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夕陽の答え

日も暮れたし帰ろうかと思った。もともと暇潰しで出歩いていたようなものだし、特に後ろ髪引かれるような事もなく繁華街を立ち去り、気付いた時にはいつも利用する駅に到着していた。


今日は一日何事もなく、良い天気だった。だけど残った印象はそれしかないといえばそうだ。今日だって世界の何処かでは当たり前のように何事かが起こり、取り沙汰され、何がしかの印象を人々に与え、そしてその代わりに別の何かの印象が薄れてゆくような事が繰り返されている。決して忘れるつもりはないのに、意識していられる事はどうしても今目の前で起っている事になってしまって。


昔テレビで見ていたあの人がどうなったかなんてことを、本当に頭の片隅で意識している事がある。あの人も、この人も、どの人も、それぞれの人生があって、その意識の中ではずっと人生が続いているけれど、彼等の一瞬、一部を垣間見たに過ぎない視聴者は、その人がその後にどうしたかを知るべくもなく、それぞれが思うように続きを与えているのだろう。


今日も家に帰ったら、さほど意識しなくなった高画質のテレビの映像に出てきた誰かの事が関心事になってしまうのだろう。そこまで関心があるというわけではないけれど、全くの無関心でもないというのでもないレベルで。


それなりに視聴を続ければ疲れてくるし眠くなる。そして眠っている間に良い夢を見ても目覚めればいつもと同じ…ではないけれど昨日に続いている殆ど同じ構造の世界が待っている。昨日と似て非なる今日。だけど、その近似具合は昨日も今日も同じ一日として認識させてしまうほどに似通っている。



大きな変化を経験した事はある。個人のレベルで、日本のレベルで、世界のレベルで。



あまりに大き過ぎる変化はそれ以前とそれ以後を意識の上で隔ててしまって、もはや取り戻せないのではないかと思われるようにも感じさせるけど、確かに変化を経験してもやっぱりやる事は変わらないのだなと実感させるような事も多い。何かが壊れて、初めてそれを望んでいた事が分るような。



とはいえ、昨日も今日も同じような人生は望んではいない。というより、人は日々成長…そして退化するものだから昨日と同じことをしていていいわけはないのだが、そういう話ではなく、この時間の使い方を知らないでいるが故にただほっつき歩くような事を明日もしようとは思わないのだ。



今日だって十分学んだのだ。


『何も目的もなく歩いても、暇は解消されない』


と。その教訓が新鮮なうちはきっと今日とは別の事をしようと思うだろう。だが時には何も目的がなくても、その無為を楽しみたい気分の時がある。『暇』というのも厄介な状態だ。




この頃沈みゆく夕陽の向こうのどんなに遠くを見てもその先が知れていると感じてしまう。それはそれでこの街に、それこそ夕陽の赤に染まるように染まり切ったという事で良いのかも知れない。前からずっと抱いていた「未知の世界」への憧れは、精々気晴らしの為の「未知の世界」でしかなくなったように感じる。この世界をよく知るために「未知の世界」を求めるような、そんな感じ。



一発大逆転がありえそうな未知の世界へ誘われるより、この世界でしぶとくボチボチやって行った方が気が休まって好きな事を考えられていいような気がする。とは言ったものの、この世界について知らない事は沢山あるわけで、この世界において自分とは違うあり方をしている誰かがいるという事を知れたら、それだけで世界は広がったように感じるのも確かだ。





そこでテレビの話である。どうせ家に帰ったところでネットかテレビくらいしかないのだ。どちらにしても何か面白い事をやっている人を見てまた頑張ろうと思うような展開なのだが、「未知の世界」のようなワクワク感も少しは無いではない。入れ替わりの激しい芸能界とやらでいつの間にか知らない人が出てきて、気付いた時には共通認識になっている。純粋にその人のする事に興味があるのか、それともその人を知ることによって自分を再発見する事が出来るのかは分からないけれど、何にせよ刺激的な世界はそこにあるようにも見えなくない。



が、しかしこの時代のこの世界で、本当にこんな事をしていていいのかと疑問に思う事がある。自分が何が出来るかというとそれほど大したことではないし、それこそ自分の代わりは幾らでもいるのだろうけれど、要するに自分を声高に主張した事がないような気がするのだ。自分で勝手に納得している事は多いけれど、じゃあ実際に確かめたことがあるのだろうか、という事が甚だ疑問なのである。




言ってしまえば自分がそう思う事がよく分からなくなっているのだ。同調して、そうだと思う事は多い。代弁者が代弁してくれる。でも、自分はもう少し何かを言えるのではないか、そんな気がしてしまう。



まあ、そんな事言ったって、何を言ったらいいのか分からないのだけれど。




纏まりもなくただそうだと思う事を整理している間に、自分でもよく分からなくなってきて電車の窓から外を見遣る。結局多くの事はこの景色を見ているとどうでも良くなると言えばそうだ。



『暇』だったと思っていた事も。



いつも見慣れている光景。でも夕暮れの一瞬しか見れないこの光景を見るために外出したと言ったって別に構わないような気がしている。きっとそんな自分のあり方が…そんなあり方をしている自分を肯定してよいのか迷うから悩んで、そしていつも確かめて納得するのかも知れない。



あの夕陽が多分『答え』だ。
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