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ATJ あなざー ②



いつもと取り立てて変わったところのない友人と私は、その日この小さな街で何故か開催されることになった単発イベントに行く事になっていた。そのイベントの名もずばり「ゆるすぎるキャラクター祭り」である。テレビでも取り上げられる有名なイベントにあやかって、というか殆ど某国並みに模倣して日本中から「ゆるすぎて」何処にも呼ばれない不人気キャラクター達を一挙に集めて、何となくそれらしいものにしよう、という趣旨もへったくれもない小さな商店街の精一杯の客集めでしかないことが見え見えの催しだということは始まる前から分かっていた。しかし、それを言ってしまっては元も子もないし、残酷ですらあるから、私にしては珍しく、寛大な気持ちでこのイベントを見守ろうとしていた。

だが、ここでも友人のストレートな物言いは炸裂する。

「ざっと見た感じだけど確かに『ゆるい』ね。キャラクターじゃなくてこのイベン…おっと失敬」

彼の前には南瓜と西瓜を混ぜた様な奇妙な野菜のフォルムに、辛うじてそれと判明する細い目玉がついているキャラクターが所在なさげに立ち尽くしていて、私達を見て、しばし悩んだのちに、左手を差し出してきた。彼はもちろん素通りする。私は握手をしようかどうか迷った末、仕方なく、この中身は多分オッサンであるにちがないキャラクターの手を握る事にした。相手もやる気がないのかあんまり握力が強くなかった。

もはや語るまでも無いことだが本当の不人気キャラは、不人気ですらない。存在すら知られる機会がないのである。このキャラクターも運よく、何かの悪ふざけの的になってしまえば、それなりに知名度が上がって、不人気にのし上がれるのだろうけど、今この目の前の何と呼べばいいのかよく分からないキャラクターは、私にとってだけ存在するような、儚さの漂う何者かである。


私はその後も友人と、キャラクターを批評しながら商店街を練り歩いた。



「ぶっちゃけ、金だけかかったんじゃないかな?」

「まぁ、そうなるかな」

「いや、時間もかな…」

「そうだよね」

生真面目でつまらないと言われる私だってつまらないものは嫌である。少しは期待していたのだ。こうやっていつもの喫茶店で、会話も弾まない状況になると、私はやはり最近の「もうこれ以上何も出る気がしない」という無言になってしまって、専ら友人の話を聞くだけになってしまう。本当は、きっと何か、言えることがある筈なのに上手く言えなくなってしまう。


「例えばね、ああいう時に・・・・・・・(以下略)」

「そうだよね」


全部分かり切っている事だ。分かり切っていることをどうこう言っても、という気がしてしまう。「そうだね」に言い疲れてしまった私は、ソーダを注文した。





友人と別れた帰り道、私は意外なものと再会した。道端に立ち尽くしているのは、間違いなく私が握手した例のキャラクターである。しかも、運が良いのか悪いのか、ちょうど頭に手をかけて、生首を持ち上げようとしている瞬間だった。夢は既に砕け散っているから今更だが、こういう瞬間には立ち会いたくなかった。だが、私はまた意外なものを見る。


「ぷっはぁー!!しんどかったぁ!やっぱり駄目かぁ!」


意外に元気だったという事が意外なのではない。中から顔を出したのは、うら若き乙女だったのだ。うら若き乙女という表現をする私も私だけれど、それ以外の言葉は見つからない。しかも何気に愛くるしい。愛くるしいという表現をする私も私だけれど、それ以外の言葉を見つけようとは思わない。口が裂けても、か…かわい…いとかいう言葉は私の口からは出てこないのだ。話がそこで終われば良かったのに、もっと運が…何というか運動した。


「あれっ!!あなたもしかすると、さっき握手してくれましたよね。有難うございます。」


設定とかあまり気にしない私だが、少しばかり「おい」と言いたくなった。おい、いいのかそれ?首から上だけ乙女なキャラクターは、生首を抱えてこちらに近寄ってくる。


「実はですね、この『キャラクター祭り』があるって聞いて、わたし自分のオリジナルキャラクターで参加したんですよ。でも、なんか人気がなくって…握手してくれた人あなただけだったんですよ」


私は少し違和感を感じた。このイベントの趣旨は、敢えて不人気キャラを呼んだのではなかったろうか?まてよ、私がそれを聞いたのは、友人からであって、確かに案内には『キャラクター祭り』としか書いてなかった。私は一応相手に合せることにした。


「あ、そ、そうですか。いや、何というか愛嬌がありますよね。その…」

「ケロ子ちゃん?あ、この子、『ケロ子ちゃん』って言うんです。可愛いでしょ、えへへ。」

「え?あ、そ、そうですね。か…可愛いですね」


この「可愛い」はキャラクターに言ったのであって、彼女に言ったのではないということを強調しておく。名前から察するに、カエル…らしい。
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(*>ω<*)ゞただいま~

PCが届いたので、早速拝見しに参りました♪

脳内で、なんとかさんの朗読バージョンに変換して読んでいたのですが、思い出し笑いも含め、気づいたらニヤニヤしながら読んでおりました(o´∀`;o)aポリポリ

これからも、ちょくちょく覗かせていただきますね( ´∀`)b

楽しみにしてます!(●´I`●)

いちファンより

おかえり

読んでいただいてありがとうございます。
マイペースに書いていきますね。

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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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