そんな何かを何と呼んだものか。何と何が繋がっているのだろう。




[そらまち]



空気の良い場所に来るとついつい大袈裟に呼吸してみたくなる。『ここではないどこかに行きたいな』と思って、ネットで調べてやって来た地方の田舎。確かに自分の住んでいる場所からすれば「ここ」ではないけれど、そうはいうものの全く違う世界ではなく、何かが同じで何かが違うそんな、僕にとってのフロンティア。ここに来た目的がそもそも「ここに来る」だけなのだから、到着した瞬間にそれは果たされているのだけれど、まあまあ歴史がある処だそうだから、少し観光でもしてみようと思う。


「街」と言えるほど建物がなくて、何となく「町」と呼ぶのが良さそうである。とりあえず町の人に話を聞いてみようと思った。駅の近くにあった神社の前のベンチに腰掛けている人がいる。


「あの…すみません」


それはちょっとお年を召した男性。おじいさんと呼ぶべきだろうか。ぼんやりしていたおじいさんは突然声を掛けられて少し焦っている。


「は、はい?どうかしましたか?」


「これはすみません。ちょっと観光で来ている者なのですがお話よろしいですか?」


「あ、ああ。はい」


僕の方を見てにこやかに笑顔を向けてくれるおじいさん。すぐにここの人は親切だなと思った。何を訊こうか少し考えていると、おじいさんの方から訊ねてくる。


「お兄さんもしかして『怪獣』の事でここに来たの?それとも歴史の方かな?」


「え?『怪獣』って何ですか?」


「まあ、ここ座って」


ベンチの隣を薦められたのでそこに座る。ちょっと前だったら『怪獣』という事で戸惑ってしまっていたけれど、10年ほど前から世界の各地に突如として出現するようになった『怪獣』の事はあまり興味がない僕でも常識として知っている。だが、最近怪獣についての色々な情報があり過ぎてこの町に怪獣がいるという話は知らなかった。


「あら、そんなに有名じゃなかったか…「ガララ」って言うんだけど」


「ガララ…ちょっと怪獣の事は疎いもので…どこに居るんですか?」


するとおじいさんはちょっと残念そうに。


「いや、今は居ないよ。飛んでっちまった」


「ガララって空飛べるんですか?」


おじいさんはしまったとばかりに苦笑いして、


「あ、説明が悪かった。あのね、先月でっかいヒーローがやって来て、ガララを引っ越しさせたんだわ」


「へぇ~そんな事があったんですね。知りませんでした」


「地元じゃ有名な話だけど、何ていうか歴史とか毎年のちょっとした催し物で観光客が多いところだけど、ここら辺見ると分るけどシャッター通りでしょう。やっぱり何か町おこしには何かないかってみんな考えてたところに丁度ガララが出てきたものだから、結構話題になったんだよ。ところが…」


「ところが?」


おじいさんは少し遠くを見るような目をして、ゆっくり話し始めた。


「まあ何て言うか、ちょっと恥ずかしいんだけど地方の財政の問題と住民の気持ちの問題でね、ちょっと向こう最近道路を舗装した痕があるんだけど、ほら、怪獣が道歩くと荒れちゃうでしょ?それとちょっとだけだけど「迷惑だ」って愚痴る人がいてね、それで市としては退治する事も考えてたみたい」


退治とはいうが、それにしたってお金が掛かるのは間違いない。話を聞いているうちに、小さい町だが結構大変な事があったんだということが分って、僕は何となく町に対しての印象が変わってしまいつつあった。ただ退治がされるとなると全国のニュースになるし、怪獣との戦闘のシーンはどうかと思う事もあるがネットで多くの再生数を稼いだりするくらいエンターテインメントになっていて、そこから推理すると退治されたという事実は無いようである。

「でも退治されなかったんですね」


すると少しだけ嬉しそうに、


「そうそう、なんか町の若い人とかがアイディアを出して、ヒーローさんに広くて迷惑にならないところに運んで行ってもらったんだってさ。最後はみんなで成り行きを見守ってたよ」


この話を聞いて僕は少し感心してしまった。おじいさんが嬉しそうなのは、多分他から言われたわけじゃなくて、自分達、特に若い人が頑張ってくれたという事だったのだろう。


「でね、ここからが面白いんだけど」


「何です?」


始めての土地の事にすっかり興味を抱いてしまいおじいさんの話に聞き入る僕。


「そん時に動いた若い人の中に、この町の、まあいわゆる古くから続いている名家の令嬢がいてね」


「はいはい」


「その人が、そん時に知り合った高校生にそれがきっかけでその子にお熱で、話題が一つ無くなったけどこの町の有名人の動向を、生暖かく見守っているわたしらおじさん…てね」


「へぇ~」


まあ何というかそれはゴシップというのか、プライベートで詮索するのは野暮だけど何となく素敵な話であるようにも感じる。始めてここに来た僕にしてみれば、正直あまり興味がないけれど、町のロマンスを話の種にするのも悪くはないだろうなと思う。


「この話は内緒だよ!もしそれらしい二人がいたら、見守ってあげて」


「はい。分りました」


その後、この町の名物とか歴史ある建造物とか、イベントなどの話を聞いてベンチを立った。


「ありがとうございます。じゃあちょっと城跡にでも行ってみます」


「はいはい」


おじいさんの話にも出てきた城跡だが、ネットのウィキペディアの情報でちらっと調べただけだが、ここは昔かなり歴史ある城下町だったそうで、有名な国内の戦争の時に落城してしまって、後年再現されたものらしい。歴史はからきし苦手で、あまり詳しくないのだが常識的な感覚で「へぇ、そうなんだ」とその時は特に何の感傷もなく思ったのだが、実際に見て見たら何か感じるものがあるかも知れない。


そこからだと少し距離があるようなのでバスを探したが、本数が極端に少ない。待ち時間があるので近くの和菓子屋で甘いものをちょっと食べた。
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