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肩慣らしに捧げる不届きものの賛歌

嫋やかな猫のように、いや其れは女とも言えるのだろうか、とにかくそういうものが
自分に蠢いているのを感じる。聞こえるはずのない、、なにか其れ。大逆というわけ
でもない、かと言って全くのイノセンスでもない、そんな曖昧さの居心地の悪さも
それなりに無いと現実味がしないとわかるようになって、拘りも捨て何気なくやり
過ごしている。


勝手な事を言うよと思って、悉く無視をしていたのに、今となっては其れに惹かれて
いる。関係のない関係。関係のあるはずもない自分にとっては、居ないも同然だった
ように思える。過去は過去だ。引き返せる筈も、掻き回せる筈もなく、、、



「どうして、自分に素直になれないの?」



ただ、そう言われているように思えた。少しの狂騒があれば何事もなくすり抜けられる
、そう信じていた頃には、ただ頑なにあっただけ。



私は私。そんな単純な事すら迷うようになったと言って良いだろうか。変わらない瑞々しさ
は、現実だったのか、幻想(ゆめ)だったのか。今となっては、それも不確かになって
しまう。生々しい、この現実の、少しの居心地の悪さが確かに、「今」なのだろうと
確認しながら確信している。




少し彷徨った。気が付くと私はラジオから流れてくる音楽に聴き入っている。隣には
いつの間にか座っていた一人の女が同じようにぼんやり何処かを見て音楽に反応
している。此処はただの喫茶店。何の事はない、隣に居るのは連れ添って来た他者(ひと)
だ。



「この音楽良いわね。何だっけ?」


「何だろうね」


「音楽詳しいんじゃないっけ?」


「そこそこ」


その人はふっと溜息のような息を吐いて、


「そ。じゃあ仕方ないね」


と言う。『何が仕方ないのか』と訊きそうになったが辞めた。


「この後カラオケでも行こうかな」


独り言と云うには、あまりに上機嫌だった。


「何処に行く?」


「ここらへんにあったよね。二時間くらい」


「何歌うの?」


「この曲」


「そう」




喫茶店を出ると眩し過ぎる陽光が、顔に突き刺さった。私のものではない陽気さを装って
「あちぃ」と叫ぶ。「暑いね」と返してくれるだけマシだろうか。


「あ、そうだ。あの歌うたってよ」


そう来ると思っていた。


「歌えるかな」


「何で?いつも歌ってるじゃん」


「いつもと同じように、とはいかないかも」


「大丈夫、誰も聞いてないから」


「そう」


そんなもんだよなと思いそうになった時、


「私以外ね」


と彼女は言った。大人しそうでいて、と思いながら二人で街を歩いた。
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