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白い猫

一般的に『不思議な事』というのは『偶然』という概念に関係しているように思う。偶々、何か珍しい事が続いた時に、何かそこに『意図』のようなものを感じたりするが、そういう『意図』があると仮定してしまうと他の事が上手く説明出来なくなる為に、深く考える事ができないような。尤も、本当にSF的な事があったとしたら、文句なく『不思議』と言えるわけだけど、現実に起こる『不思議』というのは概ね何かの理論で説明されてしまったり、科学的に解明されて何の『不思議』も無くなってしまうような事も多い。


大体の事は『偶然』と言って良いのだろう。そして運命的な事は、何というかよくよく考えてみると必然性とか、自分の好みとか性格とかを考えてみるとかなり高い割合で起こる可能性があったと言えるのかも知れない。こんな事を考えるのは、私が『白い猫』を好んでいるという事によって起り易かった事象が確かにあっただろうと振り返りたくなっているからである。



話はあの『店』を訪れた日の帰りだった。『白い猫の置物』を持ち帰る事になって、店主の話がちょっと頭にチラついて、


<これから普段と何かが変わってくるのだろうか?>


と期待半分不安半分で道を歩いていたのだが、特にこれといって何かが変わるというわけでもなく、あまりにも平常通りで新しい発見もなかったし、それどころか駅で電車を待っている間にかかってきた仕事の電話がなんというか休日の気分を奪ってしまい、余計な事を考えられなくさせてしまった。



電車の移動も僅かに一駅で、何か情緒を感じるというわけでもない。そうこうしているうちに家に着いて、一息ついた後、「昼食」を用意しなければならないと思って冷蔵庫を開けたら、大したものが入って無くて効率が悪いのだが買い出しに行かないといけない事に気付いた。ただまた出掛けるのも大変だからコンビニの弁当で済ませるのも一つの手かなと思ったのだが、どちらにせよ車で移動した方が良い。田舎ゆえ、ちょっとばかし距離があるのである。


『店』に行くのにどうして電車を利用したのか疑問に思われるかも知れないが、商店街は駐車スペースが無いところが多く、またちょっとだけ歩きたいという気分もあったのだが、普通の移動はやはり車でないと不便である。


<でも面倒くさいから、昼食は抜きで良いかな…>


少し物を買ってしまったし節約というわけではないが、食べなくてもいい気分でもあった。どっちにするかはっきりしないまま『借りて』きた『白い猫の置物』をおく場所を考えながら部屋をうろうろする。


<やっぱり借り物だしガラス戸の中にしまうのが良いよな…>



置物を決めた場所にしまった丁度、その時だった。私はちょっとした違和感を覚えた。何処からか動物、猫と思われる鳴き声がするのである。


「まさか、この置物?」


勿論そんなファンタジックな事ではなかった。猫の鳴き声は明らかに家の外からしている。猫の鳴き声は何か助けを求めるように必死で、私は咄嗟に道路に面した窓の方に向かう。


「あ、あれ!!!」


驚くべきことに、猫がしかも白い小さな猫が道路の向こう側の歩道に立って必死に鳴いているのである。猫は見るからにフラフラで、何処からか彷徨ってきたものに思えた。考えたくはないが、何処かで捨てられてここまで必死に歩いてきたのだろう。


考えている暇はなかった。そのまま放っておいたらどうなるかは明らかな事だった。私はとにかくその猫を保護することにした。向こう側に行って必死の思いで鳴いている猫をタオルで包んで抱きかかえる。そしてそのまま家の中に戻る。幸い実家の方で猫の面倒を見ていたことがあるから何となくすべきことは分っていた。痩せ細っているので先ずは食事である。見たところ離乳はしているくらいの大きさだったから、柔らかい離乳食が最適だと判断する。


倉庫からダンボールを取り出して、そこにタオルを敷いて猫を中に入れる。家の中にあるもので食べられそうなものはないが、適当な容器に水を入れて飲ませる。猫を一匹にしておくのは不安だったが、近くのスーパーまで車を走らせればそんなに時間は掛からないだろうと判断し、取り敢えず必要な物をメモして出掛ける事にする。



☆☆☆☆☆



と、こんな具合に猫の世話をしているとすっかり時間は過ぎて行ってしまった。猫が落ち着いて眠りはじめたところで、私は「ふー」っと一息をついた。急いでいたためスーパーに行ったのに食料の買い出しをしてこなかった。だから今度は自分の為に移動をしなければならなかった。



結局慌ただしくなってしまったその日、『白い猫の置物』の事はすっかり忘れ去っていた。本物の猫の方に集中しなければならなかったのもあって、一週間くらいはそのままにしていたので、『白い猫の置物』について店主の言った事を忘れてしまっていた。ただ猫の為に必要な物を揃えようと思った時に、『店』の事を思い出し、


<あそこならちょっとお洒落な皿とかあるかも>


と思って休日にまた店に行く事にした際、何というか、


<そう言えば、これも『白い猫』だよな>


と考え始めたのである。私はもともと『白い猫』が好きだったのだと考えれば、それほど不思議な事ではなく、『偶然』の範囲で説明出来る事である。ただ、確かに『白い猫の置物』が幸せを運んできたと考えれば、何となく良い話のようにも思えた。



家にきた本物の白い猫は「そら」と命名された。
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