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つくしんぼう

いまいちアルコールが分解されていない気がする。いつの間にか僕は一人愚痴っていた。

「確かに僕は個性がない。言い換えると没個性だ」

それは僕が随分前から悩んでいる事である。僕はこれと言った特徴を備えていないし、僕に出来る事は他の人が普通に出来る事ばかりなのである。


「そう、僕に個性を期待するのが間違っている」


その時、そんな事はある筈はないのだが、耳慣れない声が聞こえた。

「どの口が言うか!ご主人。あなたは十分個性的だ」

「えー、どこが?」

多少意識が混乱していたのだろう、僕は何も疑問に思わず反射的に答えていた。


「私は知っているぞ。ご主人。あなたは自分が食べるものに頓着しないくせに私の為に上等な食事を用意してくれているという事。そして私がちょっとでも寂しい素振りを見せるとナデナデしてくれる事。」

「うん?そんな事した覚えないけどなぁ…」

「私は感謝している。特に寒い日には同衾させてもらっていたり。貴方には私をここまで可愛がってくれる優しさがあるではないか」

「いや、この家には僕と猫しかいないけど?って…え?」

僕は眠たい目を擦って声のする方を向いてみた。そこには飼っている猫が居る。まさかと思って猫に話しかけてみた。

「もしかして、お前かい?」

「そうだ。ご主人。私だ」

「そうだったのか。お前喋れたんだ。へぇ~」

そして僕は色んな事が可笑しくなって笑い出した。

「…ご主人。いくら酔っぱらっているとはいえ、この状況を少し不思議に思わないのか?私は心配だぞ」

飼い猫に心配されていた。

「何言ってんだ、僕は酔っぱらってなんかいないぞ。分っているよ。お前喋れるんだろ、へへへ…」

「ご主人。前々から言おうと思っていたんだが、酒に酔うとご主人は私が聞いていても恥ずかしくなるくらい滅茶苦茶な事を言い出しているぞ。それと…」

そんな具合に猫から説教をくらって「ほんと、すいません」と謝ったところまでは覚えているがその後の記憶はない。


次の日。私はいつもの通り「ニャー」という鳴き声で猫に起こされた。もちろん喋るはずもない。なんとなく会社で

「実は昨日の夜、家の猫が喋ったんだよ」

と言ったら、

「え?なんですかそれ。○○さんってそういう冗談言える人だったんですね!」

という話で少し盛り上がり、その日僕にはちょっとだけ不思議な人という特徴が加わった。


家に帰ると玄関でちょこんと座っている猫を見て、なんとなく優しく撫でてみる僕だった。
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ペットの言葉が分かったならば

「タマちゃん、お母さんよ。」
 朝からうざいなぁ、このばあさん。
「さあ、ご飯が出来たわよ。心を込めて作ったんですからね。」
 あーあ、こんなにこねくりまわしちゃって。折角の食材が台無しだよ。
「お母さん出かけて来るからお留守番お願いね。」
 さっさと行けよ。煩くてかなわん。
「タマちゃんはお利口さんねー。」
 それは認める。

Re: ペットの言葉が分かったならば

こんにちは。

ペットの言葉は分らない方が幸せという場合もありますが、「明らかにこの子懐きすぎ
でしょう」という時には、ことばが分ってもあんまり変わらないのかも知れません。
態度で示してくれるのです。


喋れても、「喋るのが面倒くさい」と思うような子は…
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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