ネコ話 その1
これはとある家に住む二匹の猫の他愛もない物語です。
ある日、先輩ネコは家主が居ない時間を狙って、やや野太い声でこう言いました。
「よう、後輩。そういやお前が来て丁度一年になるか」
後輩ネコは答えました。
「うん。そうだね。もう一年になるね」
先輩ネコは背筋をピンと伸ばしてキリっとした表情で言いました。
「こう見えても俺はもう七年目だからな、お前よりも俺の方がこの世界の事について良く知っている」
「そうだね、確かに」
先輩ネコはニヤリと目を光らせて続けます。
「という事はだ、そろそろお前も気付いてきただろう、俺の偉大さに」
「まあねー」
「何より凄いのは、この歳になっても高い所に軽々ジャンプ出来るし、このスリムな体型を維持しているという事だ。そして観よ、この毛繕いが行き届いた背中を!」
「うん。スゴイネー」
「それだのにお前ときたら、毛がもじゃもじゃで、足は短足だし、ジャンプ力はない」
「まあ、そういう品種だからねー」
「最近では俺の主人の寝床をかっさらってくるという始末。一体どうしてそんなに図太いのか?」
「まあねー」
「それでも、年長者として我慢しているところは我慢しているのだ。特等席のストーブの前だってお前に譲ってやったりな」
「アリガトー」
「ただな、そんな俺も時々お前に圧倒されることがある」
「そうなのー」
「ああ…。何の事か分かるか?」
「うーん。わかんない」
「お前、来たときはあんなにチビすけだったのにこの一年で俺よりも身体デカくなってるってどういう事だよ?食ってるもん一緒だろ?」
「きがついたら、そうなっていた。一体何でなんだろう?謎だ…」
先輩ネコは溜息をつきながら言いました。
「なんでもいいんだけどよ、ひとが話している間、何食わぬ顔で俺のエサを食うのだけは辞めてくれよ…」
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