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あめらんこりー

ハウスキーパーは眼鏡を折り曲げて言った。

「あ、メランコリー」

その時、音もなく忍び寄ってきた不審者は頽れた機関車を舐め回しながら呟いた。

「明々後日にようこそ。ごきげんようこそ」

ハウスキーパーは、その奇行を見て、一瞬「奇行だ」と思ったが、口に出さないで冷笑した。

「僕がハウスキーパーになろうと思ったのは、庭に植えてある残念な木『ボルシチ』に少しばかりのお礼をしたかったからなのだ。分かるかい?僕が学生の頃、その木の根元に隠されていた秘宝『ゾンビの鳴き声』を発掘したお陰で、僕は卒業論文の題材が見つかって無事に卒業できた。こりゃあもう、お礼するしかないよね」

不審者はまさか自分に語りかけられているとは思わなかったので、「この人、独語の癖がある変人さんなんだ」と判断して相変わらず機関車を舐め回していた。ハウスキーパーは、この屋敷に飾ってある機関車に対して特段思い入れがあるというわけでもなかったから、舐め回されるままにして、そのまま語りを続けた。

「あーそういえば、ちょうど御屋敷に雇われた頃だったかな、この近所に住む『割り箸サエコ』という人が旦那様に熱心に暗号文を送ってくるという事件が起こったのは…。たしか、解読すると割り箸サエコのプロフィールが出てきて、そこに『機関車が大好きです』という文が書かれてあったような…」


不審者はもしかしたら自分が『割り箸サエコ』なのかも知れないと思い始めた。というのも、不審者が気が付いた時には『機関車を舐め回さないといけない』という事しか思いつかなかったからである。念のため、ハウスキーパーに訊いてみた。

「あの、私が『割り箸サエコ』だとでも言いたいんですか?」

ハウスキーパーは答えなかった。

「あの、『割り箸サエコ』ってどんな人ですか?」

ハウスキーパーは面倒臭そうに、部屋を掃除していた。

「あの、私、変ですか?」

ハウスキーパーは再び眼鏡を折り曲げて言った。

「あ、メランコリー」
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