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おち

気が付くと私は水色のドレスを着て絶壁の前に立ち尽くしていました。そしてありえない事ですが目の前に全身黒づくめの男の人が浮いています。しかも逆立ちをして。彼は言います。

「目覚めましたか、お嬢さん。ここから先は私がご案内しましょう」

私は不安になって言いました。

「あの…頭に血が上りませんか?」

彼は素早く答えました。

「昇りますとも!!ですから出来るだけ早く私に案内させて下さい」

「分りました。ところで、何処に案内してくれるんですか?」

「貴女がお望みの、不思議な事なら何でも起こる世界ですよ。」

「えっ?私そんなこと望んでましたっけ?」

「何を仰います。昨日私に頼んだじゃありませんか?『あぁーもっと刺激的な世界に行きたい』って」

私は昨日あったことを思い出しますが、そんな記憶はありません。というより私は自分が誰なのかもよく分りませんでした。

「私、その…記憶がないんです。私の名前をご存じだったら教えて頂けないでしょうか?」

「山田太郎ですよ。お嬢さん」

「山田…太郎…?あの…私、どこからどう見ても女なんですけど」

「それも不思議な力のせいですよ。お嬢さんは昨日まで男子だったのですよ」

それを聞いた時、私の頭に微かに『山田』と呼ばれていた時の記憶が蘇りかけました。けれど、それ以上思い出すと何だか今の自分の心が何かに侵食されそうな気がして、私は必死にそれを抑圧したのです。黒づくめの男はそんな私を見てこう言いました。

「お嬢さん。今貴女が感じたように、男であった頃の記憶を蘇らせてしまうと貴女を『貴方』と呼ばなくてはいけなくなります」

「つ…つまり?」

「不思議な力が消えてしまって、山田太郎に逆戻りですよ」

私は何故か分からないけれど私が今の私でなくなるという事に恐怖を感じました。ここは一刻も早く不思議な世界に飛び込むべきだと考えた私は、男の人に身を委ねる事にしました。手を差し出した私に、彼は優しく語りかけます。

「分って頂いて有難うございます。危く私の意識が途切れるところでした。では不思議な世界にご案内!」

「って…え?下に落ちるの!?」


ざっぱーん。


私は男の人と供に海に真っ逆さま。





「はっ!!」

私は目を覚ました。私はごく普通の部屋にいた。ごく普通と言うか、私がよく馴染んでいる部屋。隣にはブタのぬいぐるみ。そんな事はあるわけないと思いつつも一応私は自分の性別と名前を確認した。

「うん、間違いなく女…そして名前は…」

名前は山田太郎…というわけもなく、私が良く知る私の名前だった。夢と言われればそれまでだけど、不思議な力のおかげで今の私があるという想像はちょっとだけ面白かった。さすがに不思議な事が何でも起こる世界ではないけれど。
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花瓶がひっくり返って無くてよかった

 おぼれる夢を見て、目が覚めたら布団が冷たい。
 どぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!まっ、まさか、いい年してやっちまったのか!!!?
焦りまくった私の足に硬いものがゴロン。そう、寝相が悪くて蹴っ飛ばした机から花瓶が落ちた模様。でもなんでこんな所に花瓶が?
 だってお花が綺麗だったから。と母親が平然と言った。

Re: 花瓶がひっくり返って無くてよかった

こんにちは。

猫を飼って以来、花瓶はほとんど置かなくなりました。いわずもがな猫が平然と倒してゆくからです。
ちなみにおぼれる夢どころかトイレで用をすます夢も見たりしますけど、シーツが濡れていたりすることはありません。


それでも、いつも焦りますね。
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Author:なんとかさん
ナンセンスな物語を書くつもりです。リンクフリーです。

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