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猫との戯れ

「そら」との生活は私にとってとても自然な事のように思われた。全身綺麗な真っ白の毛も初日は少し汚れていて、濡れタオルで拭いたり、後にぬるま湯で丁寧に洗った結果大分見栄えがするようになったが、綺麗になったら綺麗になったで別の猫のようになってしまうのも面白い。まだ幼いという事もあったのと、捨てられた事の不安からか時々強く鳴いたり、そばを離れないようにしているところが見受けられたが、2週間もすると落ち着いてきて、特に餌を食べる時の元気の良さは十分安心できるものになっていた。


その頃から私も「そら」がいる毎日が当たり前になってきた。もともと猫を飼っていた事があるので迷うことは少なかったし、「そら」が比較的人に懐っこい性格だったという事もあって、変に気を遣わず自然体で接する事が出来たのが大きいだろう。実家に居た猫は大分デリケートでなかなか懐いてくれなかった事を覚えているので、猫というのはそれぞれ全然違うのだなと実感したのもその辺りである。


ところで白い猫に「そら」と命名したのには理由がある。この町は小さな町だがそれなりに有名で「そら」が綺麗だと言われているからである。大したものは何もないけれど、だからこそ、「そら」が良く見えるという事なのだろうか?それとも澄んだ空気が「そら」を美しく見せるのか?どういう理由なのかは分からないが、少なくとも私はこの「そら」が好きだった。



☆☆☆☆☆



その月のある日、私は無邪気に「そら」と戯れていてある事に気付いた。


「あ、そういえば首輪がなかったなぁ」


眩いくらいの白さの猫はそのままでも見栄えがする。だからそのままでも何にも違和感が無かったのだが、何となく飼主の願望としては可愛い首輪でも着けてあげたいという気分になってくる。しかも私はとても良い事を思いついていた。ただしこれを実現するには、少々面倒そうではあった。


私はネットで『猫 首輪 刺繍』というキーワードを入力して検索する。検索結果を見て凡そ期待した通りの結果が表示されたので、適当なサイトに入って良さそうなものを探してゆく。私の発想は単純で、「そら」という名前を刺繍で入れた首輪を作ってもらおうと思ったのである。そこそこ値段は張るのだが、ネットで注文すれば希望通りの物が手に入るようで、普段迷うことの多い私にとっては即決のレベルで注文を済ませた。



後日届いた首輪は水色、あるいは空色に白い刺繍で「そら」と入れてある物だった。あまり自分のセンスに自信の無かった私だが、「そら」に着けてみると結構色合いが良く、満足のゆくものであった。


「にゃー」


「そら」が鳴いたのを気に入った証拠だと勝手に思う事にして、私はまた「そら」と無邪気に戯れはじめた。一般的に猫は幼い頃はよく遊んではよく眠る。比較的高齢の猫は遊び道具を使ったとしてもまったく反応しない。私がやわらかいボールのようなものを放り投げるとすぐに取りに行って、それを加えて戻ってくるという一連の動作を飽きもせず永延と繰り返す。「そら」が走るたびに首輪についている小さな鈴の音が聞こえるのもなんとなく嬉しく思えた。



ただ一つだけ気掛かりだったのは、この前『店』で貰った軽い小さな緑の石…といっても材質は何だかよく分らないのだけれど、とにかくその石に対して「そら」が妙に興味を示して、時々それを咥えたり、転がしたりして遊んでいる事である。まあ大きさ的に呑み込むような事はないと思うのだが、今では完全に「そら」の所有物になっていて、何処に置いてあるのか私には分らなくなる時があった。と思うと、何食わぬ顔でそれを咥えてきては、時々ぼとっと落としながらも器用に運んできていたのが印象的だった。
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